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ヘットヘトで夕飯をなんとか食べたものの、夕飯を食べたら眠くなる。真理。羽根ペン持ったら眠くなる。世の摂理。サーシャの泣き言に全身全霊で激しく同意しながらとにかく羽根ペンを握る。去年の終わりの頃の宿題攻めはコレの練習ってことか……!受験生のゼロ学期みたいなことして……うええん……帰りたいよお……。かつてないほど勉強してる。学期始まったばっかなのに。五月病ならぬ九月病になるぞ。
踏ん張ってとりあえず魔法史は終わらせられたものの、私は消失呪文をすっかり忘れていたのだ。よし終わったもう無理寝よう!とシャワーを浴びようとしたときアリアから「消失呪文は?」。サーシャと顔を見合せた。お互いゲッソリしてるウケる。無理じゃね?これは普通に無理じゃね?集中力も無ければやる気もないし睡魔だけが元気。しかしアリアは許してくれず「せめて一回はやりなさいよ。物が消えたら困るから談話室でやってちょうだい」と言って、私とサーシャの2人は部屋から追い出されてしまった。

「アリア!あんたそういうとこ1年の頃からちっとも変わってないわ!サイアク!」
「文句は出来るようになってから聞くわ」
「言っておくけど、監督生はグレンジャーなんだから監督生気取りしないでよね!」
「うるさいわね!」

廊下で扉越しに勃発してしまった喧嘩をどうどうと諌め、サーシャの背中を押して一旦談話室まで降りる。アリアもアリアで宿題抱えてるから多分泣き言だらけの私たちがウザかったんだろうなと察した。
談話室は珍しく人が少なかった。時間的にハリーもそろそろ罰則から帰ってくる頃かもしれない。消灯近いし、もうとっくに帰ってるかな。とりあえず杖を出して、適当にゴミ箱へ杖先を向けてみる。消えろー!

「んな簡単にいくわきゃねえ」
「ナマエと同列扱いされるのが一番ムカつくわ」
「オーケー聞かなかったことにした」

グリフィンドールの最下位は今年も私が支えるぜ!張り切っていこう!さて、アリアに言われた通りせめて一回やったので私はもうやる気がない。頑張るサーシャを応援しながらボーッとしていると、カタンと音がして男子寮から誰か降りてきた。振り向くと見慣れた赤毛。

「あれ、ロンじゃん。こんばんは」
「うげっ、ナマエかよ……サーシャもいるし…」
「なによ、私たちがいたらダメなわけ?」
「いや、べつに…。でも僕がここを通ったこと、誰にも言うなよ!」

珍しくロンの必死な顔に首を傾げた?なんで?なんか悪いことでもするつもりか?ぼっちで?と思ったものの、ロンも盗んだバイクで走り出す年頃だ。納得した。そしてサーシャは「気になるところだけど今はそれどころじゃないからいいわ」とさっさと練習に戻っていった。こういうとこアリアに似てきたよね。
ロンはサーシャをいぶかしげに見た後、こちらに来て聞こえるか聞こえないくらいかの音量で話し始める。

「ハリー見た?」
「見てない。同じ部屋でしょ?」
「それが、まだ帰ってきてないんだ」
「……魔法薬学の罰則並みに遅いな…」

アンブリッジせんせいどんだけ罰則課題を出しているのか。今年の宿題量からしてこれは死活問題だぞ、今後の身の振り方を考える必要がある。私は真面目にうんうんと考えた。まあ考えたって罰則受けない方法とかわからんけど。
会話中もロンはチラチラと時計を気にしていたが、話が一旦区切られると私を睨むようにして見た。

「絶対、ぜったい秘密だからな」
「うん?なにを?めっちゃ念入りに言うね」
「僕、これから──」

クィディッチの練習しにいくんだ。
ロンが私に耳打ちした。ぱかんと私の口が開く。ホワッツ!?

「なんだっんむぐぐぐ」
「秘密!だからな!ハリーにもハーマイオニーにも言うなよ!他の誰にもだからな!」

マジトーンでロンが言う。私は慌ててこくこくと頷いたけども、いや、あの、マジで?え゛っロンも危険スポーツ出んの!?うわあ……うん……そうか……。なんと卒業した人の募集枠オーディションを受ける気だそうで。とにかく秘密!と繰り返すロン。わかったってば。

「お、おう、応援するよ、頑張って」
「上手くいくかわからないけど、やってみたいと思ったから」
「いい事じゃん。青春だねえ」
「秘密だからな!」
「はいはい」

そうと決まれば練習時間があるでしょ、とロンの背中を押す。そして夢溢れる赤毛ボーイは談話室から出て箒に乗りに行った。
……それはそうと、ロンは宿題終わったのか?終わってたら抜け駆けじゃんゆるせねえ。いやでもロンのことだからな無いな!と思ってたら案の定翌朝談話室でうとうとしながら夢日記を書いていて、ついでにそこにはハリーもいて、そして私も仲間に加わった。人のふりみて我がふりなんちゃら。ははは。夢日記とか夢見てから書くもんでしょ。

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