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「小鬼の反逆者って誰がいた?」
「ガスラーク、コボルト、ジャレス、カイレン、フィルボル──あともう2人……あれ私なんて書いたっけ……」
「シヴとゴヤ=カバルス」
「僕ボブとジャクソンって書いた」
「掠ってもねえ」

HAHAHAと廊下に空笑いが響く。シェーマスに肩を組まれて、お互いの背中をバンバン叩きあった。ディーンはなにやらヤマを張っていたらしいが惨敗したようで超落ち込んでいる。よかったーヤマの誘惑に負けず全範囲見といてよかったー!その分記憶は薄まった気がするが仕方がない。まだ午後あるっちゅーねん落ち込んでられるか。
大広間へ入り近くの席へ座る。魔法史の答え合わせがそこらじゅうから聞こえてきてうげえっとロンと顔を歪ませた。しかし、私越しにどこかを見てパッと顔色を変える。

「ママ、ビル!」

ロンが立ち上がった。私は座ったまま振り向くと、ハリーがいて、そして赤毛のおばさんとイケメンがいた。色的にロンの家族だろう。

「どうしたの?」
「ハリーの最後の競技を見に来たのよ。お料理をしなくていいのは、たまにはいいものね。──そちらは?」
「初めまして、ナマエ・ミョウジと言います。イースターのときはチョコレートエッグ、ありがとうございました」
「……あなたが、そう……いいのよ、気にしないで」

立ち上がりにこりと挨拶をすると、私の名前を聞いた途端ロンママの表情がにこやかで無くなった。う、噂信じてるタイプゥ。

「……ナマエ」
「よかったね、ハリー」

様子を見るに、ハリーはロンのご家族に信頼を置いているらしい。例の家族じゃなくて良かったよマジで、もし来てたら私が怒りのハリー絶対守るモンキーになってた。
そして私がハリーと言葉を交わすとロンママがハリーを守るように私とハリーの間に入った。大事にされてんのな、ハリー。そういう大人を目の前にしてホッとした。そんでもってロンママの気持ちも分かる、息子の周りで熾烈な四角関係だったら嫌だもんな……超誤解ではあるんだけど、初めましてで払拭するのは難しいだろ。まだ料理をよそっていなかったのが幸いだ。私は苦笑して荷物を取り椅子から退く。

「おい、ナマエ、別にここにいても──」
「家族揃ってるんだし、ゆっくりしなよ。私はここで。失礼します、ウィーズリーさん」

赤毛を見てやってきたジニーちゃんや双子からも声をかけられたが、ひらひらと片手を振って挨拶にして、私はその席を離れた。少し奥へ行き、空いている場所を探す。と、さらに奥から「ナマエー!」と声が。そちらを見ると、サーシャが手を振っていた。近づくと席を空けてくれる。やっさしー。

「見てたわよ、ウィーズリーママこっわあい」
「多くの主婦はあんな態度でしょうね」
「今日一般開放されてなくてよかったわマジで」

もしされてたら針の筵でしたね。クリームペンネをよそい、いつもの炭酸水に口をつける。サーシャは頬に羽根ペンの羽の痕がついていた。こいつ……魔法史の試験中寝よったな……?

「そういえばこの前の手紙の人も来てたりして」
「すごい啓蒙っぷりだったわね」
「同室者のプライバシーよ」
「でも確かにミョウジ先生は優秀な先生だったらしいわ。私は知らなくって、ママに聞いたの。そうしたら、ミョウジ先生って七不思議があるらしくって」

ゴフッと噴きかけて中途半端に咳き込む。喉痛え。汚いわと言いつつ背中を摩ってくれるアリア、見事なツンデレです。ありがとう。
っていうかサーシャはどうしてそうやって突然ぶっ込んでくるの。出たよサーシャママ、去年も噂話活躍だったサーシャママだよ。わざわざ聞いてくれたの?それはありがとう。落ち着くため、ペンネをちまちまチーズに絡めながら食べる。アリアが不思議そうに言った。

「七不思議?」
「そう、ホグワーツの部屋のどこかにまだミョウジ先生がいるらしいのよ!」
「……はっ?なにそれこわい」

いるってどういうことやねん。死んだんじゃないの?

「だってミョウジ先生の遺体見つかってないんですって」
「……行方不明ってこと?」
「孫の前で嬉嬉として話すなんてどうかと思うけど」
「いや言うの遅くない?」

そこじゃないんだよアリアさん。別にいいんすけど、孫って実感無いし。遺体が行方不明って不穏だな、単純に失踪したってことだろう。

「でもなんで失踪事件がホグワーツの七不思議?」
「ナマエ、孫なのに知らないの?」
「……聞いたことないからね」
「まあ、赤ちゃんの頃にご両親とも亡くなったのならそうよね」
「アリア容赦ねえな」
「それで、なんでかっていうと──ミョウジ先生はホグワーツで失踪したからよ!」

ブホッッ。今度こそしっかり噴いた。口の中に何も入っていなかったのが幸い。鼻の奥がめちゃくちゃ痛え。咳き込むとやっぱり背中摩ってくれるアリア優しい、その優しさが染みる。
えーと、ホグワーツ七不思議って確か前に聞いた──ハッフルパフの寮、アニメーガスの話、レイブンクローのアクセサリー?だっけ、それから叫びの屋敷の叫び声、ふくろう小屋の悲鳴……は風って言ってたな、そんで1人が2人に分裂するんだかのよくわからんやつ、と。

「──『消えた亡霊の嘆き』?」
「そう、それ!」

ピンッとサーシャの人差し指が上がった。そのままクルクル回る。目をつられつつ、ふうん、そうか、そうなのかと呟いた。相槌三段活用。
ホグワーツの霊が消えるとは変だと思っていたけど、遺体なら納得がいく。ホグワーツは広いから、それこそ森の中という可能性もあるし。気分いい話ではないけど、過去に学校で死人が出ているというのは有名らしいから多少あり得るとも思う。最近の祖母関連の話はそうして繋がって──。

『貴様に必要なものだ、貴様は過去を知りたくは無いのか!』

『ミセスミョウジは貴様を待っている……救いたいとは思わんのか!孫のくせに』

口の中から味が消えた。咀嚼が止まる。ざわりと鳥肌が立った。
祖母が、私を待っている。どこにいる?失踪した遺体はどこにある? ────必要の、部屋に?
じゃあ、どうしてそれをムーディ教授が知っている。

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