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愛する君の手を掴んで、ぎゅっと引き寄せる。
「大好きだよ」
空に舞っているのは、白い桜。
想いが通じ合った、あの秋の日から、一年が経って、二度目の冬が来た。
「俺も好きだよ」

離れたくない、けれど、離れなければならない。
どうしようもないのに、恋い焦がれる程好きで。
「また、会えるかな?」
「詩羽……。」
「……ううん、また会おう。大丈夫だよね、離れたり、なんか、」
「会えるよ」
空から降る真っ白、が、ひらりひとひら、舞って、私の手の甲に、一つ落ちて。
「絶対会えるよ。俺達、繋がってるから。」
「てん、ら……。」
「繋がってるから、離れることなんか出来ないんだ」
「……そっ、か」

手を引いて、天爛が私のことを抱き締めてくれる。
白衣から香る実験室の香りも、私の浴衣のカモミールの香りも、全部が、私達の香り。
力強い腕に、身を任せて、細くて長い指を、見つめて。

「ありがとう、天爛」
「お役に立てたなら嬉しいよ」
言いながら、頭を撫でてくれる手が何より愛しい。
天爛のこと窺うように、見上げる。

「詩羽、ここは始まりだから」
「始まり……?」
「俺達は、お互いに、やりたいことを精一杯やってから、二人の時間に戻って来るのがいいと思うんだ。」
「……うん」
「道のりは違っても、最後にまた詩羽と会えるなら、俺はそれでいい」
「そっ、か」
「……戻ってきたら、詩羽は俺に、カモミールをプレゼントしてくれるか?」
「うん!……私ね、天爛と、雪の積もったあの庭園を、二人で歩きたいんだ」
「ありがとう、詩羽」
「だから、私頑張るね」
「うん。待ってるよ」
「うん」
抱き締められたまま、雪空の下で見上げた空は、Grayなんかじゃなくて、プラムブルーのような気がした。
「……天爛、時々、は、会ってくれる、よね?」
「もちろん」
「じゃなきゃ、私、天爛に話したいことが抱えきれなくなっちゃいそうだよ」
「そのままで、いいんじゃないかな」
「そう、かな?」
「俺達は、俺達のままで、俺達らしく、いよう」
「…うん」
「ずっと、俺は、詩羽の隣にいるから。だから、安心して。抱えきれなくなる前に、俺を呼んで、教えて」
「うん。……別れじゃ、ないんだもんね」
「そうだよ」

天爛の指に、自分の指を絡めて、ぎゅっと掴んで。
自分で掴んだくせに、その瞬間、鼓動が速くなる。

「じゃあ、またね、だね」
「ああ」

歩き出そう。ここが始まりだから。
大丈夫。planisphereは一等星を指してる。

立ち上がって、真っ赤になりながらも手を差し伸べてくれた、天爛の手を取る。
「またね、天爛。」
「あぁ。またな、詩羽。」
「桜の木の下で、待ってるから」
「俺が必ず、詩羽を迎えに行くよ」

星座の導きで、想いは重なった。
そしてまた、冬から春へ、季節は巡る──。


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