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ビカン、と雷の音が聞こえた。驚いてビクリと肩が跳ねた。大丈夫?とかけられた声に茫然とした。片腕が抱えるトランクをゴトリと床に落とした。ビチャン、と水が跳ねる。

「……うわ、さっぶ……」
「ピーブズ!ナマエ、あぶない!」
「あ?ーーわっ、ぶっ!?」

ぶつけられた何かが爆発して水がバシャリと飛び散る。全身水を含んで重い。髪をかきあげ見ると、ポルターガイスト殿がげらげら笑いながら他の生徒達にも水爆弾を投げつけていた。マクゴナガル先生がめっちゃ怒りながら生徒達を大広間に入るよう言っている。ぎゃいのぎゃいのと騒がしい。耳の奥がツキンと痛んだ。

「ーーナマエ、大丈夫?様子が変よ、」
「パーバティ、………大丈夫、うん、大丈夫、行こう」
「風邪引いてしまうわ、早く行きましょう」

後ろからパーバティとラベンダーの二人に声をかけられ、奥歯を噛み締めてトランクを持った。私はまたホグワーツで1年過ごすらしい。




パーバティやラベンダーについて一緒に席に座り、ぼうっと組分けを眺めた。一際元気そうな少年がグリフィンドールに選ばれたのを横目に、溜息を吐く。ラベンダーが辛気臭いわね、と笑った。

「疲れちゃった」
「すごい雨だったものね。風邪には気を付けないと、アリアがまた怒るわよ」
「彼女、怒ってばかりじゃない?」
「そんなことないわよ、たぶん」

きゃいきゃいと小声で話しながらダンブルドア先生の言葉を聞く。目が合った時、ぱちんとウィンクをされた。それはどういう意味なのか。

気付けばあの部屋、そしてホグワーツだったわけだが、聖マンゴとやらはどうなったんだろう。
取り止めになった?なら私はどこにいた?あの部屋にいたはずだ。帰ったということになっているのか?今までも、そうだった?
考えただけで吐きそうだ。目の前にぽん、と出てきたご馳走にも手を付ける気になれなかった。美味しいわよ、とステーキを分けられても、滴る肉汁に誘われることは無い。しかし手を付けずにいるとなんか知らんが次から次へとお皿に盛られる。犯人である2人を見れば、うふ、と笑い、食べなきゃだめよとパーバティが言った。ああ、もう、クソ!

「お腹空いてたんじゃない」
「ナマエが食べてるのを見ると安心するわ」
「私いつの間にそんなキャラ付けされてんの?」

サラダとかパンとか肉とか、お皿に盛られた分を無理やりかっ込めば次はデザートが盛られる。甘ったるいそれらも喉奥に押し込み飲みこむと、いつの間にかダンブルドア先生がまた話し始めていた。 曰く、今年の危険スポーツの試合は無し。

「いよっしゃああああ!!」
「えーっ!!??」

私のガッツポーズとハリーのショッキングそうな悲鳴が重なった。じろりと見られる。多くの視線を感じた。えっごめん…。手遅れだろうか素知らぬふりして視線を机に落とすと、隣のパーバティから肘を小突かれた。ごめんて…。
ダンブルドア先生が話を説明しようとしたとき、雷と共に大広間の扉がバタンと開いた。なんか傷だらけの独特な見目のおっさんが入ってくる。目は義眼でぐるぐるしてるし、なんかちょうこわい。雰囲気と相まってすんげえ怖い。超ホラー。ひっ、と軽い悲鳴が聞こえたし、多分私も言った。ちょうこわいおじさんはソーセージを指すというこれまたホラー感あるパフォーマンスをして紹介された。あたらしいDADAのきょうじゅ。

「げきこわ…」
「ムーディって、あのムーディ?」

なにやらちょうこわいおじさんは有名らしい。すごい人なのか。いや、まあ、あれは、有名になるの納得な感じだけども。私この1年DADA休みたいかもしれない。ホラーは得意じゃないんだってばさ…。

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