Better Bitter2

「青峰っち!」
登校してすぐに青峰を見かけると、黄瀬は真っ先に声を掛けた。
あくびをした後だったのか、眠そうに怠そうにこちらを振り向く青峰の視線にドキリとする。

「・・・んだよ」
「は、話があるっス・・・」
自分で切り出しておきながら、今になって緊張で強張る体が恨めしい。

「・・・き、昨日のこと・・・返事――」
「待て」
意を決して言おうとしたら、青峰がそれを静止した。
「場所、変えるぞ」



屋上へ移動すると、朝ということもあってかそこには誰もいないようだった。
「で。早く返事聞かせろ」
「ふえっ!?」
急に振られて驚かないはずがない。思わず間抜けな声を出してしまった。

「え・・・とー、スね。その・・・」
完全に出鼻を挫かれてしまい、困ったように黄瀬は視線を泳がす。

「あー・・・今日はいい天気っスね。ははは・・・」
「だから?」
「えと・・・」

(やばい・・・どうしたらいいか分からない)

好きだ、と言えばいいだけの話なのに。
喉のすぐそこまで言いたいことがせり上がってきているのに。

「・・・黄瀬」
俯く黄瀬に青峰が手を伸ばす。
それに気付いて、黄瀬はビクリと肩を震わす。

ぎゅっ、と目を瞑ると頭をぽんぽんと撫でられた。

「あ・・・青峰っち?」
「悪かったな」

――え?
青峰の表情に黄瀬の血の気が引いた。

「なんつーか、その・・・やっぱイヤだったんだろ」
「ちがっ!?ちがうっス!!」
頭を振って全力で否定すると、青峰が目を丸くする。

「ちげーの?」
「は、はいっス・・・嫌とかそーゆーんじゃないんス・・・その・・・」

言葉に詰まって、黄瀬は再び俯いた。
そんなじれったい黄瀬の態度にとうとう青峰がブチ切れた。

「あー!ウッゼェな!!言うなら早く言えっつの!!」
「う・・・」
「オレのこと好き嫌いどっちだ!?」
「好きっス!!」

・・・・あ。

(言ってしまった―――)

つい流れで答えてしまった・・・
言ったあとで口を塞いでももう言葉は戻ってこない。

そっと様子を窺うと、青峰がふっと笑顔を向けてきた。
その笑顔に胸のドキドキが止まらない。
黙ったまま見つめていたら、そのまま抱き締められた。

「あ、青峰っち・・・」
「お前のそーゆー顔、反則」
「青峰っちこそ、色々反則っス」
「なにが?」
「わかんないっス」
「なんだよそれ」
「・・・でもあえていうなら」

青峰の背にまわした黄瀬の手が服をぎゅっと掴んでしがみつく。

「オレに優しいところっス」
「は?どのへんが?」
ムードを壊す青峰の発言に思わず黄瀬はずっこけそうになった。

「オレが優しい言ってんスから話合わせてくださいっスよ!」
「いや、だってあんまお前に優しくした覚えないし・・・」
「なんなんスかもぉ〜」

せっかくいい雰囲気だったのに冷めてしまったではないか。

体を離すと目が合った。
途端になんだか恥ずかしくなってしまう。

「と、とりあえず戻るっス。授業間に合わな――」
歩き出そうとした黄瀬の手が掴まれる。
そして振り向くと同時に唇が塞がれた。

突然のことに思考が停止する。
唇が離れたかと思ったら、もう一度確かめるようにキスされた。

「もうこのまま授業サボろうぜ」
「や・・・あの、でも」

両手を取って、青峰が覗き込んでくる。
黄瀬が顔を真っ赤にして目を逸らすと再び青峰が問う。

「オレのこと好き?嫌い?」
「・・・好きっス」
「じゃあ決まりだな」

そう言って落とされたキスはとても優しかった。




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