スプーン一杯分の幸せ

「やっとひと段落ついた。待たせて悪かったな」
零児の自宅に遊びに来たものの急に仕事が入り待ちぼうけをくらう事は珍しくない。
「気にするな。けれどプライベートな時間まで仕事をして辛くないのか?」
「辛いも何も私は社長だ。部下に任せれるものは任せているが私自身が対処しなくてはいけない案件も多い。これ位の忙しさは就任した時から覚悟は出来ている」
「そうか」
何とでもないように振る舞っているがその両肩にのしかかる責任の重さは想像出来るものではない。社長として多忙なのは仕方のない事だが一個人、赤馬零児としてどうなのか中々隼にはつかめなかった。
「私がミスをすれば大勢の人に迷惑がかかるだろう、決して楽ではない。しかし」
肩をまわしながら零児は続けた。
「苦いコーヒーもスプーン一杯の砂糖があれば甘くなる。君と出会ってスプーン一杯分の幸せのを手に入れて、一日一日が大分変わった」
「スプーン一杯分?」
たったのスプーン一杯分なのかと隼は思わず聞き返した。
「ああ、砂糖が溶ける量は決まっている。多ければいいというものではない。この位が丁度いい」
最初は一緒にいれるだけで十分だったのに知らず知らずのうちに求めすぎていた事に気付いた隼は思わず立ち上がった。
「コーヒーを入れてくる。台所を借りるぞ」」
 スプーン一杯分の砂糖でコーヒーは大きく姿を変える。零児の口にあう甘さになりたい、そう思いなが隼はコーヒーミルを回した。



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