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ハリーとロンとハーミーが揃って勢いよく階段を上がり部屋へ戻ったかと思うと身の回りに防寒具をつけて爆速で談話室に戻ってきた。私は普通に窓際の椅子に座ったままである。帽子を被ったハリーに「何してるの?」ときょとんとされてしまった。

「ウェッ今から行くの!?」
「当たり前でしょう!」
「寒がりなのにどうしてそれだけなの?ナマエも行くよね?」
「いや行かないっすね」

寒いでござる……。首を振りながら言うと、ハリーはむむっという顔をした。

「ナマエのマフラーはどこ?」
「ロンが持ってる」
「ロンに貸したの!?」
「うん、寒そうだったから」
「……さっきは手を繋いでたね」

うーんジト目が刺さる。なんとなく気まずくてそっと目をそらすと、向いた視線の先でロンが巻こうとしたマフラーを外してハリーに渡した。おいやめろそれ私のだぞ。なんでハリーのマフラーと私のマフラー交換してんだやめろ。呆れたようにため息を吐いたハーミーが「あとでね」と言い2人の背中を押して出ていく。あーっ私のマフラーッ!


誰かの話し声でハッと起きた。体を起こすと、隣にいたハリーにおはようと声をかけられる。お、おはよう…あれいつの間に…。3人は私が暖炉の前で寝こけているうちに帰ってきていたらしい。しかもハリーは寝ている私に上着をかけてくれたようで、やさしいねありがとうね、てかこれめっちゃ手触りいいね?

「何呑気に寝てるんだよ!こっちは大変なんだぞ!」
「どうしたってのさ」

遠慮なく肌心地の良い手触りを楽しんでいると、ロンがそわそわと話し出した。なんでも巨人が……巨人!?巨人って授業でやったアレ?めちゃくちゃデカくて凶暴で強くてデカかくて争いばっかで身体がデカいアレ?が80人!?やばばのば。
ハグリッドが半巨人だっていうのは前に誰かからちろっと聞いたことがあるような無いような、しかし巨人の村…っていうか山に訪れて戦って帰ってくるってもう主人公の風格だ。ハリー曰くハグリッドは見るからにボロボロだったって言うし、話を聞いてても普通に死ぬ可能性バリ高でまるで映画の中の話だ。無事…ではないけど生きて帰ってきてよかったよマジで。

「危なすぎる里帰りだね…生きててよかった」
「いや、里帰りじゃなくて死喰」
「ロン」
「ングッ」

ハリーがロンの口にハンカチを突っ込み黙らせた。なるほど察した。察したから、もういいからやめたげなハリー。せめてクッキーにしてやれ、と棚のクッキーポットからジンジャークッキーを渡すとハリーはにっこり笑って食べた。あ美味しい?私も食べよ。ところでハリーマフラー返してくんない?ダメ?気に入っちゃったかーそっかー…。



昨日納得いかないことがあったらしいハーミーは寒い中意気軒昂にハグリッドの小屋へ行った。その背中を見送り、珍しく私よりも宿題の山が高いハリーとロンに後ろからやいのやいのと野次を飛ばしつつ日曜を満喫していると、部屋から降りてきたジニーちゃんがもじもじとしながらこちらへ来た。

「ハァイ、ハリー、ロン、ナマエ!」
「やあジニー」
「よう」
「やっほ」
「ナマエに相談があるのよ」
「えっ私?」

意外なご指名にびっくりした。こっち来て、と手を引かれるままに女子寮の階段を上がりジニーちゃんの部屋に行く。
同室の子は皆外で遊んでいるらしく、部屋は静かだった。少し散らかっている服を纏めてクローゼットに放り込んだジニーちゃんに勧められるままにベッドに座ると、ジニーちゃんもまたベッドに上がり、更にわざわざカーテンまで引いた。私たちしかいないのに随分な隠しようだ。そんなにやばい相談なんです…?ムネムネするドキをおさえてジニーちゃんを見ると、ジニーちゃんはまっすぐ私を見た。

「ナマエ、怒らないでね」
「う、うん?」
「気を悪くしたら言ってね」
「うん……?」

「──私、シーカーに立候補しようと思うの」

しばしの沈黙。……しーかー?一瞬なんのことかわからず脳内検索をかける。しーかー、シーカーって…あれだな……。昨日のことを思い出しうっとなってしまう。危険スポーツのハリーのポジションじゃん。

「怪我したらどうすんの?危ないって」
「そこなの?昨日の今日でって怒らないの?」
「いや別に空いたなら狙うのはいいだろうけど、でもねえ……ハリーの怪我を見てきた身としては勧めにくいっていうかさあ…」
「あれはハリーが異常なだけよ」
「そうとも言えるのが曖昧なトコロ」

ハリー毎年色々と狙われすぎなそれな。
頬をぽりぽりとかいて、ジニーちゃんの綺麗で少しうるうるしている目を見つめる。ジニーちゃんがどれほどの腕前なのかは全く知らないけど、聞けばロンの兄弟は懐かしの監督生パーシー以外危険スポーツの選手だったらしいし、自分も危険スポーツのこと好きだし、ロンがキーパーになって羨ましかったって気持ちもわからんでもない。ハリーのシーカーっぷりに憧れたってのもあるらしい。私にはヒュンヒュン人らしきものが早く動いてるくらいにしか認識出来ないが、きっとジニーちゃんはかっこよくスリップだかスニッチだかを取るハリーが見えているんだろう。うんうんいいじゃないの。でも私が危ないって難色示すの知ってたよね?知ってて私に相談したの?明らかに人選ミスだって。

「それこそ双子に相談したほうがいいんじゃ」
「嫌よ、マイケルのことで少し言われてるの」
「マイケル?」
「そう。彼氏」
「彼氏!!???」

カカカカカ彼氏!?顎が外れるかと思った。えっ彼氏……そっか確かにそんな年頃……えっあんな小さかったのに……。
ハーミーがクラムくんといい雰囲気だった時は特に思うこともなかったが、なんというかこう、ジニーちゃんはいつまでも小さい下級生のようなイメージで…ああでももう座高も私を越そうとしている…。もう立派なギャルである。双子が抱いたのと似たようなものであろう少しショックな気持ちを抱えつつ頷いた。

「あー、その、彼氏は反対してないの?」
「言ってないから。それに、言ったらマイケルは反対すると思うわ。彼もレイブンクローのクィディッチチームにいるもの。でもマイケルは最近チョウのことをよく見ていて、それが嫌なの」
「うわ面食い野郎だ。ボコボコにしておやんなさい」
「そうよね!ナマエならそう言ってくれると思ってたわ!レイブンクローなんてけちょんけちょんにしてやるんだから!あのね、私チョウのこともあまり好きじゃないのよ。彼女最近ハリーのこと見てて……ハリーはナマエと付き合ってるじゃない?」
「エ」
「でも会合にナマエはいないからチャンスみたいな……やな感じよね!」
「いや付き合ってないけど」
「………え?」
「え?」
「……ハリーと付き合ってるんでしょ?」
「私が?まっさかー」
「……えっ!?」
「えっ!?」

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