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数占い学でもめちゃくちゃ宿題出されてシクシク半泣きで薬草学に向かうと、丁度温室の前でハリーたちを見つけた。ヨッ、と声をかける前にハリーの声が聞こえた。

「それから、グラブリー - プランクばあさんのほうがいい先生だなんて、言うな!」
「あれまご機嫌ななめか?」
「ナマエ……」

どしたのよーとハリーと肩を組み頬をつっつくと、ハリーはモゴモゴしてから目をそらした。ハーミーとロンを見ると、2人とも微妙な顔だったが何故か頷かれたので頷き返す。よくわからんアイコンタクト話術。多分どっかで通じあってんだと思われ。

「うわなにその手。血!?」
「え?血……ああ、これは魔法生物飼育学でボウトラックルに引っかかれて」
「うええ痛そう」

ハリーの肩にかかっている私の手に、ハリーの手が重ねられる。そのとき目に入った血の跡とかさぶたにビビった。猫ちゃんに引っかかれたのとは違う強めの傷だ、めっちゃ痛そう。お大事にね。そして折を見てロンが「ハグリッドが魔法生物飼育学にいなかったんだよ」と教えてくれた。先生が変わったんだとか、確かにこの前教員席にいないって騒いでたもんなあと顎をさする。ってかあの人も結構いい歳っぽいよね、定年じゃね?っていうか魔法界に定年退職の概念あんのかな。ダンブルドア先生明らかに年齢ヤバいよな。なんてことをつらつら考えつつハグリッドが恋しいのか黙り込んでしまったハリーの頬をむにむにと揉んでいると、温室のドアが開いて学生が出てきた。なるほど、ハリーのご機嫌待ちじゃなくて授業終わり待ちだったのか。ジニーちゃんの顔を見つけてひらひらと手を振ると、可愛らしく笑って振り返してくれた。うおーファンサだー!今や第二次性徴期真っ只中で花開く可愛さの新生アイドルジニーちゃんの後ろから、綺麗なプラチナブロンドのガールが出てきた。鼻にちょっと泥ついてる。ドジっ子かな?うむ可愛い。そんなドジっ子ガールを見てハーミーが「ルーナ」と小さく言う。知り合いらしい。
ドジっ子ガールはハリーに小走りで近づいてきたから邪魔かなって手を離して少し距離を取ろうとする、と逆に肩にかけていた手を握られて体勢維持をされてしまった。マジかよハリィー。

「あたしは『名前を言ってはいけないあの人』がもどってきたと信じてるよ」

おっとっと。ガールの単刀直入な言葉にハリーの頬が引き攣った。なにせ午前中に色々あったばっかだからどう反応して良いのやら。とりあえず見守っていると、ドジっ子ガールの目が私を見た。

「アンタ、とっても不思議。ヒンジがたくさんくっついてるよ」
「…ヒンジってなに?」
「わかんない。ヒンジはとっても珍しいンだ、アタシも初めて見た」
「マジ?全然見えないんだけど」
「当たり前だよ、ヒンジは目に見えないもン」
「ワァオそれめっちゃ不思議発見」

目に見えないもんが見えてんのか見えてないけど見えてんのか第三の目なのか。概念の話されてる?頭痛くなってきた。しかもドジっ子ガールは突然喋らなくなるから間がしんどい。天使が通った。どうすればいいのよこの空気はよ。少し迷ったが、無難に揺れるイヤリングを指さした。

「アー、そのイヤリング似合ってるよ。人参?」
「ウウン、オレンジの蕪」
「オレンジの蕪。…魔法界の名産とか?」
「知らない」
「さいですか……」

なんというかアレだな、ドジっ子ガールっていうより不思議ガールか。ルーナ・ラブグッドと名乗ってくれた彼女に私も自己紹介してよろしくねと笑う。……いやさっきスルーしちゃったけど、くっついてるってなに?虫?怖くなってきたんだけど寄生虫とかじゃないだろうな。気にしはじめると肌がぞわぞわする。

「アンタはハリーのこと信じるの?」
「そりゃね」
「しわしわ角のスノーカックは?」

しわしわ……角?なんだって?魔法界特有のアレか?アレってなんだ。よくわからずハリーを見ても苦笑され、ハーミーを見るとため息を吐かれ、ロンを見ると首を振られた。……なに、なんなのしわしわ角のうんたらって!?信じるとは!?宗教とかですか!?私今宗教勧誘されてる!?

「え、えーと……私には想像つかないけど」
「けど?」
「あー……い、ると思えば、いるんじゃないスか……」
「いると思えば?いるの?いないの?」
「いやめっちゃ来るじゃん。え、えぇ、ほら、あの、トトロ的な、よくわかんないけど信じる人には見えるみたいな、選ばれし存在にわかる的な都市伝説みたいなアレ」
「そんなの初めて聞いた。フフ、面白いね」

不思議ガールことルーナはくすくすと笑ってよしとしてくれた。ねえわかる?私の今の心拍音ビートすごいよ。なんで初対面の相手に答え方によっては地雷踏みそうな質問されてんの。ふぅーと一息ついてやれやれと出てきた汗を袖で拭おうとすると、上からハリーにハンカチで抑えられた。あ、ありがとう…。15歳に女子力の差を見せつけられた。

「ナマエ、あなた本気で言ってるの?」
「えっ」
「しわしわ角のスノーカックなんていないのよ」
「は?」

なぜ目の前で地雷っぽいやつを踏んだのハーミー!?それを聞いた途端ルーナがギッとビビるくらいハーミーを強く睨み、肩を怒らせて去っていった。ハリーが唯一の味方云々と言ってまた少しご機嫌ななめになる。あ、あー落ち着けってば、とまた頬をむにむにと弄り誤魔化す。しかしハーミー的にはルーナはちょっとイマイチな子らしい。ザ・ク…キィ……なんたらって雑誌どっかで聞いた事ある気がするんだけど思い出せんぞ。証拠も根拠もなにも私からしたら魔法界の全てがそれだからなあなんて余計な口は挟まずに大人しく話を聞いていると、なんと突然ハッフルパフの男子がハリーの味方だ!と宣言して青春のワンシーンを目の前で見てしまった。あ、熱いぜ。しかし熱い展開とは裏腹に温室の空気と生徒たちの視線はちょっと冷たくなった。そこを壊すかのようにスプラウト先生が準備室から入ってくる。先生ナイスタイミング!
そして救世主だと思われたスプラウト先生は一瞬にして堕天使になった。授業はやっぱりふくろう試験の話をされて、ドラゴンの糞から出来たクソ重くて臭い肥料を運ばされて、宿題どっさり出された。抜け殻のようにふらふらと寮に戻るのがやっと。身体より先に精神がやられるカリキュラムしてない?よくないよそういうの。

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