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この前私が5回目のレポート再提出した科目を覚えているだろうか。忘れられるはずないね、魔法薬学です。結局5回目のレポートも通らず、最初からやり直せ!と補習兼罰則が追加された。おまけの減点にぴえん。ぴえんじゃねえわ廊下で号泣だわ。ウソちょっと盛った、泣いてない。無言で床ばんした。
ハリーはへにょっとした顔で「お揃いだね」って言ってくれたけどこんなのお揃いでたまるかい。実際補習にハリーがいてくれるなら百人力けどもちのロンでいない。広い魔法薬学室にぼっち、机には課題に関する本も積まれている。こういう用意してくれるとこは優しいんだねスネイプ先生……。呆れられてるのかもしれない。多分確実に後者。ごめんね先生ッ!

「えー…右に1回、温度を下げて……ぼこっと……あれ……」
「やり直せ馬鹿者!グリフィンドール1点減点」
「ギャンッ!いつからいたんですか!?」
「我輩を気にしている余裕があるのか」
「無いっす」
「さっさとやりたまえ。材料の在庫を全て使い果たす気かね?」
「うっ……ごめんなさい………」

なんも言えねえ。でもでも、いきなり後ろから来るのはよくないと思うんですよお、びっくりして失敗しちゃうって言うかあ。来る前に失敗してたけども。すんません。多分今頃ガツガツ減っていく寮点にハーミーが白目剥いてるな…。




「──きて、ナマエ!起きなさい!」
「わぶっ」

引っ張られる毛布に転がされどたんと床に転がった。通りすがりのサーシュの肉球がぷにっと床板に当たっているのが見える。

「おー…おはようございまぁす……。バイオレンスな起こし方ですねハーミーさん……ふぁ……」
「何度言っても起きないんだもの」
「でも今日休みじゃん。昨日の補習でクッタクタなんだよぉ、休みの日くらい寝かせ」
「いいから起きて、床に寝ないでちょうだい」

ハーミーはいつも通り朝からピシッと元気な様子で、早く大広間に行くわよ!と私のコートを持っていってしまった。ええ…なんだよお……。仕方なく髪を手ぐしでとかしつつ部屋着の上に芋ジャーの上着を羽織り、のそのそとハーミーの後ろをついていく。あ、セーターにほつれ発見。これね、前にネビルにもらったお古のセーターなんだけどあったかくて最高。見た目はインフルのときの夢みたいなド派手な趣味を疑うデザインしてんだけどあったかさは抜群。ネビルのばーちゃんのセンスは確かにちょっとアレ。

くああとあくびをして奇抜な部屋着に芋ジャーの上にコートを羽織った最先端のファッションスタイルで大広間に行く。綺麗な赤毛をくるっと綺麗に巻いたジニーちゃんがご機嫌に手を振ってくれてにこにこと振り返した。

「可愛いねえオシャレしてる。彼氏とデートかな」
「どうかしら。ハリー、ロン、こっちよ!」

ハーミーが扉に向かって軽く手を上げる。おやおやおふたりさんもなんかオシャレしちゃってまあ。いいね青春感あるわあ、とベイクドビーンズをお皿によそいコンソメスープをとったところで今朝のふくろう便が来た。ハリーとロンにおはよーと挨拶をすると、ロンがなんか引いた目で私を見る。ハリーの頬もちょっと引きつってる。

「おまえ…なんだよその格好…どうかしてる…」
「エキセントリックナマエって呼んで」
「ナマエ、わかってる?今日はバレンタインなんだよ」
「バレンタイン・エキセントリックナマエ」
「そういうことじゃなくて」
「ハーマイオニーせめて着替えさせてやれよ」
「エキセントリックナマエが着替えなかったのよ」
「朝飯食べに行くだけじゃん」

ハーミーがふくろう便から手紙を受け取り、届けてくれたふくろうが私のベイクドビーンズを狙うからサッとお皿を庇い格闘する。捨て台詞代わりに羽をバサッと人に当ててふくろうは飛び去っていった。フッ俺の勝ち!
そう、ハリーの言う通り今日はバレンタインホグズミードデーだから、オシャレさんが多いのだ。デートの用が無い奴も触発されてオシャレしてんだろうね。ロンみたいな奴のことです。
ふくろうから受け取った手紙を素早く見たハーミーは、手紙を仕舞いシリアルを食べているお隣のハリーを見る。

「ねえハリー、とっても大事なことなの。お昼頃三本の箒で会えないかしら」
「うーん……どうかな」

勝利したベイクドビーンズを頬張っているとトン、と横から肘で肘をつかれた。ん、なんだいとロンを見ればロンはくい、と顎で向かいのハリーを示す。なんだい。視線をハリーに移動すると、ハリーと目が合ってすぐ逸らされた。ふむ?

「チョウは、僕と一日中一緒だって期待してるかもしれない」
「ふひゅう」
「…………口笛がへたくそすぎる」
「ふぃー」
「うわ悪化した」
「……なにをするかは全然話し合ってないけど」
「じゃ、どうしてもというときは一緒に連れてきて。とにかくあなたは来てね。ナマエ、口笛は諦めて」

双子とリーに弟子入りするべきか……?唇だけでも指を使っても空気の抜ける音しかしない笛(笑)にロンがため息を吐いて「ホイッスル吹くのも下手そう」なんてことを言うから流石にそれはナメすぎだろとツッコむと、突然バンッ!と目の前にゴブレットが置かれた。どわ、な、なんだい!中身はココアだった。差出人ハリー。

「あ、ありがと?」
「本当にわかってる?今日、バレンタインなんだよ?」
「うん?」
「僕はチョウとホグズミードに行くんだ。2人で」
「おう」

たった今その話してたじゃん?頷きつつガーリックトーストの上にベイクドビーンズを半分乗せてかぶりつく。バレンタインの朝にガーリックトースト出すとかホグワーツの厨房も結構強気じゃん。私はなんの予定もないのでしっかり食べれる最高だね。

「っだから、ナマエ…!」
「はいよ」
「他にもっと!あるだろ!?」
「ンー?」

ハリーは眉間に皺を寄せてクシャッとした難しい顔で私を睨んでいる。

「いいの?行っちゃうからね?僕、ホグズミードにチョウと行くからね!」

存じておりますとも。こくりと頷くと、ハリーはぐ、と一度唇を噛んで私のおでこをピンッと指で弾いた。いった!今のは手加減してないだろめちゃくちゃ頭に響いたぞ。

「2人ともほどほどにしてちょうだい、私は急いで返事を書かなきゃならないの」
「オ〜〜ゥ〜」

痛みに情けない声しか出ない私のおでこを押さえている手に冷えたハンカチをくれたハーミーは、私の皿からトーストを一枚とり足早に去っていった。手紙についてなんかあったんだろうな、それもハリーが関わっているらしいので私はお口チャックしておこう。ハーミー様のくれたハンカチが程よく冷たくておでこに気持ちいい。ありがたや。

「君も行くの?」
「ホグズミードにも行けないんだ。アンジェリーナが一日中練習するってさ」
「ナマエは?」
「ハリーにデコピンされた傷が痛むから一日中寝てる」
「バカ」
「はあん!?」

ストレートが一番心に来るんですが!?おでこを抑えたままハリーを睨むとハリーもまた私を睨みつつ、ぷいっと顔を背けて席を立った。くっ…コイツ…!

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