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three of us7

 祐はインターネットサイトで見つけた出会い系の掲示板で、異性の相手を探していた。彼女を作ってしまえば、何となく真斗が言っていた言葉を深く考えずに済むと思ったからだ。
 だが、サイト上で出会っても、実際に会うとなると、そう簡単にはいかない。祐はもともと社交的ではない。いいな、と思う相手がいても、なかなかコンタクトを取ろうとは思えなかった。特に、「料理が得意です」と書いてあるプロフィールには、司みたいにどんな料理でもできるのか、と比べてしまう。そして、そんなことを考えた自分を嘲笑した。
「祐さん」
 ノックの音と司の声に、祐は慌ててウィンドウを閉じた。
「どうぞ」
 久しぶりの週末休みだった。トレイにコーヒーを乗せた司が、こたつテーブルの上にコーヒーを移動させる。
「ありがとう」 
「いえ……」
 いつもならすぐに部屋を出ていく司が、そのまま突っ立っている。祐はベッドから下りて、コーヒーを一口飲んだ。
「おいしいよ」
 小さく笑みを浮かべて言えば、司の頬が赤く染まる。その姿を見て、祐は真斗の言葉を思い出した。真斗はおそらく寝ている。秋の陽射しが柔らかく室内を照らしていた。
「あ、祐さん、あの、俺、迷惑ですか?」
 迷惑と聞いて、祐は眉間にしわを寄せる。司はうつむいたままだ。
「最近、その、少し、変な気がします。俺、もう一つ、バイト見つけて、なるべく早く出ますから、すみません」
 真斗から司の年齢を聞いていた。一回りも歳下なのに気をつかわせている。そう思うと、申し訳ないと思った。もちろんここは自分の家であり、彼は居候なのだから立場としては自分が上で間違いない。ただ、変な気がすると言った彼の言葉は当たっている。祐は彼を意識し過ぎて、うまく接することができなくなっていた。
「司君……」
 気にしないで、と言いたいが、気になるから仕方ない。矛盾していく心をどう整理して言葉にすればいいのか分からず、もどかしい気持ちばかりで埋まっていく。その間も、嫌われたと思っているのか、司はうつむいており、何だか泣きそうになっていた。
「えーと、司君」
 ようやく顔を上げた司に、祐はほほ笑んだ。
「迷惑だなんて思ってない」
 司の表情が明るくなっていく。彼は笑うと可愛らしい。
「気をつかう必要ないから。料理もおいしいし、助かるし、すごく感謝してる」
 トレイを握り、赤くなっている司のほうへ近づく。弟の頭をなでる要領で、彼の頭をなでた。真斗とは異なる愛らしさだ。柔らかな髪を何度かなでて、手を戻す。弟のように接すれば、彼を意識しなくて済むと考えた。頭一つ分低い彼のことを見下ろし、その長いまつげを見た。
 真斗は司を抱いている。付き合っているわけではないのに、そういう関係でいられることが祐には不思議だった。自分の立ち位置はあくまで兄にしたほうがいい、と思い、司へ声をかける。
「真斗はいい奴だから、頼むな」
 はっとした表情を見せた司が、あいまいな笑みを浮かべる。彼は小さく頭を下げて出ていった。真斗のことだから、無理やり抱いているわけではないだろう。司は流されているだけだと思うが、たとえ体だけの関係だとしても、真斗が抱いている以上、自分が間に入るべきではない。
 懸命に言いわけを考えている自分に気づき、祐はコーヒーを飲んだ。苦い味が口の中へ広がった。

 帰宅した時、出迎える声がなかった。祐はリビングダイニングにあるテーブルの上に夕飯を見つける。箸は二人分並んでいた。スーツの上着を脱ぎ、部屋へ向かうと、司の声が聞こえる。叫ぶような声だ。
 祐は驚いて、ノックもせずに真斗の部屋へ入った。携帯電話を持ち、泣きながら話す司と目が合う。司は電源ボタンを押して、電源を切った。
「大丈夫か?」
 司は涙を拭いて頷く。
「すみません」
 部屋を出ていこうとした司の姿があまりにも小さく見えて、祐は司の腕を引いた。腕の中へ抱き寄せる。
「本当に大丈夫か?」
 こちらを見上げた司の瞳がうるんでいく。祐は彼を抱き、頭をなでた。彼は泣きながら、抱きついてくる。
「お金、持って逃げ、前の人です……俺とまた一緒にって」
 詳しくは聞いていないが、同棲していたという司の元彼は、司の貯金をすべて使い込んでいたらしい。その後、どこかへ姿をくらまし、今さら一緒に暮らしたいなんて虫がよすぎる。祐は会ったこともない相手に腹を立てた。

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