13

引き続きクリスマス休暇。心霊現象はあの一回きりだったためやはり私への天罰かもしれなかったが、別に何か被害があったっていうわけでもなかったからやはりよくわからない。頭を悩ませたまま朝、健全な子達に「ちゃんと起きて食事取らないとダメだ」と口を揃えて言われてしまったのでだるだると起きて談話室へ降りる。

「グッモーニンガイズ」
「Good morning crazy girl」
「It's nice head」
「ワッツ?」
「You have bed heir」

朝イチで笑ってくる双子に眉を寄せると、兄と一緒に魔法界のクレイジー玩具チェスで遊んでいたロンがため息をつきながら教えてくれたので頭に手をやると確かに髪が跳ねていた。最初から言えや。がしがしと手で乱雑に直すと、ロンから微妙な視線をいただいた。さっきのため息と言いなんだよ少年。

「ジニーだってもっとしっかりしてるぞ」
「ジニーってだれ」
「僕らの可愛い天使さ」
「でもママに似てきてるから可愛くないな」
「ああ、妹さんか」

そら妹ってのは可愛いもんだろうなあ、とぼんやりしていると、トン、と肩に軽い衝撃が。

「あ……おはよう、ナマエ」
「おー、おはようハリー。どしたの」
「ちょっとね!」

降りてきたハリーはボサボサの頭に寝巻きに裸足という飛び起きました感満載だった。ハリーは滅多にそんなことないらしく、ロンたちも驚き声を上げる。しかもハリーは何故かその格好のまま寮を飛び出ていった。

「ハリー!?…………どうしちゃったんだろう」
「なんかあったのか?」
「トイレかも」
「部屋にもあるだろ!」
「しかしすごい格好で出て行ったなハリー」
「それ君が言うの?」

寝癖とれてないよ。ロンにジト目で注意された。うるせえやい。




宿題を図書室で片付けたその帰り、冷え込む廊下を(もちろんぼっちで)歩いているとばったりDADAのにんにく先生と会った。あんな発音私に出来るわけないだろ!

「や、やあ、ミスミョウジ、お、お、おひとり、ですか?」
「こんばんは先生。見た通りっすね」
「そ、そうですか、じょ、女性が1人、では、あ、危ないの、では」
「まあ校内ですし」
「りょ、寮まで、お送りします」

そんな変な流れからにんにく臭いおじさんと共に歩くことになった。おじさんとかごめん、多分私とどっこ、げふんげふん。校内だというのに吐く息は白い。窓とか多すぎ。

「が、学校は、ど、どうですか?」
「意味わかんないことだらけっすねー」
「そ、そうですか、ミ、ミスミョウジは、ま、ま、マグ、マグル、でしたか」
「うす」
「ま、魔法、を、どう思いますか?」

変な質問だな。白い息で遊びながら、少し考えた。魔法をどう思うか。

「はあ、よくわかんないっす。原理とか、使用用途とか含めて、便利でしょうけどその、マグル?歴が長い私から見るとかなり現実離れしているというか。別に他意があるわけじゃないですけど」
「闇の魔法については?」

突然低い声になった。驚いて先生を見ると、先生は口元で柔らかく笑いながらギラギラとした目をするという器用な表情だった。頬がひきつる。私は悟った。こいつやべえ。

「や、闇の魔法ですか。いやー、存在が遠すぎてよくわかんないっすねー。でも、ま、悪い悪いって言ったって毒薬変じて薬となるとも言いますし、使い方次第なんじゃないですかね。ぺーぺーの私が言うのもなんですけど!」

はははー。廊下に虚しく私の空笑いが通る。なんだっけ、こういうの、天使が通るっていうんだっけ?そういや魔法界亡霊だの吸血鬼だのはいるけど悪魔だの天使だのはきかないな。あれって宗教関係のみ?
それから、何故かにんにく先生は無言になり、私も無言になり、ひたすらグリフィンドール寮へ向かうことになった。この前から私の周りの空気気まずくない?ハァーKYMとか言われたらどうしよう。空気読めないモンキー。
気まずい空気の中階段を待ち階段を上がり、やっとこさついた寮の前。マダムはお出かけ中らしい。私入れんのかこれ。休暇中で人がかなり少ないのに中から誰か出てきてくれるのか。薄い希望にげんなりとしていると、にんにく先生が私の名前を呼んだ。

「……き、君は、願いがありますか?」

少しどもりながらも、息を吐くような静かな問いかけだった。

「……ありますよ」
「願いを、か、叶えることが出来るモノがあったら、どうしますか?」
「そりゃ喜んで使うと思いますよ。きっと、そんなものを目の前にしたら代償だとか何も考えなさそうですし」

苦笑しながらいうと、そうですか、と普通に返された。さっきまでのやべえ奴の雰囲気はあまり無い。情緒不安定なのか。もしかして生理?……流石に下品すぎたわ。

とりあえずマダムが帰ってくる気配無さそうだったからドアをドンドン叩いていたら中から双子のどっちかが杖を構えながら出てきてくれた。ごめんて。

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