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占い学からそのままDADAに移動すると、さっきまで塔の上の教室でシビレル先生改めシビル先生と喧嘩をしていたアンブリッシせんせいはなにやら楽しそうに鼻歌を歌ってらっしゃった。だいぶ引いた。私にとってお昼寝タイムと化したDADAゆえに前の席に座りたがるトリオを遠目に中間〜後ろあたりに固まる生徒たちに紛れて座り、言われた通り教科書のページを開いて立てる。少し背を丸めて本部分で顔が隠れるようにして、肘をついて読んでますよ〜風にお昼寝スタイル完璧だ。スッとまぶたを閉じる。

「第2章はもう読んでしまいました」

ハッ怪しい気配。瞬きしただけになっちゃったわけだけども目を開けると、前方でハーミーがピシッと背筋を伸ばしてアンブリッジせんせいと対峙していた。それだけで察した。

「ハーマイオニーもよくやるよなあ」
「そらまー正義のグリフィンドール監督生だかんね」
「俺らは?」
「クッキーを持ち込む不良」

後ろから話しかけてきたディーンが立てた教科書の下の隙間からスッと袋の口の空いた方を差し出してきたので、なるべく音を立てないように手を入れてチョコチップクッキーを拝借し、音を立てないように口の中で噛まずに溶かしていく。

「どうしてバレたんだ?」
「匂い」
「アンブリッジにもバレると思うか?」
「甘ったるい香水バカかけてっから平気っしょ」

口止め料としてもう一枚もらうと口の中の水分が無くなってしまった。もにょもにょと口を動かし唾液を出しつつハーミーがせんせいとバトってるスリングハートだかスリリングハードだかの章を開いて読んでみるが、古めかしいややこしい書き方に眉を寄せて終わる。そもそも呪いと魔法の違いもよくわからん私には理解するなんてのは到底無理な話だ。これが理論を応用して〜とか言うのなら最悪だけど、アンブリッジせんせいの言い草だと意見云々らしいので今季のDADAは現国と同じようなものだと思う。

「グリフィンドール寮から5点減点いたしましょう」
「理由は?」

ハリーはげきおこした。うっそだろ被弾してやがる。今日の授業も荒れそうだな、と座席距離的に傍観する。しかし。

「魔法省の査察をパスした先生はいなかったでしょう」
「ああ、クィレルは素晴らしい先生でした。ただちょっとだけ欠点があって、ヴォルデモート卿が後頭部から飛び出していたけど」

ン゛ッ!?あまり急展開に驚いて立てていた教科書が倒れて、シンとした教室にバタンと音が響いてしまった。みな一度こちらを向くも私の間抜け面を見て興味をそらす。くぃ…なんとか先生って確か1年の時の教授だ。もうあんまり覚えてないけど……えっ後頭部から?ヴォルデモートって最近噂の人だよね?後頭部から?どういうことなの?混乱についていけない。そしてハリーは、罰則の追加を言い渡された。
大広間に向かう途中でトリオに追いつき、ハリーの肩を捕まえる。くるりと振り向いたハリーは苦そうな表情で、あんまり突っ込んじゃいけない部分なのかと察したけども、けども…気になるんだよね…ともにょもにょしてしまう。うまく言えないまま大広間に入ってしまう。マッシュポテトにブラックペッパーをガリゴリしながら様子を伺うけど、ハリーは珍しく私と目を合わせようとしなかった。

「…そんなに触れられたくないやつ?」
「今は、ナマエには言いたくない」
「……わかった」

まあ無理に聞くものでもないし、教員のことだからマクゴナガル先生たちも知ってるはずだし、無理に首突っ込むのもナンセンスだし。ハリーに渡されたナプキンで口の端についたミートソースを拭いながら罰則へ行くハリーの筋肉はついているがどことなく薄い背中を見送る。ハーミーはレイブンクローと子と監督生の話し合いがあるとかでいなくなってしまった。ロンは行かねえでいいのかいとつつくが、ロンは監督生の話し合いという名前のしゃらくせえ女子会だと思っているらしい。よくわからないが監督生というもの面倒な人間関係があるらしい。それよりも、と寮に帰る前に廊下の隅にこそこそと引き込まれた。

「ハリーの罰則のこと、聞いたか?」
「罰則?いやなんも」
「何かおかしいと思わないの?」
「何かってなにさ、ハリーが罰則嫌がるのもいつものことだし、アンブリッジだから尚更嫌なんだろうし、思春期は不機嫌になりがちでしょ」
「ああもう、そういうことじゃなくて、実は──」

”嘘をついてはいけない”?

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