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政明様に初めて抱かれた時、僕は同時に政明様へのこの想いがただの憧れではないことを知った。
あれは雪が舞い散る寒い冬の日だった。
その日は珍しく政明様が酔ってお帰りになり、僕はふらつく政明様を支えながら寝室までお連れした。
そのままベットに横たわった政明様にお水を差し出した時、彼の手が僕の腕を掴んだと思ったら気付けば政明様の後ろに天井が見えていた。
「ま、政明様!?」
突然の事に動揺しながら彼の名を呼ぶと、政明様はそっと僕の頬を撫でながら囁いた。
「一葉、お前いくつになった?」
「…14です。」
「そうか、もうそんな年になったのか。…大きくなったな。」
そう言って優しく頬笑む政明様。
「一葉、私の事が好きか?」
「えっ…」
突然思ってもみなかったことを聞かれ、僕の心臓が跳ね上がる。
「そ、それは…その…す、好きです。」
最後の方は小さくなってしまったが、それでも僕は政明様にそうお伝えした。
その時の僕はこれが憧れからくる思慕なのか、そうでないのかよくわからなかなった。
ただ、政明様を慕っていることにかわりはなかった。
「一葉、私は今からお前に酷いことをしようとしている。だがこれは決してお前を嫌いだからではない。お前が愛しいからだ。だからどうか私を受け入れてくれないか?」
まっすぐ僕を見つめる政明様の目は酔っているにも関わらずとても真摯的で、僕はその瞳に見え隠れする熱いなにかに引き寄せられるように気付けばそっと頷いていた。