ぽん、と、俺の手に乗せられたのは、小さな袋に入れられた、ハート型のべっこう飴。
「学祭のお土産。可愛いなって思って買っちゃった」
「ありがとう」
「いーえー」
大したことないよ、と手を振る詩羽の前で、俺は袋を開け、
戸惑って手を止めた詩羽の口に、ぐっ、と飴を押し込んだ。
「ん……ん。おひしー」
詩羽はにこっと笑って感想を述べる。
その笑顔につられて、俺もべっこう飴を口に放り込めば、優しい甘さが口の中に広がる。
しばし広がる甘さを楽しんでから、ふと浮かんだ疑問を尋ねてみる。
「それにしても、どこでこんなの売ってたんだ?」
「りんご飴屋さんだよ。部活の後輩が一個くれたから、可愛いなと思って買ったんだー」
「後輩?」
「うん。先輩、これどうぞ、って。部室で。」
……詩、羽。
無自覚な君には、少しお仕置きが必要かもしれない。
「男子?」
「うん、そうだ…よ?」
異変に気づいたのか、詩羽の返答が一瞬止まる。
「……。」
俺は一瞬考えた後、最後の一つを詩羽の口にもう一度押し込む。
「んっ……!?」
そして。
「Trick or treat?」
「てん、らっ……!?」
君に、君だけに、甘い甘い、悪戯を。
2014/10/31