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「話がある。寝室に来なさい。」

翌朝いつも通り自分の仕事に戻った僕を、政明様が呼び止める。

書斎ではなく寝室。

それはその話というものが仕事の事ではなく、プライベートな事だということだ。

間違いなく昨夜の事だろう。

(行きたくない……)

それでもここで逃げては駄目だと思った。

昨夜散々泣いて、やっと決意したのだからーー。



「昨夜はすまなかった。」

開口一番、そう言って政明様は僕に頭を下げた。

「いや、昨夜だけじゃなく今まで悪かった。お前を愛しく思う気持ちに嘘はないがそれは弟を思う様なもの、私はずっとお前の中に彼の姿を見ていた。」

覚悟はしていても、やはり面と向かって言葉にされると辛い。

「お前を傷つけてしまった。…私の顔が見たくなければここから出て行っても構わない、生活については私が保証する。」

「…僕は出て行きません。」

「え…?」

強く言い切った僕に政明様が顔をあげる。

「僕は政明様に拾っていただきました。そのご恩を僕はまだ返せていません。」

「しかし…」

「それにっ、政明様と離れたくありません。…政明様があの方を思っていても構いません。僕を抱くことで政明様のお気持ちが慰められるなら、喜んで身体も差し出します。だからっ!」

気持ちが昂り抑えていたものが込み上げてきた。

「側に…いさせて下さい…」

政明様へとしがみつき絞り出すような声でそう懇願した。

顔はあげられなかった。
あげたら今にも溢れそうな涙が零れてしまうから。

「一葉……お前は馬鹿だね…。」

ーー私と同じだ。

そう言って政明様はそっと抱きしめてくれた。






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