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昨日はちょいハプニングがあったが、気を取り直して、今日は第3の課題の日だからと朝からハリーの前にドンッとフライドチキンを置いた。

「……これは?」
「日本じゃカツを食べるんだけど、こっちにはないっぽいから似たようなものを。カツを食べて勝つ、験担ぎだよ」
「ジャパニーズ意味わからない。ハリーやめとけ、吐くぞ」
「なにおう」

ロンと軽く睨み合うが、ハリーはフライドチキンを1つだけ取り、隣のテーブルに置いた。あ、はい。食べ始めてから少しして、いつものようにバサバサとふくろうたちがくる。受け取った手紙の一通を見て、ハリーが嬉しそうに頬を緩めており、よくわからないが心が暖かくなった。てえてえ。しかしその尊さはハーミーがかぼちゃジュースを噴いたことによって消えた。どうしたどうした。見ると、その手には新聞があった。

「どうしたの?」
「リータ・スキーター?」
「またかよ」

隠そうとするハーミーより先に私がいつもの名前を上げてしまった。ロンがため息を吐きながら、ハーミーの手から新聞を取り上げ目を通す。私も隣を覗き込む。”ハリー・ポッターの危険な奇行”から始まる文章に、は?と声が出た。顔を上げたロンと目が合い、ロンはすぐに新聞を畳んだ。

「……僕のこと?」
「ううん」「いいや」「いいえ」

続け様に否定した。ついでにロンの手から新聞を奪ってめちゃめちゃに破る。流石のハーミーも何も言わなかった。あとでお金返します。第3の課題の前だぞ、これでハリーのコンディションが乱れて危険な目にあったらどうしてくれる。怒りに震えながらもぐっと飲み込んで自らカルシウムを摂取した私だが、ハリーにゴブレットを出され注ごうとした牛乳を少しこぼしてしまったことでハリーはため息を吐いた。多分バレてる。そして最悪なことに、スリザリンの連中が遠い島からからかってきてしまったものだから、ハリーは近くにいた生徒から新聞を借りて読んでしまった。あ、あー……。やっべと思ったが、ハリーは読み終わってから苦笑するだけで。怒ってないことを確認したロンが口を開いた。

「……あの女、どうして占い学のこと知っていたのかなあ?あそこにはいたはずないし」
「窓が開いてた」
「ああ、私もハリーが倒れてから全開にしたな、そういや」
「北塔のてっぺんよ?ありえないわ!」

箒で外にいたとか……ホグズミードの日ならまだしも、平日の授業中にそんな姿は絶対誰かしらが見て噂になってるはずだもんなあ。かといって廊下では誰とも会ってない。ハーミーの強い否定に、ハリーは嫌そうに「魔法で盗聴する方法を教えてくれよ!」と言い、それに対してハーミーはずっと調べてるわ!と言い返す。喧嘩すんなって〜と間に入ると、ハーミーは自分の髪を触ってぼんやりとする。ロンが声をかけるとハッとして、それからぶつぶつと喋りだした。

「ハ、ハーミー……?」
「そうよ、そうだわ、ナマエも言っていたもの──私、確かめるわ!」
「えっちょっ」

ハーミーはイノシシが如く図書館へ駆けていく。それを呆然と見送った。魔法史の試験もうすぐだけど……間に合うか……?頬をかいて、とりあえずフライドチキンを頬張るとマクゴナガル先生が机に来た。朝食後に選手は来いという先生に、いよいよ本番だって空気を実感する。私が出るわけじゃないけど緊張するよね、最後ならなおさら。ハリーは時間には早すぎると慌てていたけど準備とはそういうものだ。家族が来てるんだとかで、しかしハリーはあまり嬉しくなさそうにスクランブルエッグを混ぜる。さっき下に落ちてんだよね……そっとナプキンを渡すと少し恥ずかしそうにしていて全私が許した。

ロンに急かされて、ハリーを1人置いて魔法史の教室に向かう。口の中に残っているフライドチキンを咀嚼しながら歩いていると、ロンが少し後ろを振り返り「ハリー大丈夫かなあ」と呟いた。

「無事ならそれでいいよ」
「なんでそう軽く言えるんだよ。……まあ、そうだけど……それよりも家族だよ、かぞく」
「家族?ああ、来てるっていう。ダーズリーさん、だっけ?」
「そいつら最悪なんだよ」

友達の家族を最悪呼ばわりには抵抗があるが……と思っていたが、ロンから聞いたハリーの今までの境遇に私は廊下で盛大に「はあああ!?」と言ってしまった。

「なんっ……閉じ込め……ッ!?ええ…ハリーすごい環境で…苦労して……ううっ……」
「泣くなよ、ママみたいだな…。でも来るとは思えないんだよなあ、そのマグルたち」
「魔法嫌いなら、確かにね。他に近しい人とか?」
「まさか、スナッフルズ……!?」
「スナッフルズって誰?」
「えっ、あ、えーと……犬」
「犬」

いぬ?????

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