CAT LOVERS!!side green.

うちの真ちゃんはとても可愛い。
ツンデレという言葉がぴったりで、本当にもう初めて見た時は死ぬかと思った。

「え・・・、真ちゃん・・・――え?」
目の前で顔を真っ赤にして俯く真ちゃんを指差して、オレは口をぱくぱくさせた。
だって今、目の前にいる真ちゃんはオレの知ってる真ちゃんなのにその頭には・・・
「ね・・・こ・・・?」
そう。真ちゃんの頭には髪と同じ色をした緑色の猫耳があったのだ。

真ちゃんとオレは幼馴染だった。
会えるのは年に1、2度くらいだったけど、思えば真ちゃんはいつも帽子をかぶっていた。
『なんで真ちゃんはいつも帽子かぶってんの?』
『ラッキーアイテムなのだよ』
ならしょうがないっか、と軽く流していたものの。
よくよく考えてみたらおかしいだろ!

「なに間抜けな顔をしているのだよ」
ふんっと鼻を鳴らして、真ちゃんは眼鏡を押し上げた。
その頬はまだほんのり赤かった。
きっと、今まで散々隠し通してきた猫耳がバレてしまって恥ずかしいのだろう。
「真ちゃん、猫耳可愛いよ。触らせて」
にこっと笑い掛けて近寄ると、真ちゃんは警戒して後ろへ引き下がった。
「断るのだよ」
「なんだよー。ケチ」
ぶーっと唇を尖らせて、空中で止まった手を引っ込める。


そもそもどうしてこういう状況になったかというと――
今日は真ちゃんと遊ぶ約束をしたのだ。
『なあ真ちゃん。たまには屋外ばかりじゃなくて、家でも遊ぼうぜ?』
公園を歩きながら、隣でおしるこを啜る真ちゃんの顔を覗き込む。
真ちゃんは睫毛が長くてすごく綺麗な顔立ちをしているのに、いつも帽子をかぶっているからもったいない。
帽子の影のせいで顔がよく見えない。
一度でいいから、真ちゃんの顔を帽子の影のない明るいところで見てみたかった。
『今日さ。うちの家族、皆出掛けてていねーし。いいじゃん、オレんちで遊ぼうぜ』
真ちゃんは苦い表情をしてオレを見たが、やがて溜息を吐くと首を縦に振った。
『・・・全く。そこまで言うなら仕方ないのだよ』
『やったー』
そうして真ちゃんの手を引いて、うちへ上がり込んだ。
『ちょ、どうして手を繋ぐ必要があるのだよ!』
『いいじゃんいいじゃん♪』
オレの部屋へ上がると、真ちゃんは落ち着かない様子で辺りをきょろきょろ見渡していた。
『なに?』
『いや・・・』
真ちゃんは用心深そうに頭にかぶる帽子を手で押さえつけて、さらに深くかぶった。
その態度にムッとする。
『なあ』
詰め寄ると真ちゃんは驚いた顔をした。
『なんなのだよ?』
『部屋の中なんだから帽子とれよ』
ばっと手を伸ばして帽子を掴む。
真ちゃんはものすごく背が高いから、オレは少し飛び跳ねた。
咄嗟に真ちゃんがさらに帽子をおさえて阻止した。
『なっ!ば、やめるのだよ・・・高尾――』
どちらも譲らず、揉め合っているうちにバランスを崩して床に倒れ込んだ。
その拍子に帽子が落ちた。
そして現れた真ちゃんの姿に、オレは目を奪われたのである。


「真ちゃん、実は猫だったかんじ?」
「・・・・・・」
「なーあ真ちゃ〜ん?」
あえて猫耳の近くに唇を寄せて声を吹き込んでやると、真ちゃんはビクッと肩を跳ねさせて腕を突っ張った。
「っ、やめるのだよ」
あれ?これはもしかして・・・?
「もしかして、耳が性感帯ってやつ?」
だとしたら。
いいことを思いついてしまった。
そのまま身を乗り出して、油断していた真ちゃんを押し倒す。
何がなんだか分からないといった顔をして、真ちゃんは目を丸くしていた。
仰向けになった真ちゃんの腰の上に跨って、素早く眼鏡を取り上げるとその辺に置いて両の手首をそれぞれ握って身動きが取れなくさせる。
眼鏡がなくなったせいで、視界が悪くなったからか、真ちゃんの目が鋭く睨み付けてきた。
初めて見る、真ちゃんのありのままの顔。
「・・・すげぇ美人じゃん」
胸の奥に沸々したものが湧き起こってくる。
「真ちゃん・・・」
気が付くと、吸い寄せられるようにして真ちゃんにキスしていた。
唇同士がふにゅっとぶつかって重なる。
「!?」
びっくりした真ちゃんが体を捩らせたせいで、口付けが解けてしまった。
「・・・なにをするのだよ」
悔しそうに睨んでくる瞳が潤んでいる。

ああ。なんだろ、この気持ち。
なんだかあったかくてどろどろしていて、どすっと重い。
変なの。なにこれ。

黙って真ちゃんを見下ろす。
真珠に一滴だけ緑を落としたように美しい目。
そこに映るオレの顔はやけに真剣な顔をしていた。
真ちゃんが怯えた様子でオレを見る。
すごく綺麗な顔で。
頭の猫耳を揺らして。

「真ちゃん・・・」

そっと顔を近付けて、鼻先がぶつかりそうな距離で見詰め合う。
今わかった。
オレは真ちゃんが・・・――

「好き」

耳元で囁いて、ぴくぴく跳ねた耳に逃がさないよう甘い言葉を吹き掛ける。
「真ちゃんをオレだけのものにしたい」
猫である真ちゃんをいつかの未来に飼い慣らすことができたら。
それはきっとすごく幸せな未来に違いない。


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