three of us9 | ナノ





three of us9

 朝晩はずいぶん冷え込むようになった。祐はポケットから鍵を取り出して、玄関へ続く扉を開ける。
「ただいま」
 マフラーを取りながら中へ入ると、司が、「おかえりなさい」と言ってくれる。少し屈んで、キッチンに立っている彼にキスをした。彼のくちびるの温度で自分のくちびるが冷たいことに気づく。くちびるを離して、そっと髪をなでた。
 部屋で着替えて、ソファに座った。司が選んだモカ色のソファは座り心地もよく、食事後はよくここで眠りそうになる。三人での生活はまったくストレスにならなかった。
 互いの気持ちがどの方向に向いているのか、誰も明確には言わず、あいまいな関係を続けている。祐はこのままでいいと考えていた。真斗がいない間は接触も多くなり、司は時おり、祐のベッドで眠るが、まだ体の関係はなかった。司は真斗とセックスをするが、それもあまり気にならない。
 司はどちか片方ではなく、どちらも好きでいてくれる。相手が真斗以外なら嫉妬していただろう。食事の後、祐は司が片づけている間、ソファに転がってテレビを見た。
「祐さん、コーヒー飲みますか?」
「あぁ」
 隣に座った司を抱き寄せる。祐は実年齢より若く見られるが、それでも、司と並べば歳の差は歴然としていた。実年齢を知った時、司はひどく驚いていた後、それが失礼だと思ったようで謝ってきた。柔らかな頬をなでながら、キスをすると、彼がほほ笑む。
「祐さんといると安心します」
 司が言うと、媚びを売っているように聞こえない。祐はくすぐったい感覚に笑みをこぼす。
「人がよさそうってたまに言われる。でも、実際には面倒くさがりで、世話を焼くタイプじゃないんだ」
 コーヒーへ手を伸ばして、まだ熱い液体を飲む。
「真斗さんは頼れる兄貴って言ってました。俺にも兄がいるんだけど、あんまり仲よくなくて、一緒に暮らしたりとか考えられないです」
 ミルクを足したコーヒーへ口をつけた司はそう言った。
「……俺達、仲いいかな? 何か昔、お互いを足したらちょうどいいなって話はしたことがあるけど」
 苦笑して言えば、司も口元を緩める。
「二人ともいいです。全然タイプが違うのに、分かり合ってて羨ましい」
 祐はいたずら心から、司へキスをした後に聞いた。
「たとえばキスも違う?」
 真斗と自分を比べるような話題は避けていた。今の関係が心地いいからだ。司は硬い表情で頷く。
「俺、変って思われるかもしれないけど、でも、二人とも好きです。祐さんも真斗さんも好きなんです」
 瞳がうるみ、涙があふれた。二人を同時に好きになったことがない祐には想像できないが、いわゆる二股という言葉はイメージのいいものではない。おそらく司なりに悩んでいるのだろう。一度、三人で話し合ったほうがいいかもしれない。祐は泣き始めた司を抱き締めて、その背中をなでてやった。

 腕の中の温もりが消えていることに気づき、祐は目を開いた。連休のため、この時間に起きる必要はない。真斗の部屋から声が聞こえてきて、彼が帰宅したのだと分かった。目を擦り、顔を洗ってから、冷蔵庫を開く。
「っあ、ん、あぁ……」
 司の声に、取り出そうとしていた牛乳パックを落としそうになった。仕事から帰ってきたばかりだろう。朝から元気だ、と感心した祐は、自分の中心が熱を持ったことに溜息をついた。司の声がいけない。彼の声はダイレクトに欲望を刺激してくる。特に体の関係を望んでいないわけではなかった。ただ、踏みきれないだけだ。
 祐はそっと扉へ近づき、ノックをせずに少しずつ押した。司の声が鮮明に聞こえる。ほんの少しの好奇心に敵わず、中をのぞいた。司がベッドへ手をついて、下半身を真斗へ向けていた。真斗は彼の腰をつかみ、激しく突き上げている。
「っう、あぁ、っく、ぃ、あ、アアっ」
 がくがくと揺さぶられた司が、ベッドについていた手を滑らせ、そのまま上半身をベッドへあずけた。まだ余裕を見せている真斗が不意にこちらを振り向く。祐は固まることしかできなかった。にやりと笑った真斗は、人差し指を立てて動かす。

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