いなくなったりなんてしないよ

「とうとうこの日が来ちゃったか…」
 いつかこの日が来ると分かっていたものの寂しさは拭いきれない。
「ちょっと長く居すぎたのかもね」
 普段通りの一日を過ごそう、そう思いながら奏良は柚子が倉庫に来るのを待っていた。こんな日に限って柚子は少し遅れるらしい。秒針の音と共に残り時間が短くなっていくのを肌で感じ落ち着かない。扉が開き光と共に柚子が入って来た。
「あ!やっと来た!遅いよー」
「ごめんねー」
 普段通りに振る舞っているつもりでも奏良は苛立ちを隠しきれなかった。
「素良どうしたの…?」
 普段と違う様子に恐る恐る柚子は尋ねた。虫の居所が悪いというのではなく何かある。数日前から何か様子が変だったように感じたのももしかして…確証は無かったが嫌な予感が頭の中から離れない。
「別にー。融合大分上達したっていっても柚子はもっと伸びしろあるんだしもっと色々なこと伝えなきゃって思うとさ、いてもたってもいられなくて。なんたって僕凄く優し師匠だし」
「私に隠し事してない?」
「どうしたの柚子?おっかない顔しちゃって」
 柚子の真剣な表情に何もかも見通されている、そう感じたものの何にも気付いていないかのように悪あがきをした。
「そんなのしないよー何かあったの?」
「ならいいんだけど…何か急に居なくなっちゃうような気がして…考え過ぎね」
「居なくなったりなんてしないよ」
 必死で取り繕っているものの素良の様子に嫌な予感が多分的中した、そう思った柚子は問い詰めたくても口に出したら本当になりそうで、そう、と何でもないというように振る舞う事しか出来なかった。
 柚子の考えが手に取るように分かった奏良は本当にごめんね、と心の中で謝りながら特訓を始めた。次会う時はもっと違う形で、いつかきっと…


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