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来たる決戦の日。嘘ですただの休日。しかしホグズミードの日である……と言えばもうおわかりだね?実験当日〜!バババン!
寮でハリーたちを見送ってから、ほぼ無人の校舎を歩き暴れ柳の前というクソ物騒な待ち合わせ場所へ行く。暴れ柳とはその名の通り会う者皆傷つける超危険植物だ。その前で待ち合わせって普通無いよ。確かに人は少ないどころかいないけどもなんでそんな命懸けの待ち合わせしなきゃならんのだ。スリザリンってみんなそうなの?スリザリンへの偏見は増すばかりである。しかし予想とは違い、今日の暴れ柳は暴れていなかった。静まり柳だった。

「来たか」
「やほ。……暴れ柳具合悪いの?スネイプ先生呼ぶ?」
「暴れ柳は特定のコブを押すと一時的に沈静する」
「えっ初耳」
「5年にもなってまだそんなことも知らないのか?」
「ウス、スンマセン」

ノットくんは読んでいたらしいペーパーブックを仕舞うとそのまま暴れ柳の下に潜っていく。……穴が空いてるなんて知らなかったな、っていうか暴れ柳にそんな近づく人いる?いないよイカれてるよ流石魔法界だな。恐る恐るノットくんの後ろについていくと、じめじめした洞窟のような場所に入る。風が穴を通って人の声のように聞こえる。なんか怖いな…と少しビビ、いやビビってねえし!?ちょっとだけビクついただけだし!?虚勢乙。

「ここからホグズミードに行けるの?」
「ああ、叫びの屋敷に出る。ホグズミード村は初めてか?」
「いや、3年のときに抜け出したのと、去年記憶無くしてる間に1回行ったっぽい。叫びの屋敷は初めてだけど…七不思議のやつ?」
「七不思議……ああ、そういえばあったな。まさかとは思うが、信じているのか?」
「私にとっちゃ魔法界は全部七不思議で出来てるようなもんだよ。あ、言ったっけ、消えた亡霊の嘆きは私のばーちゃんの遺体が見つかってないからってのが由来らしいよ」
「ミョウジ教授の遺体が? ……解せないな。七不思議の名称と行方不明の関連性が曖昧なうえに、嘆く声がホグワーツで聞かれたことがあるのか?バジリスクのほうが聞くが」
「バジリスクってなんか聞いたことあるなあ……」

ほらな、って顔やめて。暗くて細い道をノットくんの背中頼りについて行ってるけど今めちゃくちゃ表情わかるよ、ちょっとドヤ顔してんでしょ。っていうかバジリスクってなんだっけ?記憶に薄いけど聞いたことはある気がする。ハッこれが七不思議…!?体験しちゃった。
ま、よくわからんばーちゃん(仮)よりも、チキチキホグズミードだ。ワクワクする気持ちが半分と、やっぱ怖い気持ちが半分。身体が自分の支配下に無いって実はめちゃくちゃ怖い。ビビってねえし!?うそ、ちょっとだけビビってる。ちょっとだけな!

「なんだろう、この泥酔後を観察されるような恐怖」
「大して変わらないだろう」
「皮肉にほっとするってなかなか無いよ、っていうかいつ記憶飛ぶかわかんないからね。マジでわかんないからね」
「あなたは知らないようだが、生憎俺は魔法が得意でな」
「はー英国人ってそういう皮肉がう









ハッ、と目が覚めた。今まで暗い場所にいたみたいに周囲の明るさが少し眩しい。数回瞬きをするとだんだん焦点があっていく感覚、目に入ったのは向かいに座りじっとこちらを見ながら書き物をしているノットくんの姿だった。眉間に皺を寄せ難しそうな顔をしている。

「……戻った、と判断していいのか?」
「……多分?えーと、ここは?」
「ホグワーツの図書館だ。気分はどうだ?」
「なんともない。……いや口ん中甘ったるいな」
「あれだけバタービールを飲んでいればそうだろう。将来あなたと酒は絶対飲みたくない」
「はーん??」

実験は無事終わったらしい。何を持って成功というのかはわからないけど、おそらく今年に入ってから初めて私は記憶を無くしたし、ノット先生はその間私の様子を見ていた。結果としては……うーん……全体的に口内がなんか甘いし、やけにお腹が苦しい。あとちょっと胸焼けみたいなのしてる。新しいタイプの発見だわ。そういや去年知らないうちに行ってたときもお菓子買い込んでたよな確か…。食いしん坊か。素直に状態を伝えると、ノットくんは私が言ったことも全て羊皮紙に書き込んだ。

「様子だが、普段よりも口数が少ない程度だろう。話しかけられれば多少返答をするが、どれも会話を続ける意思のない相槌のようなもので自ら話はしない。これは昨年記憶が飛んでいる最中の状態と同様だ。しかし行動は多い、財布に金がないのに何故あれほど飲み食いを?」
「いや知らんけど。……えっ、もしかして無銭飲食?」
「貸しとしておく」
「うわーんありがと金持ち!」

ノット先生には色んな意味で頭が上がらなくなったな。いつかちゃんと返します!それにしてもこの満腹感と胸焼け具合は相当食ったぞ。私なにしてんのマジ。もしかして聖マンゴでもアホほど食ってたりして、うわタチ悪。

「記憶は」
「叫びの屋敷に行く途中から無い」
「……ああ、なるほど、あれが変化のタイミングか」
「そんなわかりやすかった?」
「話の途中で不自然に黙り、そのまま自発的発言をしなくなった。それから、雰囲気が変わる。これは俺の主観だが、いつにも増して人への興味を無くしたようだった」
「……本当に変なこととかしてない?隠さないでよ」
「俺が隠す意味がどこにあるんだ。あなたはコンペティティブ・イーターさながらにひたすら食べていたぞ」
「それはそれでやべーな」

ノット先生の書き込みは止まらない。壁にかかっている時計を見れば時刻はもう夕方らしい。朝からこんな時間まで私の観察しててノットくんは嫌じゃないかとか申し訳ないなとは思うものの、こうもガリガリと記録されると案外楽しんでね?とも思う。時間帯や店ごとに細かく書かれた報告書みたいなものを横から覗き込み、自分の食べた量にドン引きした。あと書かれてる名称が対象Aだからマジもんの実験対象の心地。名前で書いてくれないんだ…。どうせなら対象Mかなって思うけどなあ。おわかりですね、そうモンキーです。
窓の外は星が輝いていて、そういや夕食は、と聞くとホグズミードでいくつか食べたし、あまりにも私が食べるものだからもういいと言われて納得した。大食い見てお腹いっぱいの気分になるのと一緒だね。私は大変複雑だけど。

「それに、ポッターと顔を合わせるのは避けたい」
「……ハリー?なんで?」
「俺を巻き込まないでくれ」
「なんの話!?」

ノットくんは心底面倒くさそうに言うし、一体ホグズミードで何があったんだよ不穏な雰囲気、いやビビってねえしィ!?

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