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朝一でお茶の葉のわんこやら人魚姫やらで大広間で紅茶に手を付ける気分にはならなかった。まあいつも飲まないんだけど。普段通り炭酸水を飲み、ミートの強いスパゲッティを食べる。私太麺のやつ好きなんだよね。もぐもぐと食べていると、隣のハリーからナプキンを渡された。口のまわりついてた?ありがと。すっかり慣れてしまったハリーくんである。いい嫁になるね。

「占い学ってつまらないのね」
「ハリー、君黒い犬とか見てないよね?」

ハーミーの吐き捨てるように言った言葉をガン無視してロンはハリーに聞くと、ハリーは見たよ、と答える。黒い犬なんてどこにでもいるじゃん。そんな私の心とテレパシーでつながったのか、ハーミーは即座に野良犬、と切り捨てる。だがロンは顔を真っ青にして、死神犬の恐怖とやらを語り始める。24時間後に死んだって、その死因によるんじゃね?そのへん歩いてたら犬は沢山居るし黒い犬だっているでしょうよ。黒いラブラドールとか可愛いよね。

「占い学は当てずっぽうすぎるわ。お茶の葉にしても根拠が弱いし」
「ハーミーに一票」
「あのカップの中の死神犬は当てずっぽうなんかじゃなかった!」

ロンとハーミーの言い合いをハリーは少し怒ったように仲裁した。ホグワーツでは大丈夫だ、という言葉は自分に言っているようにも見える。結構余ってしまったミートをパンに乗せてかぶりつくと、またハリーからナプキンを差し出された。ありがとう。

「占いって大体どこも同じようなもんだねえ」
「どういうこと?」
「良い結果は喜ぶし、悪い結果は警戒すんの。当たるか当たらないかなんて、どう解釈するかにもよるし」
「じゃあ君は信じないのか?」
「うん。ハリーが仮に死ぬとして、私達のカップにもそれがないのはおかしいでしょ」

私の返事に三人はどういうこと?と言ったすぐ後、ハーミーだけが「そういうことね!」と明るく声を上げた。なんなんだ、とロンが眉を寄せる。

「私のカップにも犬が出たのよ。確か良い友、って意味だったわ。つまり、私には良い友達がいる、もしくは良い友達が出来る、ってことでしょう?その友達との別れとかそういうものが出ないと変ってこと」

ふふ、と笑ってハーミーがナマエもやるじゃない、と私にラズベリーパイをよそってくれた。お、おう、ありがとう。サクッとしたパイにはホイップクリームはつけない派です。
ハーミーの言葉に、ハリーはそっか、と笑って答え、ロンは憮然としながらもそうかもしれない、と言った。意地でも認めたくないらしい。まあどうせ占いだからなあ。ラズベリーパイの酸っぱさなど微塵もない強い甘みを炭酸ですっきりと飲み込む。さて、次の授業だ。



数占い学は俗に言う数秘術とかそういった類のものだった。西洋占星術の範囲も齧るらしく、天文学をよくやっておけという先生の言葉に納得した。どちらかというと私は占い学よりこちらの方が相性が良さそうな。
その後普通の授業に出た後、夕食のため大広間に行くと拉致されるかのようにハリーに引っ張られ席についた。どっちにしろ座るんだからそんなせずとも逃げませんよ。

「どうなると思う?」
「ハリーくんや、なんの話」

いきなり聞かれ、目を白黒させ話を促す。魔法生物飼育学で何やら人騒動あったらしい。
なんでもスリザリンの子が怪我したとかで、ハグリッド?の今後とかそういうのを聞いているらしい。私に。聞く相手違くないか。
とりあえず流れるようにハーミーがよそってくれたローストビーフを食べながら、そうだなあと思案する。スリザリンの子はマルフォイくんで、まあ当然お貴族様なわけだしねえ。

「手続きとかあるから即座にクビ、ってはならないと思うけど、まあ今後クビとか停職になる可能性はあるよね」

教員の停職から自主退職、なんて流れはよくあるものだが、今回の例は生徒の怪我らしいし、魔法界かつ英国では色々違うだろうし一概には言えない。とはいえ一般的に考えれば生徒の怪我、しかもその親はお貴族様ってのは十分可能性あるしなあ。ダンブルドア先生がどう判断するかによるけど。

「なんでだよ!マルフォイが悪いんだぞ!?」
「マルフォイくんが悪かろうが多分危険もある動物を初っ端に持ってきてそんで生徒が怪我したっていう事実はちと問題視されるかもね。まあマルフォイくんの親が黙ってりゃなんもないと思うよ、ちょっとしたお咎めくらいで済むんじゃない?」

なんつったって魔法界だし。魔法界は違うからな……。危険スポーツといい違うからな……。そう考えるとお咎めとかも無しに、何事もなさそうな気もする。危険スポーツは何も言わず授業での怪我は騒ぐっておかしいもんね?ね?

私の言葉に微妙な顔をする3人は、夕食後件の先生の元に行くらしくそこでお別れした。私は1人寮に戻る。
談話室ではネビルとディーンが変身学の宿題と奮闘していたためそれに混ざり、私の人魚姫説について大いに笑いながらなんとか片付けた。ディーンはマグル生まれだからそういう話題はとてもよく合うのだ。最初はきょとんとしていたネビルに人魚姫のあらすじを話すと、彼は人魚姫の健気さに涙していた。

「ナマエ、消えないでね」
「まず王子様を探さないとね」
「ぜってーいねえだろ!」

ディーンの頬は引っ張っておいた。

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