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まだ日が登りきっていない時間からもぞもぞと布団の中で丸まったり伸びたり寝返りを何度も打ったりしてどうにか寝ようとするけど、心は落ち着かないし頭はやけにはっきりしている。ハリーと喧嘩してから二週間くらい経った。ここ最近毎日こんな感じで、喧嘩してモヤモヤして眠れないとかそんな繊細なとこが私にもあったらしい。今日も授業も大量の宿題もあるのに寝不足で一日やれんのか。いや、べつに無理にやる必要は無いはずなんだよ、だって私は──と言い訳を並べようとしたところで周囲の切磋琢磨に触発されていつの間にかやる気になっていたのは私だ。あと罰則が嫌。毎日こんなことをぐるぐる考えてループしてる。
せめて体を休めようと目を瞑ってしばらく、結局同室で一番早起きのアリアが起きた時点で朝だと認めてベッドから抜けた。

「今日も隈がひどいけれど」
「私の新しいチャームポイント」
「そう」

アリアは朝予習をしてからサーシャと食堂に行くのが常だ。しかし私にはそんなに勤勉さはないので着替えた後にまたベッドに寝転がり、うだうだとしてサーシャが起きるのを待った。怠惰の極み。たまにはこういう日もあっていいでしょ、なあハムたr……ゲフンゲフン。へけっ。
サーシャの準備が終わりさあ出ようという頃にようやく眠れそうにうとうとし、なんでこうもタイミングが悪いのかと睡魔が襲うまぶたを擦りながら大広間で朝食をとった。まずいオートミールとベーコンと目玉焼きとブロッコリー。もちゃもちゃと咀嚼する私にサーシャが首を傾げた。

「ナマエはどうしてマズいって顔しながらオートミール食べるの?マズいんでしょう?食べなければいいのに」
「なんかわからんけど食べちゃう」

中毒性があるというか、なんか入ってるんじゃ……魔法界はマジでありそうだな。想像してちょっと怖くなったわ。なにせ口が固定されるヌガーがある世界だもの…これが神秘ってやつ?
最後の一口を追い牛乳でざっと流し込んで食べ終えると、ナマエ、と声をかけられた。

「ん? ……ハーミー、おはよう」
「ええ、おはよう」

片手をきゅ、と握ったハーミーが取り繕ったような笑顔でいる。少し離れた席から赤毛がちらちらしていて、ハーミーたちはこうして少しずつ話しかけてくれるものの私の考えがまとまらなくて付き合わせてしまっている。申し訳ない反面ほっといて、みたいな気持ちがなくもなくもなくもない。

「あの、ナマエ……」
「ナマエ、そろそろ行くけどあなたは?」
「あ、行く行く。ごめんハーミー、またあとで」

アリアに言われて席を立つ。ちょっと気まずい。いや正直ちょっとどころじゃない。から、アリアに乗っかって逃げるという選択肢を選ぼうしたわけだが──ぐっと手を掴まれてつんのめって立ち止まった。

「……ハリー」
「うん」
「いや、あの、手を」
「おはようナマエ」
「…………オハヨウ」

ガッチリ腕にハリーの手がくい込んでる。痛いぞ。そんでよく平気で挨拶出来んなハリーポッター鋼のメンタルか? ──ちょっと嬉しいとかは、思っていない、はず。

「アーポッター氏、離していただけるとありがいってえわ!ちょっとなんでつねった!?」
「ナマエ、座りなよ」
「座らんよ私は行くんだよ」
「行かないで」
「……ぶっちゃけ私は今クソ気まずい」
「僕だってまだ腹が立ってる」
「じゃあ離してよ」
「嫌だ」
「めちゃくちゃ矛盾!」

私とハリーの攻防戦に呆れた様子でアリアとサーシャは先に行ってしまった。置いていかれちまった。無情。そしてハーミーは何故か安堵したように息を吐き、さっさと席について食事を始めたし、ロンはゴブレットに牛乳を注いで私とハリーの前に置いた。私の真似かい!?ありがとよ!

「ナマエ」
「……………………………ハイ」

そして私は負けた。二週間ぶりに負けた。 大人しくハリーの隣に腰かけ、メープルシロップのかかったスコーンをもそもそ食べる。なんかすっごいデジャヴ。
ハリーはムスっとしてるし別に会話が弾む訳でもない。ハーミーとロンは私たちの様子を伺っているようだし、なんともいえない空気が漂う。そんな中ハリーが言った。

「ナマエもやるだろ?魔法の練習」
「……未だに増え続けるネズミの話してる?」
「違うわ。その、あまり大きな声では言えないのだけど」

ちらちらと周りを気にしているハーミーに顔を寄せる。なになに。DADAの自主練習とな。ハリーが先生役で有志を募って魔法特訓の計画を立てているらしい。えっすげえじゃん。ハリーが先生役で先頭に立つもののブレーンはハーミーらしいからガチガチの組織としても成り立ちそうだ。

「それで、週末ホグズミードのどこかに人を集めようと思っていて、あなたもどう?」

期待を含んだハーミーの瞳を見て脳裏にノットくんの冷ややかな目が過ぎった。外に出るのが怖いって思う前に脳内ノットくんに釘を刺されるのある意味ホラー。

「ごめん、その日はちょっとじっけ……用事があって」
「えっ!?」

ハリーはマジで信じられねえ……って顔で私を見た。そんなに私に予定があるの驚きか!?ノットくんといいハリーといい私のイメージどうなってんの!?休みの日は大体暇な女?バーローいつもは寝るのに忙しいのさ。

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