■かさささぎ

※もしかするとあるかもしれない未来

「ただいま」
「おけーりー」
「……なにそれ?」
玄関の前でもっさもっさとした葉が揺れる。帰宅したばかりのハリーが目を丸くするのを見て、そういや初めてだって気がついた。ホグワーツでの夏休みは一緒になったことないもんなあ、ほら私基本灰色の部屋だったから。
「今日七夕じゃん?だからこれ。笹!」
「笹?クリスマスみたいなやつ?」
「だいたい似たようなもん」
「ふーん」
また適当言ったなみたいな目で見られてるけど似たようなもんだって。サンタがソリ乗って子供に会いに来るかわりに彦星がカササギに乗って織姫に会いにいくんだから。あれ、違ったっけ?まあいいや。切り抜いた色とりどりの紙をハリーにも渡す。
「これに願い事書いて、葉に吊るすんだよ」
「へえ……ナマエは?もう書いた?」
「ん」
笹の上の方につけられた紙を、ハリーが葉を引っ張ってのぞく。あーあーちぎれるちぎれる!せっかく椅子乗って頑張って上につけたっていうのにハリーの身長ではもう簡単に見られてしまうんだもんな…くっ悔しい。今からでも背が伸びないもんか。あ、やばそうな魔法薬は使わない方向で。信頼の牛乳には裏切られちまった……。
「ムビョウソクサイ」
「二度と聖マンゴに行くはめになりませんようにってこと」
私の短冊を見てクスクスわらったハリーが、羽根ペンで自分の分の短冊にさらさらとなにやら書き込んでいる。
「これって裏も書いていいの?」
「めっちゃ書くじゃん」
「願い事なんてありすぎて困るよ」
「んはは、なによりだよ。なんなら紙あるし、いっぱい書いてつけちゃえ」
色々あったハリーも今は欲まみれに生きているようで安心したわい。これくらい許せ彦星そして織姫。英国でやってるの私らくらいかもしれないし。願い事叶うのが抽選式なら多く書いた方が有利だし。抽選式かどうかはしらんけど。
ハリーが真剣に裏面にも書き込んでいる間に、夕食の準備をする。もう出来てるから並べるだけだ。食べる前にハリーの魔法で温めてもらえばいい。魔法ってちょーべんり!持つべきものは電子レンジと魔法が上手い旦那だわほんと。しみじみと魔法の便利さを噛み締めたところでハリーが短冊をつけ終えたらしくダイニングへやってきた。机を見てパッと顔を輝かせる。
「すごい!もう叶ってる!」
「ん?」
「ハンバーグが食べたいって書いたんだ」
「無欲か」
思わずすんっと真顔になった。その程度いくらでも叶えられるが!?まさかの内容に彦星もびっくりだよ。ちゃちゃっと杖を振ってもらい料理が温まるとハリーは幸せそうにハンバーグを頬張った。喜んでもらえて何より。
「ちなみに明日は何が食べたいって書いた?」
「ラーメン」
「…叶えに行くかあー」
「わあ、ナマエが僕のオリヒメだったの?」
「カササギに乗るのはなあ…」
「大丈夫、僕が箒で迎えに行くからね」
「箒もちょっとなあ…」

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