vanish39 | ナノ





vanish39

「慎也、この部屋から出ないよな? 自殺もしないよな? そんなことしたら、おまえがアナルをペニスで犯してくださいって懇願した動画、ばらまくから」
「……はい」
 慎也は射精を許されないペニスから腰にかけての痛みに耐えながら返事をした。汗で濡れた背中を滑った葵の手が、尻の割れ目を通り、ローターのコードを少し引っ張る。
「ッあ、アァ……」
 腰を前に突き出すように振ると、その振動だけで慎也のペニスは震えた。じわりと吐き出される精液は先端部分に留まる。頭がおかしくなりそうだった。
「何だったけ、あいつらの名前。おまえ、建築家になりたかったのか?」
 答えられずにいると、葵が背後で笑う気配がした。
「あいつらのために夕飯まで作ってたよな。どっちも好きなのか? もう抱かれたのか?」
 首を横に振ると、射精制限しているコックリングが食い込んだペニスを握られた。
「っひ、あ、ァアアッ」
 葵はおそらく強くは握っていない。だが、慎也は脳天を突き抜けるような痛みと快感に、体をけいれんさせ、口から唾液を垂れ流した。
「俺だけを愛してるって言えないのか?」
 慎也は必死に言葉を吐き出そうとしたが、出てくるのは音だけだった。
「物覚えが悪いな。だから、受からなかったんだ」
 ぎゅっと心臓をつかまれたような痛みに、慎也は涙をこぼす。
「覚えるまでやるから」
 そう言った後、葵はコードレスのローターに入れ換えて、彼のペニスでアナルを犯した。苦しくて言葉が出ず、漏れるのは嗚咽に似た短い音だけだ。だが、彼は慎也がちゃんと愛していると言うまで解放してはくれなかった。

 慎也はもう左腕をカッターナイフで傷つけたりしていない。自分の内から込み上げてくる汚物に気づいたら、すぐに錠剤を飲んだ。葵が用意しているその錠剤はたった一錠だけで、慎也を無の世界に連れていってくれた。
 慎也は外に出ず、葵が望むことをした。葵が望むことを言った。時々、やって来る赤髪の男と時田の言うことに従った。それ以外、何もしなくてよかった。それだけでここにいることは許された。
 洗面所で鏡に映る自分を見て、慎也は自分に笑いかけた。媚びを売るような笑みに見えて、すぐにうつむいた。胸に光るピアスをつかんで、軽く引っ張る。その刺激だけで甘い声を出そうとした自分に気づいた。
 気持ち悪い。泣きわめきそうになる。急いでキッチンへ行き、錠剤をシートから押し出した。性急に口の中へ放り込み、蛇口から流れる水を口へ入れた。
 十九歳の冬が終わり、春が来たら、慎也は二十歳になる。要司達と缶ビールで乾杯できるようになる。
 もっとも、彼らがまだ慎也のことを覚えているかは分からない。葵に連れ戻されてから、慎也はこの部屋を出たことがなかった。要司とタカは、また心配して捜しているかもしれない。壁はもうモスグリーンになったんだろうか。
 もし、もう一度、あの家へ行けるなら、モスグリーンの壁を見たいと思う。それで幸せな気持ちになったら、玉砕覚悟で要司に告白したい。慎也は、要司の反応を予想してかすかに笑った。

 室内は暖房が効いていたが、慎也は寒さで目が覚めた。外は暗く、もうすぐ葵が帰ってくる頃だ。トイレで用を足した後、シャワーを浴びるために洗面所へ行こうとした。
 行こうとして立ち止まったのは、インターホンが鳴ったからだった。葵がいない時に来客や訪問は一切ない。無視して浴室へ入ると、インターホンを連打しているのか、途切れることなく音が続いた。

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