1章 精霊の願い7

夜、ルカは寝室で魔物達に今後どうするかをもちかけた。部屋に備え付けの小さなランタンの灯りを囲んで、ルカとりゅうたろうはベッドに腰掛け、あとの二匹は絨毯の上に敷いた敷き布団の上に座った。

まず、今自分たちが置かれている状況を整理する。自分たちの探し求めていた「夢見のオーブ」は、この町にはないこと。町が魔物に襲われたことによって、この世界にいくつかある町が危険な状態にあること。ノースデン周辺は寒さが厳しく、昼間でないと外出が難しいこと。
また、布団を敷いたり荷物の整理をしている間に、立て続けに他の町も魔物に襲われたという知らせが入った。ノースデンに近い港町ノフォーでは港がめちゃうちゃになり、船が出せないほどであるという。町の人の命には別状はなかったらしいが、より人々の不安は高まったそうだ。魔物達の狙いはやはり夢見のオーブだったという知らせに、ルカたちは不気味なものを感じた。

自分たちはこの異世界には関係のない部外者だ。ノースデンで夢見のオーブを買うという目的が達成されない今、町が危険な状態にあるためここでマルタに帰ることもできるが、残って町の人を助けるという選択肢もある。
皆の顔色をうかがうと、しっかりもののイルに育てられたせいもあるのか、どちらかというと後者寄りであった。
「よけいなことに首をつっこまないのもひとつの手だ。ただ、あの魔物を追った方がいいのかどうかは別としても、自分達の不備でオーブが奪われたともとれる」
りゅうたろうは冷静に状況を分析する。
「そうね。ここで無茶したらマスター心配するんじゃないかしら。でもあたしほっとけない!」
「おれも困ってる人を助けたいぞ!」
ミーもぷっちょも後に続いた。ルカはその答えを聞くと少し頬を緩ませ、「みんな優しいな」と小さく呟いた。
「でさ、マスター…じゃなかった、ルカはどうしたいんだ?」
りゅうたろうがルカの顔を覗き込む。
「僕も…できることなら助けたいと思う。この世界の精霊には以前イルもお世話になったみたいだし。また僕達がこの世界のために手伝うことができるんだとしたら、町の平和だけでも取り戻さないとって思うんだ」
魔物達は黙ってルカの方を向き、うなずく。そうこなくっちゃ、とミーが相づちを入れた。次に口を開いたのはぷっちょだ。
「ルカ、せいれいって何だ?」
「あっそうそう。みんなに言ってなかったね!えっとね、これを見てもらえれば信じてもらえるんだけど…」
そういいながらルカが皆に背を向け、自分の荷物を漁ると、ランタンの光にあたるようにブローチを手に取ってみせた。

ルカが魔物達に一通り泉の精霊の話をすると、しばらくぽかんとした表情だったが、最終的にルカの意見に皆同意してくれた。
ミーがいつになく真剣な表情で聞いてくれ、所々質問してくれたおかげで説明が円滑に進み、マスター初心者なルカにとっては嬉しくもあった。
「じゃあ、どっちにしろこの世界を救う手助けをしなくちゃいけないってことなのね」
「そうなんだ。精霊もあのフィアーパペット達が平和を脅かす邪悪なものだと言っていたから、オーブと関係ありそうだし」
「つまり、これからあいつらを追いかけてオーブを取り返せばいいってことかしら?」
「うん…そういうことになるかな。奪われたオーブ達をとりかえせれば、きっと町の人も僕達にも売ってくれると思うし、イルにお土産も買ってやれるしね」
なるほど、と相槌をうったミーの次に、ぷっちょが声をかけた。
「で、あいつらどこに行ったんだ?おれたちはどこにいけばいいんだ?」
「分からない。でも、精霊はこの世界にある大きな湖が怪しいって言ってたから、とりあえずそこを目指そうか!」
「そうだな!」
ぷっちょが笑顔でそう答えてくれた。りゅうたろうも無言でうなずいてくれたのを見てルカは安心した。ランタンの灯りが時々ゆらゆら揺れるのが、仲間達の明るい表情をよりよくうつしてくれていた。ひと呼吸置いた後にすくっと立ち上がり、ルカは両手で拳を握った。
「ようし、じゃあ明日の朝出発な。目的地は湖!これでオッケー?」
「おっけーなんだぞ!」
「異議無し」
「さんせー!」

それぞれにルカに同意を示した魔物達を見て心強さを覚えたところで、少年のマスター一日目は無事に終了することになった。




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1章は終わりです。
ウヒー疲れた!でもまだまだ続きます!がんばります!

2012.1.25


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