ぼくらのものさし1

時折未だに夢に見る。
あのときの夕日の鮮やかさも海の色も、頬を切る風の感触も鮮明に何度も再現されているのが皮肉なものだ。




『ねえ本当にこっちでいいの?』
『ああ、あたしがいいって言ったらいいんだ。ちゃんとハンドル握ってな!』
『でも…このままだと僕たち海にまっしぐらだよおおお!』
『いいから!メタナイトに追い付かれてみじん切りにされるより海に落ちた方が助かる確率高いでしょ?!』
『うん…じゃあウィリーなんとかしてよねっ!』
『あったりまえよ!今後ろから爆風が来るから上手に風にのりな!巻き込まれるんじゃないよ!』

ふとあのとき風に流れて耳にした会話も。
あらゆる力を尽くし必死で追いかけたにもかかわらず、奴は部下の罠をも掻い潜り華麗に我らが自慢の戦艦から脱出した。
ウィリーとかいう自慢のバイクにまたがり、鮮やかな橙の海に向かって船尾から飛んだと思えば姿は見えなくなっていった。
『待て!』
私も後を追おうと大きくしたが、奴までの最短距離をとろうと戦艦の左翼のすぐ隣を横切ろうとしたのが間違いであった。翼をたたみ落下の体勢に入ろうとした刹那、爆風がすぐ隣で聞こえ、左翼の一部が爆風でとび右肩に大きくぶつかった。その衝撃で仮面が外れたが、手をのばすも甲斐なくオレンジの海の方向へ飲み込まれていった。
そこからは痛みに気をとられてしまい、落下を止めようと翼を広げ陸地を目指すのに精一杯で、奴の姿をみたのは近くの崖に向かいバイクにしがみついて中を舞っている姿だった。私の肩の骨がくだけてしまっていたのに気がついたのは数刻後の話である。
肩に力が入らず自慢の漆黒の翼が言うことをきかず、完全にバランスを崩し仮面の後を追い海へと吸い込まれるに至る。
「のがさんぞ…カービィ、」と呟いたのを最後に美しい夕日に見守られながら私は意識をなくしていったのだ。


***


ここでいつも目が覚めるのだ。




・・・・・・・・・・
続きます


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