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ロンに見てっから!とは言ったものの、ぶっちゃけ帰りたいでござる。なにせ寒い、とても寒い。なんで競技場って外なの?そろそろ屋根付きドーム建てても良いでしょ。お空はめちゃくちゃ曇ってはいるものの雨が降る気配もなく、太陽光を透かして視界は良好。試合は順調に始まり、歓声と野次が飛び交う中ハーミーの頭のいい解説をちょこちょこ聞きながら試合を見上げる。と、周りの客席から歌声が聞こえてきた。なになに応援歌?あるんなら言っといてよ、私歌えないじゃん──と少し唇を尖らせたとき、しっかり歌詞が耳に入ってきた。

『ウィーズリーは守れない 万に一つも守れない』

「なんですって!?」
「ハーミーもちつけ!」

マジかよグッズ製作のみならず歌まで作りやがったスリザリン!自分とこへの応援歌作れよ!ロンためにひっどい歌作ったんですか!?歌詞いっぱい考えたんですか!?どっからその情熱出てくるんだよ…もはやすげえよスリザリン……。怒りで立ち上がり全身で文句を言っているハーミーを取り押さえる。ハーミーの文句も歌にかき消されてるのが現状だ、し……ロンもゴールさせてしまったものだから更に声が大きくなった。練習したのか?スリザリン生みんなでこの歌練習したのか?

「ハリー!早くスニッチを!」
「ハリー何してんだ早くしろ!」
「そこだ!そこにいるぞ!駆け抜けろファイアボルト!」
「なにそれカッケー」

今の言ったの誰?ディーン?すごいCMのキャッチフレーズみたいだったな。私が感心している間にもおそらくハリーっぽい箒がびゅんびゅん移動して目が追いつかない。今どこ?え?どれ?あれ?あれ違うの?あれはアリシア?ハリーどこ?指でさされても指先を追うしかない。むしろゴール前にいるロンの方が見えやすいのだが、ウム…がんばれ……としか……。
解説のリーが盛り上がりまくっているお陰でなんとか試合状況を理解して、いやしてないけど、ブラッジャーとクァッフルとスニッチで誰がどこでどれ状態だけど。とりあえずきょろきょろと見回していると、誰か選手に何かぶつかったのが見えてヒッと小さく悲鳴が出た。選手はそのまま地面に落ちていく。ウッワ痛そう……。

「きゃあ!ハリー!!」
「……あ!?」

ハリー!?今のハリー!?当たったのハリーか!?落ちてったのもハリー!?嘘だろオイ!慌てて立ち上がり背伸びをしてピッチを見ると、アンジーがハリーを引っ張り起こしていた。少しよろめいている様子に苦い顔になってしまう。当たり所悪かったら死んでた高さだぞ。これだから危険スポーツは危険なんだ……とハラハラしていると、何やらスリザリンの人たちが話している。流石にスポーツマンシップで称えあったりしてんのかなと呑気に見てたらハリーが突然相手に殴りかかっててぎょっとした。

「エッ乱闘?」
「やめてハリー!」
「いいぞハリーぶっつぶしてやれ!」

ハリーと、あれは赤毛だから多分双子のどっちかがスリザリンの選手に多分一方的に殴ってる。グリフィンドールは悲鳴と応援の声とが半々…いや3:7くらいだな…流石グリフィンドールだぜ。ハリーはまず医務室へ行って欲しい。乱闘はあっという間に先生に止められて、ハリーと双子のどっちかは競技場を出ていく。ハーミーが頭が痛いというようにこめかみを押さえていた。




試合後の大広間にハリーたちはいなかった。ハリーと双子の片方と、それからロンが不在のなか試合には勝ったからかグリフィンドールの席は盛り上がっている。
いつもよりも気持ち早めに食事を平らげ、念の為のハリーたちの分の食事をとっておく。とりあえずパイと肉でいいだろ。中身のわからないパイとローストビーフをお皿に分けて大皿ごと拝借しようとすると、向かいに座っていたジニーちゃんがギッとこちらを睨んできた。えっ…た、食べたかった…?いいよたんと食べな、とお皿を渡すもどうやらその視線は私を通り越えてるっぽくて、辿るように振り向くと丁度席1個挟んだ向こうにスリザリンの選手たちがいた。

「ゆるせない……ゆるせないわ……!」
「な、なに…?」

恐る恐る聞くとジニーちゃんはダァンッ!とフォークで薄いローストビーフを串刺しにした。周辺の生徒の肩がびくっと跳ねる。

「聞いていなかったの!?スリザリンよ!クラッブの罰則は書き取りだけ、ですって…!?ハリーにブラッジャーを当てたくせに!」
「ほおん……クラッブね?どれ?あの笑ってるでかいの?」
「座りなさいナマエ。あれはモンタギュー、クラッブはあっちのでかいのよ」
「オーケー」
「オーケー、じゃないわ。座りなさい、あなたまで罰則を食らうことになるのよ?」
「罰則王になる覚悟は出来てる」
「 座 り な さ い 」

はい…。ローブの裾をぐいんっと引っ張られ大人しく座す。ずい、とクッキーが乗っかったチョコレートサンデーを前に出されて寒いのに…としょんぼりしながらスプーンですくったアイスをちびちびなめた。別にどうこうするつもりはないっていうかちょっと文句を言いにいくくらいのつもりだったんだけど、とゴニョゴニョ言ってみるがハーミーの鋭い視線に大人しくお口チャック。と、横からするりと肩を組まれてついでに体重を乗せられる。重いんだが。

「安心しろナマエ、仇は俺がとってやるさ」
「ハリー死んでないけどあの野郎をボコボコにしてくれるなら良し」
「さっさとしてよフレッド」
「あなたたちね…私は一応監督生なんだけれど?」

そう言いつつ聞かなかったことにするのはご愛嬌な監督生。ジニーちゃんのお陰で今私の肩を腕置きにしている双子の片方がフレッドだとわかったけど、相棒がいないからかいつもより少し静かだ。いや、相棒がいないからっていうよりは、

「落ち込んでる?」
「俺が?まさか!この俺が落ち込む理由がどこにあるんだ?落ち込んでるのは俺よりロニー坊やだろうな」
「……やっぱり、そうよね。フレッド、ロンはどこに行ったの?」
「さあな、帰ってママに泣きついてるかも」
「フレッド!」

ハーミーの声に肩を竦め、フレッドは私のサンデーの上に刺さったクッキーを持って行った。「ロンの事頼んだぜ」と囁かれそれは当たり前だと頷く。あのさ、ついでにアイスも持ってってくれ。寒いんだって。

結局誰も、差し出したハーミーですらお腹が冷えると言って助けてくれなかったアイスの残りを夜だけどやむなしと諦めホットコーヒーにぶち込みなんとか食べ切る。そして寮に戻ろうとすると、大広間の入口の方からざわざわと騒ぎが広がっていた。なんだなんだと人の流れに乗っかれば自然と掲示板の前に出た。

”高等尋問官は、ここに、ホグワーツの生徒に関するすべての処罰、制裁、特権の剥奪に最高の権限を持ち──”

ぽかんと口が開いたまま閉じない。ハーミーが戸惑ったように「最高の権限…?」と呟く。そりゃざわつくのも当たり前だ。前にノットくんがアンブリッジには魔法省が後ろについてる的なことを言っていたが、これは、つきすぎでは…?

「……いよいよヤベーじゃん」

ダンブルドア校長VS魔法大臣ってこと?なにそれゴジラVSキングコングみたいなノリじゃん。とにかく今後波乱の予感しかない。どうなっちまうんだホグワーツ。

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