この手のひらから心まで

ある朝のこと。雀のさえずりが遠くで聞こえ、眩しさに顔が歪む。ゆっくりと目を開けると朝日が差し込んでいた。あれ、昨日は俺がカーテンを閉めなかったか?と疑問に思った。
体を起こそうとすると、寝相が悪かったのか首が痛い。ようやく体を起こし時計を見ると、なんと正午を回っているじゃないか。ここまで寝坊したのは久しぶりだ。
「何だポピーのやつ…こんな時間まで、」
起こしもしないで。
枕の隣に置かれた赤いニット帽が視界に入ると、セリフの続きは口から出てこなかった。手作りであろうその帽子にはてっぺんにぼんぼんが付いており、側にあるメモには「お世話になりました」と記されている。それですべてを思い出した。
ああそうだ、彼女はもうこの城に居ないのだった。

カーテンが開いていたのは毎晩彼女が閉めていたから。
『カーテンを閉める閉めないで室内温度は結構違うんですよ。周りに家なんてありませんが、きちんと閉めて下さいね』
首が痛いのは寝心地のよかった彼女の枕を(半ば強引に)借りていたから。
『…じゃぁ二週間だけですよ?大王さま、今度こそ借りパクはなしですからね』
寝坊したのも、彼女が毎朝起こしてくれていたから。
『大王さまーっ起きて下さいよーっ!』
『んん…うるさいな…あと五分…』
『寝ぼけないで下さいっもう十時ですよ!』
『…うーん…、え、マジで?』
『本当ですってば!ほら、着替え置いておきますから、ちゃんと着替えて下さいね』
『全く何でもっと早く起こさないんだ!』
『起こしましたよ。でも起きない大王さまが悪いんですからね!ほら、早く着替えて!』

「なんだ…俺様としたことが、」
自分で自分の情けなさに涙が出そうだった。昨日別れるときは、あいつがいなくても平気だと思った。自分だけで大丈夫だと思った。なのに、全然駄目じゃないか。朝起きることから1人でできないとは。

(ああ、体が言うことを聞いてくれない)




end.
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
デデ→ポピでした!

補足設定:ポピーは何らかの理由でデデデを離れ、カービィの元へ行ってしまいます。(こ、これじゃデデ→ポピ←カビじゃないか!)
デデデはツンデデ推奨。

Thanks!…title、ひよこ屋>この手のひらから心まで(一部改変)



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