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どすん!「ぐええ」

腹が潰れた。えっほんとに?いやマジで潰れた。ゲッホゲッホ咳き込みながら目を開けると、べろべろ顔中舐められる。う、うおお。

「…ちょ、さーしゅ、まじおもい…いまなんじ……」
「もう昼よ、いい加減起きなさい」
「Today is Saturday…you know…」

休みくらい寝かせてくれよ…。気分は休日のお父さん。腹の上でもふもふと戯れる暇そうなサーシュを持ち上げて床に下ろした。目を擦りながらとりあえずトイレに行って戻ると、布団の上は既にサーシュの寝床にされていた。……いやなんでよ、サーシャのベッドに行きなさいよ。サーシュの飼い主は部屋にはいないらしく、アリアが一人もくもくと机に向かっていた。

「起きた?」
「まだねたいッス」
「眠気覚ましに新聞をとって来てくれる?サーシャがマグル学で使うって今朝の持って行ってしまってから返ってこないのよ。私もマグル学をとってるってこと、あの子忘れてるんだわ」
「私の言葉聞いてた?」
「早く行って」
「……へーい」

なあんで寝起きにパシられるんだ。ノーと言える日本人になりたい。別に言おうと思えば言えるけど、どうも頭が働かないうえに寝起きでアリアの巧みな言葉を交わすのは面倒くさい。のろのろとジャージの上着を羽織り階段を下りる。芋ジャーは寝巻きにも部屋着にも出来るから便利だよね。
サーシャは談話室いた。なんか楽しそうに下級生とわちゃわちゃしており、へーいと声をかけると全員がこっちを向いてちょっとビビった。「なにあの格好」「誰?」「あれだよ、モンキーの…」「ああ…」下級生がごにょごにょ言っているのが聞こえる。はろーはろーモンキーです。なにが”ああ”なのか。芋ジャーで納得される何かが…?ひそひそされる芋ジャーが可哀想でしょ!まあこの学校で芋ジャー着てんの私しかいないけども。特定余裕。特に気にする事はないので私はサーシャにそのまま話しかけた。

「アリアが新聞返せってさ」
「あ!そうだった」

ぽいっと投げ渡された新聞はちょっとくしゃってなっててサーシャの性格が出てた。任務完了。部屋で二度寝でござる。
それにしても、日刊預言者新聞といえば学期開始当初の読み切るまで寝れま10を思い出す。あれ以来あんまり読んでないけど、今眠いからなおさらしんどい記憶。階段をのぼりながら、興味本位で新聞を開いた。へーほーんふーん。バンドのベースが結婚したんだってよ。めでたいねー。
部屋に戻ると教科書とにらめっこしているアリアに新聞を渡し、サーシュを奥へ追いやってベッドに潜り込んだ。

「……ちょっと、まだ寝る気?」
「空腹より眠気が勝ってる」
「そう。──あら、シリウス・ブラックがロンドンにいるんですって、ナマエ」
「……ああ、うん、読んだ」

だからなんだって感じだけど。そういえば前にシリブラがバンドのボーカルとかいう話もあったな。うすーい記憶を思い出し……多分そのまま寝た。
次に起きた時、窓の外が暗かった。日中の記憶は無いけど寝癖がハイパー元気だから多分これは飛んでるんじゃなくて寝てた。部屋には誰もおらず、サーシュがサーシャのベッドの下で丸まってたくらいで、慌てて時計を見ると夕食の時間ギリだった。やっべ!芋ジャーのまま部屋を飛び出て大広間へ行く。今日起きてた時間2時間にも満たないな。寝溜めしたわ。大広間はもう時間ギリだからかまばらに人がいて、その中にいつもの3人の姿もあった。ハーミーに手を振られてそっちに向かい、空いていたロンの隣に座る。

「なに?暗い顔してんじゃん」
「うるさいな。なんだよその寝癖、爆発でもしたのかよ」
「うわ機嫌わる。なんかあった?」

向かいのハリーに聞くと、今日は危険スポーツの練習日だったもののスリザリン連中に邪魔されて残念な結果に終わったらしい。あー…ああ……なるほどね……。ドンマイの意味を込めて軽くロンの背中を叩いた。宿題地獄で向こうも鬱憤溜まってるんだろうなあ。牛乳をカップに注いでロンに渡して私も飲む。と、ハリーがもじもじと私を見ていた。

「どした?」
「あの、…今日の新聞を読んだってサーシャから聞いて」
「うん」
「シリウス・ブラックのこと…」
「……あー、なんだっけ、ロンドン?にいるとかなんとか書いてあったっけ?それがどうしたの」
「でも、ナマエはシリウスのことは」

ぐぎゅるるるる。そこでお腹が鳴った。ハリーが話してるところでしょうが!いや、あの、ごめん…なんかちょっと気まずく恥ずかしいのである。へらりと笑って誤魔化してみる。

「今日ずっと寝てたからなんも食べてなくて」
「うっ、うん、食べよう!このパイ美味しいよ!」

話はもういいのか、ハリーがずいっと皿を差し出してきた。……ハリー、最近ステーキキドニーパイばっかじゃね?いくら成長期で肉が欲しいと言ってもだな、野菜もちゃんと食え野菜。よそわれたパイの横にサラダを盛ってもりもり食べる私を、ハリーはなんとも言い難そうな表情で見ていた。……え、野菜嫌いだったっけ?

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