私はなにか病気にかかったのかな、なんて昨日から思ってしまう。
どきどき、そんな効果音がつくくらいなんだか胸が早く動く。
なんでかなんてわからないけど昨日からずっとチラチラと頭にすすき色の髪がちらつく。
一体なんなのよっ…!
「集中できない…!」
静かにしたいのに、したいのに私の心臓があまりに煩すぎて全く集中できない。
こんなにも訳がわからない感情なんて初めて。
もう、これは本人を咬み殺すしかないの…!?
あの人はっきりいって小動物みたいだからなんだか嫌なのに。
って、そんなことより本当に彼が原因なのかと思う。
もー考えるより会って確かめればいいのよ、そうに決まってる!
思い立ったら吉日よ、あのすすき色の小動物に会いに行くしかないわ。
*********
「あ…(いた…!)」
2−Cからでて廊下を歩いていれば昨日会ったすすき色の小動物がいた。
改めて見てもやっぱり小動物にしか見えないし、一体なんで彼を見るとドキドキしちゃうの?
意味がわからない。
けど、近づいていけばいくほどドクンドクンと高鳴る胸。
本当に意味がわからない。
「ねぇ」
「へっ、ひぃ!雲雀さんの妹さん!」
「兄さんの妹って…私には紫媛って名前があるわ」
「あ、ご、ごめん。紫媛、ちゃんでいい?」
「う、」
雰囲気がいきなり落ち込んで思わずこっちもたじろんでしまった。
心なしか小動物の耳が…!
本当に私はこの子を咬み殺すの?
なんだか犯罪を犯した気分になるのは気のせいかしら。
う、あーもう!
「あ、そういえばオレに…なにか用かな?(ひぃい!オレ咬み殺されないよね!?)」
「え、その用っていうのは…」
胸がドキドキしたからそのドキドキを無くすために咬み殺しにきました、なんてこんな小動物の雰囲気な彼に言えない…!
兄さんとか昨日いたうるさい人達なら何も言わずにボコボコと殴ることが出来るのに、人が変わった途端この有様。
私らしくないというか、逃げ腰というか…!
でもこの小動物を見ていると何かを思い出す。
一体誰だったのかな。
えっと…って今はそれどころじゃなくて、用件の理由を考えなくちゃ…!
「そ、その…!あ、昨日迷惑かけちゃったから…、ごめんなさい」
「え、あ!いいよ!!こっちこそ煩くしちゃってごめんね」
「ーっ!その、別に気にしてない、わ」
「へへ、ありがとう紫媛ちゃん」
へにゃりと破顔して笑うものだから私もついつい釣られて微笑んでしまった。
そんな姿を小動物は見ていたのか驚いた後、また綺麗に笑った。
その姿を見るとまた胸がドキドキしてしまって…ああ思い出したわ。
似ているんだ、彼はあの子に。
「名前、なんていうの?」
「あ、オレ自己紹介してなかったんだ」
「うん」
「ごめん!オレ沢田 綱吉。みんなにはツナって呼ばれてるよ」
「ツナ…」
「そう」なんてまた優しく笑う姿を見ると胸がドキドキしちゃう。
分かった、ようやくこの胸の高鳴りの理由が…。
ツナは、ツナは…−−。
「キョンちゃんにそっくり…!」
「へ、キョン、ちゃん?」
「私が昔飼ってた犬の名前よ」
「いぬ…(紫媛ちゃんの目が輝いてるーっ!?)」
あのへにゃりと笑った姿が誰かに似ていると思ったけど、まさかキョンちゃんなんて…!
昔飼ってたキョンちゃん凄く可愛くて…柴犬の中でも1番の可愛さだったわ。
尻尾を振って私の後ろに着いてきたあの可愛いキョンちゃん。
ツナを見ているとチラチラ見えた影はキョンちゃんだったんだわ…!
分かってしまうとさっきまでのモヤモヤなんてものは消えてしまって…、守らなくちゃという思考が出てくる。
キョンちゃんのように可愛いツナのことだから他人に虐められないか心配だわ。
なんで兄さんは私をツナと同じクラスにしてくれないの…!
「ツナ」
「へ?」
「安心して。私がツナを守ってあげる」
「え、えーーっ!!??」
「キョンちゃんも守ってたから大丈夫よ。安心してツナ」
「(オレ、犬と同等ーーっ!!??)」
ツナには毎日しあわせな生活を送らせてあげなきゃ。
その為にはまず身辺警護からよね。
私が毎日頑張るからねツナ!
どきどきしちゃう!(やっぱりツナは小動物だわ!)20101110
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