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あれから一年。
あの方を想い続ける政明様の側にいることを選んだ僕は、今日も一人温室に来ていた。
「今年も満開に咲いたな〜」
冬の終りから春にかけて咲くアネモネは温室の中で色とりどりの花を咲かせていた。
一年前のあの夜、この温室で泣き疲れ眠ってしまった僕は、翌朝満開に咲き誇るアネモネに圧倒された。
アネモネの花言葉は「はかない恋」や「恋の苦しみ」。
以前庭士のおじさんに教えてもらい、その花言葉から自分の恋を連想させられあまり好きな花ではなかった。
でもあの日、立派に咲くこの花達に魅せられなんだか勇気をもらった気がした僕は、政明様の側にいることを選んだ。
この花達のように立派な花を咲かせることはできないけれど、せめて側にいて同じ時間を感じていたかったから。
「君たちは強いね…僕ももっと強ければよかったな。」
あの方の婚約に胸を痛めていた政明様を思い、抱えていた足にそっと顔を埋める。
「今だけ…泣いてもいいよね。」
そう呟いた一葉の言葉に応えるように、さわさわと花達が風に揺れていた。