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休日っていうのは休む日って意味だと思うんだけど課題があったら休むとか出来なくない?それはもうサービス残業と同じ意味じゃない?とかなんとかうだうだクダをまいたところで課題が減るわけもなく、本来昼まで寝ているはずの休日なのにいつも通りに起きて課題に向き合うサービス休日略してサビ休に午前中を費やしたサタデー。
ようやく課題もひと段落して、このままでは私の心に良くないと一旦、一旦ね、とりあえず1時間くらい寝ようとしたらまだ課題が終わってないサーシャに「なんで私より先に終わってるのよ!私の視界に入らないで!サーシュの散歩してきて!」と言われ追い出されてなう。あまりにも横暴。なんてルームメイトなんだ。酷すぎる。
寝るくらいいいじゃん!うるさくしないし!なあ、とサーシュに同意の返事を求めればサーシュはクールに私を置いて先に階段を下りていった。な、なんだよ……子犬の頃はあんなに懐いてくれてたのにさ……。いぬの成長は早い。さみし。

しかもサーシャがあの様子じゃしょうがないから談話室のソファで寝よーっと降りたら降りたで、まぁた双子が妙ちくりんなグッズを売って下級生のわーきゃー声がすごかったから昼寝どころじゃないし。
サーシュも出口のドアの前で私を待っていたようだから、大人しく散歩行くかあー…と一旦コートを取りに部屋に戻る。
と、そこで好奇心が疼いちゃったからコートとマフラーとついでにとあるものを持って寮を出た。





子供は風の子というが季節関係ない風の子がホグワーツの庭に多発している。私は冬はこたつの子だったのにおかしいな。まったく魔法族のガキンチョは元気なの多いことで。
堂々と庭の真ん中でいじめまがいのことしてね?というガキンチョにサーシュがさっと走り寄りビビらせていた。すげえなサーシュ…正義に目覚めている。体格普通に私たちの半分くらいあるでかい犬が来たらそりゃビビる。私もたまに夜中のしっと歩いてるの見るとビビる。そうしてでっかい犬を怖がらない心優しきもしくは強いハートを持ったちびっこたちとハートフルに遊んでいるサーシュを横目に、芝生のなるべく広い所へ出た。最初からワンコに放置されるのがわかってた有能な私なのでね、部屋から持ってきた箒を地面に置く。

So!箒!例の箒である。ぶっちゃけ触るつもりはなかったんだけどもだね。
怖い話をします。私が外に出ようとする度にゴトゴトとベッドの下から聞こえてくる。アリアに相談したところ「箒でしょ。ほっといたらそうなるわ、当たり前じゃないの」と全く知らない常識を説かれてしまった。心霊現象ならぬ箒霊現象怖すぎ〜そんな当たり前あってたまるか。というわけで現象を治めるために持ってきたわけだけど……。

「上がれ!」

無視じゃん。ガン無視じゃん。まあずっとベッドの下に放置されてたらそりゃ無視だろうけど。
私箒乗るの必修授業以来だし…箱空けとくから勝手に外飛んどいてくれないかな、と考えると箒はびよんと飛んでぶつかってきた。っってえ!!え?喧嘩売られた?

「くっ…乗ればいいのか?上がんないでよ?怖いから。フリじゃないから!」

念を押して箒に跨る。おや……なんか思ったよりフィット感あるかも、ただの棒にフィットも何も無いけどなんかこう学校の箒よりはいい…のか?
よくわからないまま適当にこのまま歩いて満足してく──

「どわああああ!!!」

フリじゃないって言ったじゃん!
勝手に上がる箒、もはやしがみつくしかない私。
どんどん離れていく地上に涙目どころか気絶しそう、すなわち死。怖い怖い怖いどうすんべ!?とにかく箒を握っておりて!と叫ぼうにも風と恐怖で言葉が出ない。ひいい。

「落ち着けモンキー!」
「ギャアッ」
「こっちを見ろ!」
「ヒイッ」

怒鳴り声にバッと顔を上げると、そこにいたのは箒に乗った金髪がさらさらしているマルフォイくんだった。同じ目線に人がいるだけでこんなにもほっとするものか。

「そのままゆっくり呼吸しろ。いいか、慌てるな、騒ぐな」

言われた通りゆっくりと深呼吸をする。マジで怖いし腕の感覚ぷるぷるしすぎてよくわかんないけど、マルフォイくんが合わせてゆっくりと下降してくれるからなんとかなってる。多分。
本当は数分なんだろうけど体感5時間くらいの緊張のなかゆっくりと足が地面について、そのままへたりこんだ。はああああ………土だ………!

「しぬかとおもった………こええ…二度と乗らん…」
「何してるんだバカ!1年のとき授業でやっただろ!?」
「フーチ先生の隣で……」

全部先生がやってくれました…。情けないなモンキーとのお言葉にまったくもう本当にその通りでございますとその場で頭を下げる。土下座とも言う。

「マルフォイくん助けてくれて誠にありがとうございました!」
「フン、モンキーには地べたがお似合いだな。……いや、お前が怪我をしたらセオドールに悪い」
「はい??」

立て、とわざわざ腕を引っ張られて立ち上がる。どどどどういうこっちゃ。なにこの変わりよう。少しの間に何があったのよ。え?セオドール?ノットくんがなに?

「というか、なんだその箒は」
「あーこの箒はとある人にもらったんだけど、」
「セオドールの趣味が悪いことは知っていたが、まさかここまでとはな」
「まってタンマめちゃくちゃ嫌な予感するわ」

両手でTの字を作ってみせるとマルフォイくんは怪訝そうに片眉をあげた。

「なんでそこでノットくんが出てくんのさ。あ、もしかしてこれノットくんからだと思ってる?まっさかー!」
「……だが、密会しているだろう」
「みっ……なんだって?」
「セオドールがコソコソ何しているのかと思えば、わざわざ女のために…しかもモンキーなんかのためにクリスマス前に時間を作るとは」
「あー……?」

もしや。もしやそれは、件の開心術のことを言っているのではないだろうかね。微妙に心当たりあるような、でも確実にそれでは無いという確信を持って首を振る。
にしても最近そういう類の話多くない?みんな恋バナブームなわけ?期待に添えずごめんね!しかし今回の作戦ってノットくん的にもバレたらまずいんだよね。うーん誤魔化し…誤魔化し…。

「や、私がたまにちょっと変になるからノットくんが心配してくれて〜ってな感じで……」
「…………」

マルフォイくんの眉間の皺がスネイプ先生みたいになってきててどうしよう。めちゃくちゃ怪しまれてないか、背中冷たくなってきた。今開心術されたら見られちゃうかもしれない。私のよくわからんオート遮断機能頑張って。

「……」
「………あの…」

思春期に入ったキャラチェンなのかオールバックをやめたマルフォイくんの前髪がサラサラと風に揺れている。うわーやっぱ金髪綺麗だな。とかなんとかごにょごにょ考えて長い沈黙を待つ。気まず。うんとかすんとか言って欲しい。
そうしてサーシュが下級生の投げた杖を華麗に上空でキャッチして小さく拍手に包まれた頃、ようやくマルフォイくんは喋った。

「……僕は謝らないからな。その箒はモンキーには勿体ないから寄付なりなんなりさっさとしろ。───おいそこの2年!杖を投げるな、それでも魔法使いか!これだからマグルは!」

一体なんのことを指しているのかもわからないし今回助けてもらったから謝られるようなことなんもないはずなんだけど、まあ多分過去の色々かもしれない。ありすぎてわかんねー!
そしてかつて杖を投げた覚えのある私はそっと目を逸らした。箒はサーシュが咥えて行った。

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