…と、その牙が、皮膚に触れる直前で止まる。



「テメェ…」



少年は少女の首筋の逆十字の刻印を目にし、ギリ、と歯を軋ませた。


「ッ、ざ、ける、なッ!」


少年が再び少女を激しく幹に叩きつける。


「か、ぁっ」


脇腹から、血が噴水のように吹き出る。

「"神殺し"の能力持ってる奴が"呪い付き"なんて聞いてねェンだよ!」

ガツガツと何度か体を強く蹴り付けると、少年の足元が赤く染まる。

それも構わず、少女に馬乗りになると少年は、首元に手を伸ばした。

「…かっ、あ…」

か細い息と共に声が漏れる。

頭に血がのぼりきっている少年は、荒く息巻きながら、夢中で首を締め上げる。

すると、首を締めている少年の腕を、少女が掴んだ。

それは寧ろ、弱々しく触れるのに近かったが、触れられたことに少年は少女を怒りで充血した目で睨んだ。

「あァ?」

「…る、」

「聞こえねェンだよ」

「……げ、る」

少女は浅い息の中で、少年に微笑みかけた。

少年が手を緩ませると、


「…協力…して、くれたら、能力を…あげる」


言い終わると、少女は意識を失い、少年に触れていた手も、ダランと垂れ下がった。
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