日曜日と月曜日の狭間



※善逸くんと本誌を読む話です。本誌ネタバレあり。謎の時間軸の現パロです。細かいことを気にしない猛者のみどうぞ…!!





善逸とベッドに二人並んでうつ伏せになり、スマホの画面を覗き込みながら…二人で涙を流す、日曜の夜。
その画面にうつされているのは、ジャンププラスのアプリ画面。そして、ある漫画の最終ページの、セピア調の写真のイラストだった。

「み、みんな…みんなすごい、いい、笑顔で」
「うん…ちゃんと、この時代まで遺されてるのも、本当…すげぇよ…」

ぐず、ぐず、二人分の鼻を啜る音が、マンションの一室に響く。
「俺ティッシュとってくる」と体を起こしそうになった善逸を制止して、ベッドのすぐ下から素早くティッシュを取り出すと、「さっすがなまえ」と涙でぐちゃぐちゃの顔で褒められた。

「いい最終回だったなあ」

思いきり鼻をかんでから、鼻を赤くしたまま、善逸が言う。

「うん…ほんと。素敵だったね」

ベッドにそのまま置こうとされたその鼻水ティッシュを回収しながら答えると、「あっごめん」と一言飛んできた。

「ティッシュはちゃんと捨てなさいね」

ベッドのすぐ横に置いてあるゴミ箱にそれを投げ入れながら言うと、はぁい、と間延びした返事が返ってきた。
私も涙を拭いて、危うく垂れるところだった鼻水を拭き取る。いくら気心知れているとはいえ、まだ彼氏の前で鼻水を垂れ流すようにはなりたくない。

あれやこれやと感想を言い合いながら読んで、いろんなものを見つけてたくさん笑って、最後は泣いて。いい時間だったなあ、なんて思いながら、ごろりと仰向けに転がった。
まだうつ伏せのままの善逸にぶつかると「なにすんの」と言われてしまったが、善逸も少し転がって、肘をついて私の顔を覗き込んだ。

「なまえ、目真っ赤」
「善逸はね、鼻が真っ赤」

二人でくすくすと笑い合ってから、「はぁ、それにしても」と話を切り出すと、「ん?」と善逸が眉毛を少し上げた。

「善照くん、だっけ。良かったなあ」
「んー?良かったって?」

善逸にそっくりの黒い髪の少年を思い浮かべながら言うと、善逸は少し首を傾げる。

「見た目が黒い善逸なのも可愛いし、仕草とか性格もそっくりでね。すごい好きだなあ」

善照くんが出てきたコマを思い浮かべて、いちいち善逸にそっくりだったなあと微笑んでいると、善逸はなぜだか面白くなさそうな顔をしていた。

「…へ〜、そう」
「ん、え、なに善逸、なんでご機嫌斜めになっちゃったの?」

半分身体を起こして善逸を見ると、今度は善逸がごろりと仰向けになってしまった。口を腕で押さえるみたいにしながら、もごもごと何か喋っている。ちっとも音を拾えなくて、「え?なんて?」と聞き返すと、「だからさぁ、」と唇を尖らせた善逸と目があった。

「お前は顔が一緒で性格が似てたら、誰でもいいんだ」

え、と声が漏れる。言い切ってから、私に背中を向けて毛布に包まってしまった善逸に、一拍遅れて後ろから抱きついた。

「ごめんって、私が好きなのは善逸だけだよ」
「…ん」
「拗ねないでよー」
「…んー」

毛布越しの温かい背中に頬をすり寄せながら、「善逸だけだってばー」となおも繰り返すと、「じゃあ、ちゅーしてよ」なんて、可愛いお願いをされて頬が緩む。

「こっち向いてくれないとできないよ」

背中から離れて身体を起こしてそう言うと、毛布を跳ね除けるみたいに出てきた善逸もそのまま起き上がった。ベッドの上で座って向かい合うような格好になって、数秒見つめあってから、善逸が口を開いた。

「お前からして」

その言葉にはちょっぴり期待みたいなものが滲んでいて、本当はそこまでヘソ曲げてないんでしょ、なんて言いたくなったけど。
身体を寄せて口付けると、ぐ、と後頭部を押さえられてバランスを崩して、そのまま善逸にのしかかるみたいに、ベッドに倒れ込んだ。
手の力が弱められた隙に唇を離すと、善逸の眩しい色の髪と瞳が、私の胸の奥を疼かせた。

「やっぱり、善逸しか好きじゃない」
「うん。知ってる」

また私から唇を寄せると、ぐるりと視界が回って、善逸に見下ろされるような格好になった。唇と首筋に触れるだけのキスを一回ずつした善逸を、じとりと見つめる。

「…あした、月曜ですけど」
「それも知ってる」

寝不足を覚悟しながら、ため息まじりに「一回だけね」と言うと、「んー、なまえ、だぁいすき」と返された。
ゲンキンなやつめ、と心の中で毒づくと、今度は深い深いキスが落とされて。私は眠るみたいにゆっくりと目を閉じた。



20200518




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