falling down21 | ナノ





falling down21

 最初に犯すのは、最上級生ではなく、トビアスより一つ下の生徒だった。たいてい彼がアナルを拡張する。トビアスは床にひざをつき、彼へアナルを向けていた。最上級生がスタンガンを当てた脇腹は赤くなっている。歯を食い縛っても嗚咽が止まらない。誰かに髪をつかまれ、顔を上げさせられた。
「ほら」
 コンドームで光るペニスを口へ含むと、吐きそうになって涙がにじんだ。心の中でどんなに拒否しても、仕込まれた動きで舌を動かす。
「っむ、ん、っん」
 うしろをいじっていた生徒が、トビアスのアナルを犯し始めた。前とうしろから突かれると、自分が圧縮されていくような感覚を覚える。そのまま潰れたらいいのに、と思うが、トビアスは潰れることなく、新しいペニスをくわえるだけだ。
 無抵抗でも、スタンガンを当てられる。理由は何でもいい。ストレス発散のための道具だから、どんなふうに扱ってもいいと思われている。トビアスはここでも道具扱いしかされない自分を嘲笑した。
 集まった生徒達が飽きるまで続く制裁は、いつも突然、終わる。トビアスは手首にあった手錠が消えているのを見て、立ち上がった。もう明け方かと思ったが、時計はまだ夜中の二時を指している。毛布を体へ巻き、隠していた鍵を持って、窓を開ける。
 懲罰部屋行きになっても構わない。トビアスはただここから逃げ出したかった。部屋は一階のため、窓から出入りしやすい。月明かりに照らされたブラウンの瞳はうつろだった。礼拝堂の鍵を開け、祭壇の前でひざまずく。母親とマクドネル家の二人が消えるように、と祈ってきた。自分自身を律し、他人の幸せを願いなさい、と司祭から教えられていた。トビアスは天井を見上げながら、ただ自分が消えるようにと願う。
 左奥にある定位置で丸くなる。扉がきしむ音がした。トビアスはなぜかレアンドロスが来てくれたと思った。もう大丈夫だと言って、抱き締めてもらえる気がした。上半身だけを起こして、そっと見た視線の先にいたのは、トミーだった。
「トミー……」
 トビアスは落胆せず、友人の姿を見て、安堵した。礼拝堂の中を照らしていた月明かりが雲で隠れていく。常夜灯があるが、薄暗く、トミーの表情がよく見えない。トミーは常夜灯を消した。
「トミー?」
 両肩をつかまれて、床へと押し倒された。不安になり、トミーを呼んでも返事がない。
「トミー、どうし、っ」
 トミーの手の動きや力のかけ方で、トビアスは彼が何をしようとしているのか、分かった。
「ぃ、や、いやだ、トミー、やめて、やだっ」
「どうして? あいつはよくて、僕はダメ?」
 トミーが何か大きな勘違いをしていることは分かったが、その誤解を解くことはできなない。彼は手のひらでトビアスの口を押さえた。もう片方の手は毛布の中へ入り、トビアスのアナルへ触れてくる。トビアスは痛みにうめいた。すでに複数の生徒達に犯されたそこは腫れている。両手で彼の拘束から逃れようとしたら、頬を打たれた。
「何でダメ? 何で気づいてくれない? トビアス!」
 トミーは毛布を少しだけ広げて、彼自身の前を寛げた。校内で頬を打たれたのは初めてだった。休暇中に軟禁される時くらいしか、顔を攻撃されることはなかった。トビアスは左頬に触れる。目が慣れてきたものの、月は雲に隠れたままだ。彼の手が太股へ伸びてきた。
 四つ這いになり逃げようとしたが、引っ張られ、仰向けにされる。トミーはもう一度、トビアスの頬を張った。トビアスは子どものような泣き声を漏らす。
「言ったじゃないか、僕のほうが先だって、どうして? あいつが王子だから?」
 声が漏れないように、口を押さえられた。トミーのペニスがアナルを引き裂くように進入してくる。トビアスは暗闇の中で目を開き、大粒の涙をこぼした。
「っ、ンー、ンーっ」
 弟のように思っていたトミーが、どうしてこんなことをするのだろう。自分は何を間違ったのだろう。トビアスが空を見つめていると、月明かりが射し込んだ。トミーの表情はうつむいていて見えないが、彼が泣いていることは分かった。自分のせいで泣いている。トビアスはそっと右手を伸ばした。彼はトビアスの手を払った。口をふさいでいた手が離れていく。
「ご……ごめ」
 身体的にも精神的にも限界を迎えていたトビアスは、謝罪の言葉を口にしながら目を閉じる。光のない世界に、「『その時』は素敵な思い出にしような?」というレアンドロスの声が聞こえた。その時は永遠に来ない。最初から、自分が消えるように祈ればよかったと思う。そうすれば、傷つけたくない人達を傷つけずに済んだかもしれない。トビアスは真っ暗な世界へと落ちた。

20 22

main
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -