143

目が覚めると枕がレインボーカラーになっていた。……な、何を言ってるかわからねえとおもうが、おれもわからねえ…。二度見して目を擦ってみても枕はレインボーカラーだったし、なんならちょっと光っている。ゲーミング枕…?いつから…?そしてビビり倒した私は部屋にぼっちだった。アリアもサーシャも、サーシュもいない。時刻は昼、めちゃくちゃ慌てたけど今日は日曜だと気づいてホッとした。でもまだ寝ぼけてんのかな、ゲーミング枕はちょっと寝ぼけた脳の誤作動かなと思い一旦ベッドから降りる。トイレから戻ると枕には「かぼちゃフィズ」と書かれていた。おい誰だよゲーミング枕にこれまた光る金ピカ文字で書いた奴は。さっき無かったじゃんて。私のベッドが頭痛いときの幻覚みたいな光景になってる。はあ、とため息を吐くと枕がぴかっと光り、「一緒にミンスパイを食べよう」と文字が変わった。うわあー…察した。
私はいそいそと芋ジャーから制服に着替えて髪を手ぐしでとかしながら談話室へ行く。ハリーとロンが宿題の山と格闘していて、声をかけられたけどご飯食べてくる!と言い腹ぺこの腹を抑えて寮を出た。心臓に悪い呼び出しやめろじいちゃん。お茶目か。

ガーゴイル像の前でゲーミング枕に書かれていた合言葉を言い校長室へ入る。ダンブルドア先生がごちゃついた机でなにやらガリガリ書いていて、私を見てほっほと笑った。

「おはよう、ナマエ。お寝坊さんじゃな」

寝起きには衝撃の光景でしたけどね。はざまーすと返して進められた椅子に遠慮なく座ると、ふわっと紅茶とパイの乗ったお皿が運ばれてきた。まだ机で書いている先生を横目に甘いパイにかぶりついて腹を満たす。むしゃむしゃしているとダンブルドア先生が言った。

「セドリックのことは聞いておるかな?」
「んぐっ、ごほっ、……いきなり本題?」
「君はそちらのほうが良いじゃろうて」
「否定はしないっスけど…聞きましたよ、ハリーから」

ダンブルドア先生が鷹揚に頷く。そして杖を一振。ひらひらと私の前に黒いもにょもにょしたゴミが置かれた。えっなに?干からびたミミズ?

「ミサンガ、というらしいのう。ミスチョウ・チャンからの贈り物だと聞き確認したところ、製作者はナマエ、お主じゃと。──あの日セドリックはこれをつけておった。ヴォルデモートの元からハリーと共に戻ってきたセドリックの心臓は確かに止まっていた、しかしこれを彼の手から遺品として外すと、命を吹き返した。信じられぬことじゃが、世界にはそういったことが多くあり、全てを否定することは出来ぬ」

カランとフォークがお皿に落ちた。ついでにぽろっと私の口端からパイの欠片も落ちた。あんぐりと口が開く。……あ、え、えええ?そんなことってある…のか……?って言うか今サラッとヤバめのことを聞いた気がする…。ついでにダンブルドア先生は私のことを疑っている感じな雰囲気を感じ取った。いや、いやいやいや、ミサンガにそんな効能あったらすでに世界中が研究してるわ。

「ありえないでしょ。そんなん聞いた事ないです」
「ふむ」
「単純に一時期流行ったおまじないみたいなもんですよ?本場のガチの人が作ったならまだしも素人が真似っ子して編んだものだし、そんな効果あるわけないですって。たまたまだと思いますけど」
「確かにのう」

ダンブルドア先生は読めぬ瞳でにっこりと笑った。へ、へへ、と引き攣る頬で私も笑い返す。何を考えてるんだか知らないけど、この件に関しては私はマジでノータッチだ。もしそれが本当なら私は今頃ウハウハに金儲けしてるはず。逆に期待を持たせるようなことを言わないで欲しいね全く。私はパイの最後の一口を無理やり紅茶で流し込み「ごちそうさまでした!」と元気よく校長室から出ようとした。が、呼び止められる。ダンブルドア先生の話はそれだけかと思いきや、まだ続きがあるらしい。

「ところで、マクゴナガル先生が気にされておられてのう、進路希望が一人だけ未提出じゃと」
「……進路希望なんてありましたっけ?」
「おや、忘れておったようじゃ。して、何になりたい?わしはお菓子屋さんに憧れたものじゃよ」

やだダンブルドア先生お茶目ー……副業でやってたりしそうだな??これまたひらりと飛んできた紙は進路希望表と書かれていた。まるで学生時代に戻ったような苦い気分になる。今学生やってるから間違ってないけど、どうしてこう二度も不透明な将来を考えねばならないのか。進路、進路ね、いや帰るから進路も何も無いんだけど……。紙は四つ折りにしてポケットにしまった。

「もしさっきの話マジならミサンガでひと稼ぎしようかな」
「ほっほっほ、楽しそうじゃな。よろしい、よろしい」
「ところでダンブルドア先生、消失呪文も出現呪文も出来ません」
「君には励ましは無駄じゃろうて、わしがかけられる言葉はひとつ、練習あるのみじゃよ。しかし──ナマエは、呪文や杖を介さぬ方が魔法を使いやすい気質やもしれんのう」
「ンエ?」
「稀におる、相性の悪い子じゃ」

今遠回しに魔法向いてないって言われた?マ??実はね、それ一年生の頃から知ってたんだ……。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -