そらす瞳に

「ポピー」
「な、何でしょうっ」
「お茶入れてきてくれ」
「はいっ」

そう返事をした途端、彼女は俺様に目も合わせずスタスタと部屋を出て行ってしまった。
最近、というか俺様が求婚した日からポピーは様子がおかしい。具体的には小言が少なくなって、俺様に話しかけてくる回数も減って、全体的に挙動不審で。
めでたく恋人同士になったのはいいが、そんな様子を見ていると、あのとき伝えてよかったものかと考えてしまう。
それからベッドに仰向けにダイブし、ぼんやりと天蓋を眺めた。

「…本当は嫌いだったとか、はごめんだな。」

やはり少しタイミングを誤っただろうか。



するとドアの開く音が聞こえ、彼女の帰りを告げた。

「お待たせしました。」
「ああ、悪いな。」

やはり目を合わせてくれない。持ってきてくれたお茶を一口すすり、思い切ってこう切り出した。

「…ポピー」
「はい、」
「俺様の事嫌いか?」

彼女は目を見開いて、硬直してしまった。しばらくすると顔を真っ赤にして口が動いた。

「そ、そそそんなこと全然ありませんよっ?だっ大王様どうかしたんですか?」
「じゃあなんで最近素っ気ないんだ。」
「それは…」

そう言うと、目を伏せてしまった。

「今一その、大王様が本当にそう思っているのかよく分からなくて。それからどう接していいか分からなくて…」

その言葉に胸が少しチクリと痛んだ。
自分では結構本気なつもりなんだが。自分自身のことは知っているつもりだ。いつもがいつもだから、そう思わなくて突然と言われればその通り。
ってあれ?今にも泣き出しそうじゃねぇか。そんな顔するなよ、大丈夫か?



気がつくとそんな彼女をぎゅっと抱きしめていた。

「俺様は本気だ。ポピーは…俺様のこと好きか?」

自分でもよく分からないことを聞いてしまったのだが、彼女は素直に、とても小さい声で返事をした。

「…はい」

嫌われてないようでほっとしたら、さらに強く彼女を抱きしめた。

「それなら、いつも通りに俺様の側で小言を言ってろ。いいな?」

「はい…、…っ」

すると鼻水をすする音。突然彼女は俺様の腕の中で泣き出してしまった。

「ふえぇ…」
「おいっ大丈夫か?」
「あっ、すみません…なんか、嬉しくて…。大王さまって意外と優しいんですね…っ」
「…俺様は元から優しいだろうが。」

腕を解くと、ポピーは自分で涙を拭い、くしゃくしゃな顔のまま少し笑った。

自分の歳の半分しか生きていない少女に、俺は一体何を求めてるんだろう。
「恋人」なんて定義がまだ曖昧な、俺より全然小さなこいつに何を押しつけようとしていたんだろう。きっと彼女なりに悩んでいただろうに、それも気付いてやれないで。俺が勝手すぎたんだ。情けない。



そんな彼女を見ていたら、俺様の中の何かが弾けて、
気がつくと唇を重ねていた。
目を丸くして、顔を真っ赤にするポピー。ほんの一瞬のそれの後、また彼女は笑ってくれた。




end.
‥‥‥‥‥‥‥

お待たせしました、デデポピです!時間軸はプロポーズ直後。
うおおいつも大王さまがこんなだったら気持ち悪い…っ彼はたまに格好いいくらいが魅力的ですよね。



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