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この前ミスターフリ……なんつったっけな、フリ…………フリル?そう、ミスターフリルやマルフォイくんが可哀想云々と言っていたやつ、あれはクリスマスのことだったらしいと気づいた休み前の終業式。聞けばサーシャたちも家に帰るらしく、スリなんちゃら寮は誰も残らないらしい。なるほど、つまり帰るお家がないってことか理解。その通りだよチクショウ早く私を家に帰すんだ誘拐犯め。プリーズアイルビーバックホーム。英語があってるかは自信ない。

そしてクリスマスの朝、お休みのお約束というか堕落というか、起きるのは当然午後になってから。

「あ゛ー、こたつほしい」

とても寒いお外に対して室内はぬくぬくだが、こたつは冬のマストアイテムだ。布団に入りだらだらとしていてもそう思う。こたつとみかんは必須。
窓の外はしっかり白く、雪が積もっている。グリフィンドール寮は塔の上と高い位置にあるため、下の雪がよく見えるし寒空も近い。かといってスリなんちゃら寮は地下にあるらしいのでそれはそれで寒そう。イメージの話な。
クリスマスといえばプレゼントだが、私にプレゼントを届ける人がいるかと言われると答えは当然NOだ。と言いたいところだが、私は友達に恵まれた。大天使ハーミーそしてネビルありがとう。ついでに何故か先生方からカードが届いていることに驚いたが、何よりも同室の2人もカードをくれたことにびっくりだ。私は誰にも何も送れていない。ごめん、家クリスマスなんてケーキ食べるくらいだったんだ……。カルチャーの違いってすごい。

ハーミーは匂い付きの羽ペンをくれた。使っていくと匂いが変わり、羽の色も変わっていくらしいマジックアイテム。
対してネビルは大好きな蛙チョコレートをくれた。女の子に何を送ればいいかわからなかったんだ、気に入らなかったらごめんね、と気遣い紳士の塊の手紙付き。
先生方はそれぞれ書いてある内容が大体宿題に関してだった。切ない。もちろんスネイプ先生からは来なかったけどな!あと同室の2人は普通に女の子ウケしそうな激カワ(死語)なカードにメリークリスマスの一言だった。来たこと自体が最大のプレゼントだよありがとう。

ほくほくと嬉しい気持ちに包まれながらお返しを考えること数分。私にこういった商品の情報は何も無いことに気づいた。そういや来てから勉強か食べるか寝るか嫌がらせ受けるかしてない。改めて思い返すと字面が酷い。
と、とりあえずカードを……いやそのカードさえどこで手に入るのか。とんでもない世間知らずだ。

少し焦りながらお腹がすいたし丁度夕食タイムだったので部屋を出て談話室に行くと、暖炉に火がついていた。あれ、無人じゃないの?

「あっナマエ!?大丈夫?朝も昼も降りてこないし食事もしてないから心配してたんだ!」
「えっハリー?帰ったんじゃないの?」
「まさか!僕、夏休み以外帰らないよ。それよりも大丈夫なの?」

夏休み以外帰らないとは、この年から親からしたら切ない反抗期なのか、よほどホグワーツラブになったのか。何ともないので大丈夫なんともないさーとへらりと笑う。

「あっナマエだ!僕君部屋で死んでるんじゃないかと思ってた」
「ナマエ?」
「ナマエだって?」
「大丈夫なのか?」
「ゾンビじゃないだろうな」

後ろからバッと両肩を組まれる。両耳からそれぞれ入ってきた声にびくっと肩が跳ねた。声でかくね?

「ウィーズリー兄弟も残ってたの?」
「パーシーは帰ったけどね」

見たところお揃いのイニシャル入りセーターを着た3人、プラスにハリーは「メリークリスマス」と揃えた。

「メリークリスマス」
「もう夜だけどね。君何してたんだよ」
「寝てた」

私の返答に今まで!?と驚きを返すロンをげらげらと笑う双子、仲良し兄弟を横目に私のお腹が盛大になった。それに対してさらに爆笑する双子を置いて、私は苦笑するハリーと先に大広間に向かった。あとから慌ててついてくるロンちょっと可愛かったぞ。

大広間ではクリスマスの飾り付けがされてて、少人数だったが食事が豪華だった。先生方から次々とかけられる心配の言葉にへらへら笑って受け流す。健全ばっかかよここは……。私服だから寮はわかんないけど一応生徒は数人いたの全員が帰るわけじゃないらしい。
パリッとした肉々しく香ばしい七面鳥にかぶりついていると、向かいのハリーから遠慮がちに聞かれた。

「ナマエ、なんで帰らないのか聞いていい?」
「家がない」
「……え?」
「家がない」

私の単純な一言にハリーの表情が凍る。何故か先程まで人数少なくとも賑やかだった室内もシンとしてしまった。えっごめんそういうつもりじゃなかった。

「ご、ごめん、ナマエ……」
「いや……言い方が悪かったか……。家はあるんだけどかなーり遠くて、まあ実質帰れない?みたいな?」
「…………そっか」

痛々しい目で見られてナマエちゃん困惑。ハリーも困惑。隣に座る赤毛双子のどっちかに労わるように背中撫でられて更に困惑。でもフォークとナイフ手放せないあたりなんかごめん……。七面鳥うめぇ。

それから葬式モードからは抜けたもののちょっと気まずい空気になった夕食をもぐもぐとお腹いっぱい食べて切り抜けた夜、お風呂上りに1人談話室に置いてあるお菓子をつまんでいると談話室の扉が勝手に開いた。えっこわ。舐めていたハッカキャンディーをごくんと飲み込んでしまった。ちょっと喉痛いし普通に怖い。心霊現象?軽率にKY発言して楽しい夕食の場を気まずくしてしまった天罰かな??いやあれほんと申し訳ないとは思ってるんだよ。ほんとだよ。

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