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ムーディ教授への不信感と疑いのようなものが膨れ上がっていたが、一旦忘れて試験に集中することにした。
ムーディ教授が私に粘着まがいのことしてくるのはなんでだろうってずっと思ってたけど、この謎が解けたらなんとなくわかる気がする。ありきたりなミステリーものだとムーディ教授が犯人ってなるけど、実際はそう単純じゃないと思うし、何よりムーディ教授が祖母を失踪させた犯人だったら私にここまで執拗に見つけろと言ってこないと思うんだよなあ。
脳の小さい私が考えても答えは出ないけど、考えてしまう。今は多分墓穴掘るなと思ったのもあり、ハリーたちがウィーズリー家と楽しそうにテーブルを囲んでいたのもあり、夕飯もサーシャたちの席へお邪魔して同室者組で食べた。

「紳士、淑女の皆さん!」

デザートも食べ終わりお腹いっぱいとお腹を撫でていると、ダンブルドア先生が壇上へ上がる。そうだ。これから第3の課題なんだった。ダンブルドア先生の話を聞きつつハリーの方を見ると、たまたまこちらを見ていたようでパチッと翡翠色と目が合った。緊張気味の硬い表情が少し解れて、小さな笑みを浮かべる。うんうんと頷いて私も笑い返した。手を振ってエールを贈る。マジで、無事に帰ってこれればそれでいいんだからな、マジで。

いつもなら危険スポーツのフィールドなそこは、見事に変わっていた。壁があって石があって木と草がモッサモサしている。そして見事に迷路が形成されていて、思わず「すっげー!!」と声を上げてしまった。超テーマパークじゃん!いつもはソークールガールなアリアも今日ばかりは少しはしゃいでいるようだった。
課題は順位順に迷路へ入っていくらしく、ホグワーツは首位だから一番最初だった。ホイッスルが鳴り、ハリーとディゴリー氏の姿が迷路の中へ消えていく。

「……ぜんっぜん見えねえ」
「暗くてよく見えないわ」
「えっオペラグラス?ガチじゃん」

アリアがサッと懐から出したアンティーク調のオペラグラスにはびっくりしたけど、暗くてよく見えないのなら意味が無いとアリアはそれをすぐにしまった。夜は少し肌寒くて、毛布くらい持ってくればよかったねーなんて話してサーシャが持ち込んだお菓子をつまむ。すっごいゆるい空気になってる。
ハリーは練習した魔法ちゃんと使えてるかなーと見えないながらも迷路を見つめていると、ふいに突然花火のようなものが上がった。

「信号弾だわ」
「えっ」
「何かあったのかしら」

ハリーか!?ハリーなのか!?慌てて目をこらすけど、やっぱり見えない。ハラハラする……。胸元をぎゅっと握って、ざわつく周りに紛れた。大丈夫かな、何に襲われるかわからないってバチクソ危険だし……そもそも年上の中一人だけってのも分が悪いよなやっぱり!?大丈夫なのか!?ああ不安だ。
少ししてから、また信号弾が上がる。ウッソだろ2人目?やばいってこれ。大丈夫なやつなの?ダメなんじゃねーの?待つしか出来ないの本当に歯がゆいな……!

「でも魔法たくさん練習したんでしょう?それにハリーはあのハリー・ポッターなんだから、大丈夫よ」
「あのってなに!?どの!?ハリーは世界でオンリーワンだけども!?」
「うるさいわね、ここはホグワーツなんだからそんな危険なことは────ダンブルドア?」

アリアからオペラグラスを借りてしばらく覗いていたサーシャが、変ね、と首を傾げた。えっちょっなに。見て、と渡されたオペラグラスを覗く。どこ?どこにいんの?わからずきょろきょろしていると、首を手を回されそちらの方向にグギッと向けさせられた。も、もちっと丁寧にお願いしますサーシャちゃん……。
しかし、オペラグラスの中には確かにダンブルドア先生の姿が、いや、ダンブルドア先生だけじゃない。他の先生も、みんな急いで迷路の中へ入っていく。

「……どういうこと?なんでダンブルドア先生が」
「信号弾がよほど危険事態だと?でも周囲を警備の魔法使いが常に巡回しているはずだわ」
「あくまで生徒が太刀打ち出来るような罠で構成されてないってこと?」
「そんなわけないでしょう、古代時代じゃないのよ」

アリアが首を振る。確かにその通りだ。いや古代はしてたんかい。
ということは、ダンブルドア先生が出てくるような事態が、中で起こっている?……ハリーは今まで、たくさん危険な目にあってきた。やっぱり今回も、ということか?そもそも最初に勝手に選手登録されてしまった時点で巻き込まれてるし。あまりに警戒が足りていなかったのかも。そんなこと今更気づいたって後の祭りだ。嫌な予感が身を包む。まあ、とりあえず様子を見るしかないわね。冷静なアリアの言葉はその通りだった。


そうして待つこと数刻、星は煌めき、未だ会場は混乱状態にあった。私を含め生徒たちは状況をよくわかっていないし、迷路の中はよく見えないし、誰も大人は説明してくれない。ハラハラしてこの数時間で私の心拍数が上がりっぱなしだよ。bpm120くらい。ずっと走り回ってたんか?ってくらいだ。ごめんちょっと盛ったかも。
なるべく10分くらいの間隔でオペラグラス越しに見回すようにしていたけどなかなか変化は見られなかった。
が、サーシャが持ってきたお菓子が底をついた頃、ついにそのときはやってきた。

「────ハリー?」

思わず身を乗り出した。もはやオペラグラスも必要ないほどの距離、肉眼で見える迷路の入口に、ハリーとディゴリー氏が倒れていた。暗くて状態はよく見えないが、確かに、倒れている。
待て、待ってくれ。嘘だろ、どうなってんだ。ナマエ、という静止の声は聞こえていたが止まれなかった。第2の課題のときのように、人並みを掻き分けて転がり落ちるように下へ向かう。近づくにつれて場所が鮮明に見えてくる。倒れているハリーたちの周りを教師陣が囲んでいるようだった。

「優勝杯は奥じゃないの?」
「傷だらけ…」
「ねえ、なんか、変じゃない」

ざわめく生徒たちの話し声に、嫌な予感がバシバシ大きくなる。ディゴリー!と名を呼ぶ誰かの悲鳴。どうしてそんな悲痛な声が上がってるの。なんで泣き声が聞こえるの。何が、あったんだ。

「ハリー!」

芝生の上に落ちかけたとき、ドンッと何かにぶつかってスタンドの中に戻された。また近づくと同様に、周りの生徒も同じようだった。透明な壁が張られている。多分警護のためだと思うけど、当たり前のセキュリティがすごく邪魔に思えた。
ムーディ教授がハリーを抱えている。朦朧としている様子で、体は傷だらけだった。

「ハリー!ハリー!」

私だけじゃない、皆が声をかける。泣いてる子もいる。連れていかれるハリーの姿に震えが止まらず膝をついた。

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