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こんなに気まずいことある?ってくらいシーンとしたお昼ご飯を食べ終えて、気まずいままそっと3人についていく。魔法薬学の後そっと逃げようとしたんだけどね、さすがシーカーというかハリーは目敏く私をつかまえ連行され今に至る、だ。占い学サボろうかなとか言ってるハリーにハーミーが怒っているさまを近くで見ながらじっと黙っていると、後ろからトンと背中をつつかれた。見るとロンが複雑そうな顔をしている。耳元で小声で囁かれた。

「病気とか、怪我とか、死ぬやつ?」
「そんなヤバくない。ちょっと、まあ、色々あるんだよ、でもそんなヤバくない」
「そっか。ならいいや」
「……いいのかロン」
「いいよ、ハリーに任せる」
「いいのか……?」

それは果たして本当にいいのか……?と思いつつも、無闇に踏み込まないロンに感謝した。あと多分まるまる聞こえているだろうハリーとハーミーも何も言わないでいてくれて助かる。秘密を許容してくれる友人はありがたいものだ。き、キズナってやつ…?やっべ超青春じゃん自分の思考が青すぎて照れる。
占い学の教室に入るといつも通りの暑さと匂いでとりあえずローブと上着を脱ぐと、なんとシビレル……じゃなくてシビル先生はバシン!バシン!と本を机に叩きつけるように置き配っていた。

「さあ、おやりなさい!やることはおわかりでございましょ!それともなにかしら、あたくしがそんなにダメな教師で、みなさまに本の開き方もお教えしなかったのでございましょうか!?」

えっなに怖い怖いどしたの。今日みんな怒る日?しかしいつにないヒステリックな様子にざわざわしていると、勇者パーバティが直接聞きに行った。すると、なんでも査察の結果が良くなかったらしい。アンブリッジの名前を出しただけでもうどっかーんって感じだし、ずっとぶつぶつと恨み言みたいなこと言っててちょっといつもとは違う状態で授業は進んだ。でもやっぱいつも通り死の予言(笑)はあったからさすがブレない。
次のDADAでは、生徒たちの今までの反論は嘘だったかのようにみんなシーンとして言うことを聞いていた。こっち逆にびっくりしたわ。ちなみにハリーの罰則の一件で私がぶち切れそうだと思ったのか左右をハリーとハーミーに囲まれた。だからどうしたぼくナマエちゃん、教科書読んでるフリして半目で寝た。両サイドにはバレてたけど「おはよう」と普通にされて、今年のDADAはお昼寝タイムと我らが監督生様に正式に認められたわけだ。これで睡眠時間ゲットだぜ!でも睡眠時間のくせに宿題は出してくるんだからなあ…。お腹いっぱいに夕食を食べて眠くなっても、宿題は勝手に消えてくれないわけで、やらねば積み重なるわけで、しょぼしょぼする目を擦りながら談話室でハリーたちとカリカリ羊皮紙とにらめっこするしかない。学生しんどい。アンジーやハリーたちがぶつぶつと危険スポーツについての愚痴とかハーミーのお小言とかをBGMにガリベンよろしくやっていると、突然ワーッ!と突然フロアが湧いた。驚き見ると、赤毛の双子のどっちかがゲロゲロ吐いていた。パーティー…ではなさそう……?

「…………えっ?えっなに?保健室呼ぶ?」
「"ずる休みスナックボックス"のデモだよ」
「あれを食べれば嘔吐症状が出るってこと。治るから大丈夫」

それは食べ物ではないし大丈夫でもなくない??確かになにかお菓子を食べた途端双子の片方はスッと元気良さそうにサムズアップをした。そしてさらに盛り上がるフロア。双子の片方はまたお菓子を食べてゲロゲロと吐いて歓声があがった。なにが「すげえ!」「天才!」なんだよグリフィンドールやば…引くわ……。そしてなぜ平然としているんだハリーたちは。繰り返される吐く音と歓声を聞いてるとなんだか私まで狂ってきそう。無理よりの無理。これじゃレポートも進まんわと早々に見切りをつけて私は部屋に戻ることにした。あばよ狂人(くるんちゅ)共!みんな疲れてんだよ!
部屋に戻るとアリアもサーシャもいて、2人とも机に向かってカリカリしている。ただいまーと言うと2人は片手をサッとあげるのみだった。なにその返事かっこいいな。しかし……ウーン静か……嘔吐の声は聞こえず……ホーホケキョ……ヨシ!私も自分の机に残りのレポートを広げ、ようとして首を傾げた。机の上には手紙があった。簡素な茶封筒、宛名はナマエ・ミョウジで差出人は無し。いつものミョウジ教授過激派ファンとは違う雰囲気だった。開けようとすると、見慣れぬ封蝋の糊はぱりっと簡単に剥がれる。ウワッ……検閲されとる……。

