2章 湖への鍵1
ノースデンの城に泊まった翌日、用意してもらった朝食を食べて食材や道具の補充を町である程度住ませるとルカたち一行はすぐに出発した。テトと王様にこれからの旅の事情を説明し、精霊からもらったブローチを見せると、快く送り出してくれた。「いやーまさかルカさんが精霊の使いだったなんて!すごいですね」とテトからは感心させられてしまった。
町の道具屋は荒らされてしまったおかげで十分な道具は手に入らなかったが、戦いのサポートの杖や回復道具はなんとか最低限そろえる事ができた。
ノフォーを目指すことにした理由はニつ。一つは、荒らしに来た魔物の情報やオーブの情報を集める事。夢見のオーブがノフォーで元々取り扱っている商品なら、魔物が欲しがる理由が分かるかもしれない。もう一つは、湖を渡る手段を探すためだ。湖自体は特に変わった部分はなく、寒さが厳しくなると一面凍ってしまうということくらいだ。湖の中心にある島に、あやしげな塔が建っている事を城の人が教えてくれたため、とりあえずそこへ行ってみるのがいいだろうという判断だ。水の上を渡る能力は、うみなりのかねの力を元にわるぼうがイルに授けた力であるため、ルカには使う事ができないのだ。そのため、港町であるノフォーでなら何か方法が見つかるかもしれないと、りゅうたろうが提案した結果である。
ノースデンを出発し、トンネルをくぐるとすぐに港町にたどり着くことができ3た。道中やはり先頭を歩くのはりゅうたろうで、それについてぶつぶつ文句を言いながらも道案内をしてくれた。曇り空が広がる港町では塩の香りがするのだが、寒さは相変わらずで、やはりぷっちょが耳当てを欲しがった。ルカがなんとかぷっちょをなだめる。
ノフォーの町は一見すると魔物に襲われたような様子はなく、ノースデンより被害が少ないようだった。寒さのせいかこの事件のせいかは分からないが、建物の外を出歩いている人は少ない。ただ一つ不自然なのは、港町だというのに船が一つも見当たらないという事だ。波止場には一隻も見当たらず、乗船所の扉には『閉鎖中』の張り紙があった。
「港町なのに船には乗れないのか?」
寒さに耐えられずルカのコートに潜り、ルカの胸元から顔を出したぷっちょが張り紙を不思議そうに眺める。「こんな騒ぎが起きたから仕方ないとは思うけど」とルカも付け足した。
気がかりに思いつつも、まずは道具屋へ向かい、オーブの情報を集めることにした。
何件かあった道具屋のうち一番大きいところへ話を聞きに行くと、襲われたのは道具屋と船継場だけであるという情報を得る事ができた。
「じゃあ…やっぱりオーブは全部盗られちゃったんですね」
「そうなんですよ。いやーうちの目玉のゴールドパスは無事だったんですから、よくわからないですね。オーブには劣りますが、高価なものなのに盗られないなんて」
鼻の下にヒゲを蓄えた中年の店主が不思議そうな顔をした。ふくよかな体格だが、手先が器用なようで手先で小さな値札を書商品につける作業をしながらそう話してくれた。
「つまりあの魔物はオーブだけを狙ってるってことなのか?」
「そうかもねー。でもオーブだけ集めて何するつもりなんだろう」
りゅうたろうとミーがルカと店主の会話を聞きながら。そんなことを漏らした。
すると、店主は二匹の話をきいていたのか、ふいに顔をあげた。
「そうそう、あと船の帆もその魔物達に盗られたみたいです」
ルカ達の顔つきが変わったと思うと、「げっ」と小さく漏らしたのはりゅうたろうだ。
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