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魔法史で集中力使い切ったかもしれん。黒板の説明を読んだ時点で私はやすらかにそう思った。安らぎの水薬とやら飲んでないけどもう眠れる。なんっっだこの複雑な作り方。黒板と手元を交互に見ながら既に半泣きなんだが。えっほんとに?こんなのが試験に出てくる?っていうか間違えると一生寝たきりになるとかそんな危険な薬を一般学生に作らせんなよな。これはオッケーで馬もどきが危険指定されてるとかほんと意味わかんない魔法界ガバガバファンタジーじゃん。

「あれ?……あれ、こんなこと書いてな……あっ、あーー!これ爆発する!?先生!先生助けて!なんかボコボコいってる!」
「いい加減にしろミョウジ!」
「ちゃんと粉入れました!」
「温度だ馬鹿者!」

スネイプてんてーの怒鳴り声とともに爆発寸前の鍋がバビュンッと消えてほっと胸をなでおろした。あっぶね危うく火傷するとこだった。額に渓谷のある担当教授の顔を見ることが出来ずそっと俯いた。来るぞ。来るぞ、来るぞ来るぞ。今年1発目だぞ。

「まともに文字も読めぬ愚かな猿は森へ帰りたまえ!グリフィンドール5点減点!」
「ギャーごめんなさい!」

やはり来てしまった。個人的ハーミーお叱りRTAと共にグリフィンドール減点RTAも更新した気がする。新学期過去最速減点じゃね?そんでもって教室の誰よりも早く失敗した。まだ制限時間の半分程度なんですよ……これは逆にすごい。失敗する才能ってのもあると思う。ポジティブにいこう。時間が時間のため作り直すことも出来ず、スネイプ先生によって命じられたこのあと1年生の授業使う材料を用意しながら周りを見る。みんな頑張ってるなあ…。今日の授業の初めにスネイプ先生はふくろう試験を最優秀成績じゃないと通さないと言った。うん。オッケー。さらば魔法薬学、今までお世話になりました!!!



まさかの初日から昼飯抜きってこんなことある?1年の材料の準備だけかと思ってたら大鍋洗いまでさせられたんですけど?よほどスネイプ先生のご機嫌ななめポイントを突いてしまったらしい。洗剤のせいでちょっとピリピリする手先を揉みながらえっほえっほと慌てて塔を登った。始業ベルギリギリで教室に滑り込む。と、ハリーたちが軽く手を上げてくれたのでそっちに行くと、なんと天使ハリエルとロンエルがサンドイッチを持ってきてくれていた……神はここにいた……。手をあわせて拝むとロンになにそれ変なポーズって言われて久々に文化の違い。 椅子とクッションの影に隠れてもそもそサンドイッチを食べながらシビレル先生の夢がどーたらという話を聞く。紅茶期待してたんだけど出てこないらしい。授業終わったら即何か飲みに行こう。そう思いながら、言われた通り夢のお告げという本を読む。やべっちょっとパンかすついたかも。
夢に出てくることに意味があるっていうのは知ってる。夢に好きな人が出てくるおまじない的なのと似たような、もしくは延長戦みたいなもんだと思ってるんだけど、やっぱ真面目に占いを信じるってなると意味が変わってくるらしい。よくわからん。ハリーが隣にやってきたので本を横に置いた。私と組んでくれるらしい。優しいさすがハリエル。

「つっても時間あと少しだしやったふりでよくない?」
「そういうと思った。でもホラ」
「ん?……うわ先生こっちめっちゃ見てる…。ハリーったら好かれてんね」
「やめて」
「あっごめんなさい」

いや真顔。スンッて表情変えたからちょっとビビった。茶化すのはよろしくなかったねウンごめんね。さて気を取り直して、と思ったら、ハリーはなんだか神妙な顔をしていた。

「……今から言うことは秘密にして欲しいんだ」
「思春期か?おっけ」
「墓場にいるんだ」

おっと予想と違う方向だったでござる。私もスンッと真顔になった。思春期あるあるのちょっと恥ずかしい夢かと思ったらホラー方向だった。あれこれセクハラか?ごほんごほん。えー話を戻して、なんでもハリーは墓場にいておっさんに捕まったり、殺されかけたり、見つからないように隠れたり、ディゴリー氏が出てきたりする夢をよく見るらしい。う、うわあ……悪夢のオンパレードって感じ……。そりゃカリカリするわけだ、そんなのばっか見てたらストレスがハンパないもん。しかも墓場は毎回同じで、ハリーは前にそこに行ったことがあって、んでそのおっさんも知ってる顔なんだとか。

「え…生き霊……?」
「Ikiryo?それなに?」
「なんつーのかな、人の思念体みたいな…本体は別で生きてて魂だけが飛んでくるみたいなやつ」
「…………近いのかもしれない」
「そのおっさんやべー。絶対お祓いした方がいいって!つってもここ英国だもんな…教会ってそういうのやってくれんのかな……」

エクソシストの枠かも……と言うとハリーが映画で見た!とワクワク顔になった。その場合君ブリッジする側だけども。とりあえず私の知ってる民間知識だけどさ、と部屋に塩を盛ることをおすすめした。オカルト系にも興味持っとくんだったなってちょっと後悔した。なにかあったら塩撒いとけ精神でゴリ押す方法しか教えられないのが残念でならない。効くのかは実際わからないし眉唾かもしれないけど、と前置きしたがハリーはとりあえずやってみると頷いた。
さて、次は私の番らしい。夢……夢ね、えーと最後に見たのは、

──おとうさん、おかあさん。早く迎えに来て。もう嫌。

頭にぐわんと響いた泣き声に、ハッと息を呑んだ。そうだ、今まで忘れてたけど、そんな夢を見た気がする。とても暗くて、埃の匂いがする車の中で、ダッシュボードの上のべこべこになった箱からティッシュをとっては鼻をかんで、痛む頭を抱えて泣いていた。

「……あれ、夢だったっけ?」
「どんな夢?」
「女の子が泣いてる夢で……でも待って記憶がリアルだわ……」

夢だったか現実だったか。顎に手を当てて思い出そうと頑張るけど、一度ごっちゃになるとわからなくなってしまった。どちらにせよ、わざわざ教科書を捲るのも面倒で私たちは見ているふりをしてるだけだからいいんだけど。ハリーが僕もたまに夢と現実が混ざる、と笑った。……いやいやハリーのはどう聞いても夢でしょ、夢じゃなかったらマジでやばいやつじゃんて。気をしっかり!

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