「……なんだこれ」

"When the cat's away, the mice will play.(猫の居ぬ間にネズミが遊ぶ)"

白い便箋の真ん中に、万年筆で書かれたような細い文字。流れるような文章は字がお上手だけどさっぱり意味わからん。

「どういうことだってばよ」
「本当にこれだけ?怪しいわよ」
「こういうのって焼けばいいんじゃない!?」
「物語の読みすぎよ。せめて複製してからにしなさいよ」
「キミら興味津々だなオイ」

レポートをやっていたはずの2人は気づけば隣にいて、サーシャは牛乳手紙よ!と紙を炙ることで文字が浮かび上がるのだと主張する。そんな密書が私に届くとは到底思えないけど、わくわくの娘たちはやる気らしい。アリアが杖を手紙に向けた。そのやり方は私の予想だと杖から火が吹き出して巻き込み事故だが!?ぎょっとして手紙を放り投げると、アリアは呪文を唱えて魔法をナイスコントロールで空中の手紙にぶち当てた。なななんと手紙が増えてひらりと落ちたのは2通。拾いあげて両方掲げると、どっちもまるきり同じもののように見えた。文字も変わらず、紙質も一緒。

「すげーそっくり!魔法じゃん!」
「知らないの?私たち魔女なのよ。で、どっちが複製?」
「アッ……エッ……こっち、かな……?」

そんなんわかるわけねえのだけど一応左手のほうをあげてみる。白い目が刺さってアウチ。ま、まあ原本燃えても問題ないじゃん?やっちゃえ○ッサン!アリアは今度こそ火を出した。ジュッ。メラメラ。絨毯にも火が移ったのを見て「キャッ」とサーシャが悲鳴をあげた。……いや普通に燃えてますけど!?ウワー!火事!?やめろバカ!水!水、あれ水ってなんだっけ!?いや消す方が先か!?慌てて杖を取り出して先っちょを向けた。

「えばネすこ!」
「エバネスコ!」

アリアと声が重なり、火は消え焦げ臭い匂いだけが残った。手紙を確認しようとしてしゃがむ。……おろ?おかしいぞ。燃えたというのに何故か便箋は白いまま、しかも文字が変わっていた。

”かのダンブルドアは耄碌し英国魔法使いの誇りであったホグワーツの威光の欠けらも無く、校内には智慧の欠片もない獣がのさばり敬愛するミョウジ教授の忘れ形見もまたその中の一人となってしまうことに深い諦念を覚える。命あるかぎり希望は捨てんと思量するが、未だにあなた自身が望まぬならば致し方ない。いつまでも遊び呆けていずに、出自を自覚し自らを考え直したまえ。幼稚な行為はやめて、魔法に身を費やすことを願う”

「結局お前か〜い!」

はいはいミョウジ教授。2人にも見せると、拍子抜けつまらない時間の無駄と散々に言われた。言い返す言葉もないわ。しかし、内容がますますわからなくなってきたなあ。一応引き出しから前の2通も取り出して並べてみる。すると、なんだか違和感があることに気づいてじーっとよく見比べてみる。

「あれ……筆跡違くね?」
「だから何よ」
「最近流行りの自動羽根ペン使ったんじゃない?」
「自動!?なにそれ超欲しい」

勝手に書いてくれんの?最高じゃん。見てよ私の手の横もうまっくろくろすけだからと見せびらかすと、サーシャも手を見せてきてお互いの黒さに爆笑した。インク付きすぎでしょウケる〜っていうかお茶目で面倒くさい細工入れてくんなよな厄介ファンめ。……いやまてこんな小細工を急にしてくるってなんか裏が……もしや検閲があること知ってた?関係者か?疑問は膨れるばかりだけど、考えてもわかりそうにないし、興醒めしたらレポートという現実が目に入る。そして私たちは焦げた絨毯を見なかったことにした。

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