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「……大丈夫?」

その声でハッとした。……ん?うん?大丈夫?うん、大丈夫。自問自答するように頷いて前を見る。サーシャがいた。ゴトゴトと揺られている感覚と周囲の状況を見るに、ここは……列車、か?吸魂鬼とやらに襲われたときを思い出してちょっと嫌な気分になった。眉をひそめて、すぐに目元を片手で隠す。と、もう片手がくしゃりと音を立てた。見ると、膝の上に雑誌がある。開かれていたページには──

「”シリウス・ブラックは、本当にクロなのか”……」

「本当にふざけた雑誌よね。本気にしちゃダメよ」
「そう思うのならどうして見せたのよ」
「あまりにムカついたものだから、笑い飛ばしたかったの!まさかナマエ、信じるっていうの?」
「へっ私?いや……まあマジだったらすごいよね」

隣にいたらしいアリアが雑誌を下敷きにして大鍋ケーキを置いた。やいのやいのと話している2人を横目に、取り分けられたケーキをもふもふと食べる。にしてもぶっ飛んだ記事だったな。ちらりと流し読みしただけだけど、寝起きのような状態にジャブを入れられた気分。でも実際シリブラは冤罪だってダンブルドア先生もハリーも言ってたしなあ。……マジでリードボーカルだったりして?その説有り得るかも、ウケる。

「ところで、今年の監督生は私ではなかったわけだから──やっぱりグレンジャーよね」
「ふふ、負けたわねアリア」
「それ以上笑ったらあなたのベッドの中にくそ爆弾を詰めるわよ」
「物騒ガールこっちにも飛び火するんでやめて。てか、監督生?」

首を傾げると、アリアがため息を吐いた。疲れたような嫌そうな顔に地雷踏んだか?とちょっと焦る。

「5年生は各寮から男女1人ずつ監督生が選ばれるでしょう。グリフィンドールの女子は私だと思ってたわ」
「あーなるほど、自信満々だったけど落選したんだ」
「モンキーの空っぽの頭にくそ爆弾詰めてやるわ」
「ごめんて物騒ガール!」
「アリアがだめだったってことはハーマイオニーで決まりね。……男子は誰だと思う?」
「ハリー・ポッター。ナマエもそう思うでしょ?」

同意を求められ少し悩んだ。成績優秀者が選ばれるんならどうだろうな。ハリーがめちゃくちゃ成績いいってわけじゃないし、ディーンとかが選ばれちゃったりしてるんじゃないだろうか。

「まあ、どうせスリザリンはマルフォイでしょうけど」
「成績的にはノットだけどね」

まあお貴族様の寄付金の存在はデカいわなあ。ノットくんなら応援したいところだけど、周知の事実たる賄賂には頷くしかない。でもマルフォイくんがスリザリン代表だとな……色々と今年1年は大変そうだな……。そんな予感はしていたけど、今年もホグワーツに1年お世話になることは決定だろうと私もため息を吐いた。



あれ、そういや今城の外じゃね?と気づいたのはホームに降り立ってからだ。初めて見る駅のホームに心がそわそわする。もしかしてこのまま列車に乗り続ければ外へ出て帰れるんじゃないか?まあそんな期待は生徒の山の中では無駄だったけど。
迷子になるわよ、と優しいサーシャにずるずると手を引かれて、少しぬかついた道路に立つ。馬車がたくさんあり、しかしその気持ち悪い馬におげえと嫌な顔になった。サーシャの荷物を積むのを手伝いながら見ると、馬もどきと目が合った。……なんっっだあの生き物!魔法界やっぱ怖ェ!ビビって少し後ずさると、後ろから片腕を引っぱられた。

「エッッ」


「ナマエ、この馬車なら空いて──あれ、ナマエ?」
「どうしたのサーシャ、早く乗りなさい」
「ナマエがいなくなっちゃった」
「どうせポッターが連れて行ったんじゃないの? 」
「そうかしら?……なら行きましょうか」

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