Chapter 2
少女が目を覚ましたのは夕方だった。
木々の隙間からオレンジと黄色の夕陽が沈んでいくのが見える。
隣に目をやると、少年が幹にもたれ、眠るように目を閉じていた。
その手には、少女の、短剣。
少女はゆっくりと手を伸ばし、柄に触れた。
ヒュッ、と空を切る音がして、掴もうとした短剣が目の前から消える。
そして、少女が気が付くと、刃が顔の数ミリ前に突きつけられていた。
「…あ…」
少女は微かに驚き、少しだけ目を見開く。しかしそれをすぐに悠然とした笑みに変えると、
「死んでるのかと思った」
皮肉げに言った。
「うッセェ」
苛立ちをあらわにしながら、少年は短剣を強く握る。
「ンな皮肉を聞く為に生かしておいたんじゃねェ」
短剣を喉元に突きつけると、顔を、その深紅の瞳が確認できるほどに、近付けた。
「説明しろ」
少女は危機感を全く感じさせない、屈託のない笑顔で、
「協力、してほしいの。」
とだけ言った。
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