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寮の部屋に入るなり深いため息が出た。それだけハーミーのお説教が怖かったし、正座してゴメンナサイしてるところを新入生に見られコリンに「ワァそれはドゲザの仲間ですか!?」とわくわく顔でパシャッとされ、やっと開放された。と、思いきやだ。私の机の上にドサッと紙の束が乗せられていた。

「なにこれ……新聞?」
「日刊預言者新聞よ」
「ゲッ」

芋ずる式に去年の騒動を思い出した。なにこれなんでこんなに私の机の上にあんの。日付を見ると、7月から8月の終わりまであるらしい。

「私が持ってきたのよ。どうやらナマエはポッター派みたいだから。でもナマエの家はマグルでしょう?だから知らないかもと思って」
「トランクに何を詰め込んでるのかと思えばこんな余計なもの持ってきてバカみたいよね。図書館にアーカイブがあるの、ご存知ない?」
「う、うるさいわね!アリアはどっちの味方よ!」
「私は私の味方。……それで、ナマエのご感想は?」
「えっこれ私読まなきゃいけないの……?」

超嫌なんだけど。2ヶ月分の日刊新聞とか勘弁してよ。わかった明日読むからぁとベッドに寝転がると、サーシャはわざわざこっちに来て一面だけでわかるわ!と言いドンッと渡してくる。マジで……?



とりあえず急かされるまま一面だけの62枚を読むのに3時間かかった。ニュースの類はイッキ読みするもんじゃないってばっちゃが言ってたのに…。結構な頻度で使い回しっぽい同じフレーズが出てくるから読み飛ばした部分は多いものの、ある程度は把握した。はず。自信はない。途中からページだけ変えて明日の朝ごはんのこととか気温のこととか考えてた。まあまとめると、ダンブルドア先生は国際うんたらかんたら連盟とかなんちゃら勲章とかを剥奪されたんだかされてないんだかでハリーと一緒に嘘をついてて『例のあの人』とやらは復活してないらしい。

「……なんだか世の中すごいことになってるもんだね」

疲れた目に腕を乗せてとりあえず感想を言う。それだけ?と2人の声が揃った。うむ。ダンブルドア先生肩書き多すぎな。あと本名クッソ長いんだけど名付けた親は正気か?ゴッホと親戚なのかもしれない。
しかし、どうりでハリーは信じて信じてって言うわけだ。ハリーは嘘をついてない!って主張してるわけね。さて、2人の視線がそろそろ痛い。顔を上げて軽く伸びをした。

「ナマエは『例のあの人』は本当に復活したと思う?」
「ノーコメントで。アリアはどうなん?」
「ポッターの言うことはわからないけれど、ディゴリーが…………いえ、実際どうなのかわからないのよね」

ダンブルドア先生がどうとかハリーがどうとか『例のあの人』がどうとか話している2人を横目に、記事の写真のダンブルドア先生のウインクを見つめた。
次の日起きると2人は既に出たらしくやっべ!!と焦って談話室に降りたら普通にみんないた。サーシャとアリアも誰かと話している様子で、なんだただ早く部屋を出ただけかーと安堵してハリーたちを探すと、掲示板の前で発見したから近づいた。

「おっはy」
「僕が嘘つきで目立ちたがり屋のまぬけかどうか、ラベンダーと楽しくおしゃべりしてたんだろう!?」
「うっわなに朝から喧嘩?元気だねえ」
「ナマエ!」

ハリーがいきなり大声を出したらしく周囲も少しピリッとした。あ、なんでもないですはい朝なんでね、ええちょっと低血圧なのかな?へらっと笑ってハリーの背中をトントン軽く叩いた。ロンとハーミーの挨拶に返して期待の眼差しでハリーを見ると、ハリーは目を少しうろうろさせた後に私を見た。

「……おはよう」
「はいおはよう。朝からカリカリすんなって、あとで牛乳の……いやもう飲まなくてもいいかも……」
「カルシウム信者が一体どうしたっていうんだ?」
「身長差をこれ以上開かれたら私はロンに膝カックンさえ出来ないんだよ」

わざと悲しい顔で言うと、ハリーが少し笑う。また牛乳注いでくれる?って質問に微妙に頷いた。今の話聞いてた?なんで飲もうとする?しかし悲しいことに自ら飲もうとする積極性を私は拒否出来ないのだ…。掲示板の前を通り過ぎる際に、次のホグズミードがいつも通り10月ってのを確認してハリーたちの背中を押した。
寮を出たあたりで、沈黙のハーミーが静かに話し出した。

「ハリー、さっきの話だけど──ちがうわ、私はラベンダーに、ハリーについてのあんたの余計な大口は閉じておけって言ってやったのよ。ねえ、お願いだから私たちにカリカリするのやめてくれないかしら。私もロンもあなたの味方だわ。もちろんナマエも、ねえ?」
「おうともさ!」

同意を求められ、よくわからんが頷くとハリーは小さな声でハーミーに謝った。よし仲直り。そんでハーミーは続けて過去のダンブルドア先生のありがたいお言葉を語り出した。『例のあの人』というワードが出てくるとハリーがちらっと私を見たので、私は軽く両手を上げて少し後ろに下がった。3人の背中を少し距離を保って追う形になりながら大広間へ行く。でもハーミーの声が聞こえなくとも『例のあの人』とやらの話題は共に大広間を目指すあちらこちらのグループからたくさん聞こえてくる。復活がどうのとかデスイーターがどうのとか、新聞でも見たワードがいっぱい。

「まさに、あんな連中と仲良くするよう務めるべきだな」
「なに、友達100人計画?」
「ウワッナマエ!?」

様子を見つつ玄関ホールの列に並ぶ頃にしっかり追いつくと、レイブンクローの制服の群れが前に並んでいた。やせいのれいぶんくろーせいたちがこっちをみている!
彼らを不機嫌に皮肉るハリーの頬を人差し指でぐりぐりしながら、空気を読んでお口チャックした。…………『例のあの人』って、誰だろ……。

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