風邪っぴき

「なんだぁー、天下のブレイドナイト様は風邪でダウンか?情けない情けない…」
「うるさいな。誰でも風邪の一つや二つひくだろ。」
「じゃぁなんとかは風邪ひかないっていわれるのは嘘か?」
「ソード…お前遠まわしにバカにしてるだろ」
俺の相方が風邪をひいた。普段健康そのものだから、こんな一面もあるんだと何だか感心してしまった。もちろんちゃんと心配している。だが、口から出るのはどうしてか彼女を元気付けるような言葉ではない。
俺にからかわれてますます顔を真っ赤にした相方は、布団の中に潜ってしまった。相当嫌だったらしい。と、思ったのだが。
「ソード、」
「あ?」
「その、今日は別の部屋で寝てくれ。」
「…は?」
布団の中から彼女はそう言った。俺は暫くその言葉が理解できなかった。理由は今まで言われたことのないセリフを言われたのと、一番そういうことを言われたくない人間に言われたのと。そういえば何年もずっと一緒の部屋で寝ていたし、野宿とかそういう場面でも隣には必ず彼女がいるという状況が数年の間一日も欠かさず続いていた訳で、彼女のいない夜というのが想像できなかった。もちろん一緒に寝るとはやましい意味ではなく、同士として、同じ相手に使える身として大抵同じ部屋に布団を並べる状況にあるということだ。だから突然こう言われると正直どうしていいのか分からなくなる。嫌われてしまった…とかだろうか。
「いや、何でそういうこと言うんだよ」
「ソードに移るかもしれないだろ?」
「それは構わないし、去年とか一昨年とかだって同じ部屋だったじゃん。どうしたんだよ」
「…それは、」

彼女はそこで言葉を濁した。嫌われてはないらしいことは分かったのだが、その言葉の先が気になる。それから布団をさらに深く被って、こう呟いた。
「私がソードに移すのは…その、嫌だ。」
「…え?」
それは思ってもみなかった答えで、思わず聞き返してしまった。
「私のせいでソードが風邪ひいたとか、私が原因でソードが苦しむようなことは…私が嫌なんだ。だから…」
彼女の声はだんだんと小さくなり、恥ずかしそうに萎んでしまったが、俺にはちゃんと届いた。しばらくの間まともな考えができずに、思考が止まってしまったような気分になった。…これは俺への気遣いってことだよな。もしかしたらソレ以上の意味があるかもしれないとか…考えてもいいんだよな?
「わ、分かった。今日はジョーの部屋にでも行って寝かしてもらうことにすんから」
「うん、…そうするといい。」
「そのかわりにだな、その間にちゃんと風邪治せよ」
不覚にもにやけてしまった俺の顔が、布団を被った彼女から見えないのは幸いだった。




end.
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
危険(!?)なことに一緒の部屋で寝起きしてる設定なので。
ソードはこれから一日中ニヤニヤしてるといい!

2009.2.8


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