three of us6 | ナノ





three of us6

 いい歳して、いつまでも兄弟で暮らすなんて、と母親は嘆いている。これを機に同居を解消してもいい、と思った。ごちそうさま、と手を合わせて、片づけを手伝う。風呂に入ろうと準備をしていると、出勤していた真斗が帰ってきた。
「ただいまー」
 店が暇だったり、人手が足りていたりすると、時おり、帰ってくる。真斗は下着を手にバスルームへ向かおうとしていた祐を見て、「ごゆっくり」と笑った。祐は熱い湯に体をつけて目を閉じる。チャプチェなんて居酒屋でしか食べたことがなかった。司は洋食だけではなく、料理全般が得意らしい。
 同居を解消したら、司の料理が食べられない。まだほんの三日ほどしか彼の料理を食べていないのに、胃袋だけはすっかり彼に懐いている。祐は苦笑した。
 風呂から上がり、自分の部屋へ入った。壁は薄くはないが、ベッドのきしむ音や司の声は聞こえる。これまで友達を泊めたことはあるものの、おそらく真斗が彼自身の部屋で誰かとセックスをするのは初めてのことだ。本当に気に入っているのだろう、と祐はヘッドセットをつけた。

 一週間ほどした頃、司が作り置きしてくれている夕飯を温め直していると、部屋から真斗が出てきた。
「休み?」
「あぁ、幸継に任せてきた……俺の分もある?」
 カウンターテーブルの上にはちゃんと真斗の分も置いてある。自分の分を取り出して、彼の分を電子レンジへ入れてやる。真斗はカウンターへ座ると思い、わざとカウンターが見える方向に座った。温め終わったおかずを持って、真斗は向かいに座る。
「久しぶりだよな、こうやって食うの」
 頷いてから、「いただきます」と言った。真斗の声が続く。
「司君、料理うまいよな」
「あぁ、何か家がカフェ経営してるんだってさ」
 今晩のおかずは酢豚だった。ツナサラダとみそ汁もある。
「木、金で入れてるけど、それじゃあ一人暮らしするにはきついだろ?」
「えー、あ、うん、まぁ、そうだな。いちおう、物件はいくつか見てるけど、週二ペースだと難しいかも」
 ジュンサイのみそ汁を一口飲んで、祐は考えていたことを話した。
「俺、出ようかと思ってるんだ」
 酢豚を頬張っていた真斗が、口を動かすのをやめて、首を傾げる。
「ここ、おまえと司君で暮らせば?」
 真斗が目を丸くした後、口の中身を飲み込む。
「何でだよ、別に祐が出る必要ないだろ? 司のこと、苦手なのか?」
「いや……どちらかと言うと、好ましいほうだけど」
「だろ? じゃあ、もう少し待ってくれよ。おまえが出てったら、あいつ、自分のせいでって思うだろうし、それに第一、俺達まだそこまでの仲でもない」
 付き合っているのではないのか、と視線で告げると、真斗はにやりと笑う。
「まだ体だけ」
「おまえなぁ、ちゃんと付き合え。言葉にしないと伝わらないぞ」
 一人に絞れと含めて言えば、真斗は両手をうしろについて、大きくのけぞった。
「どうかな。俺はけっこう好きだけど、あいつは祐のこと気になってるみたい」
「はぁ?」
 意外な言葉に驚く。この一週間ほどでそういった反応が司からあったか思い出してみたが、思い当たることはなかった。
「冗談はよせよ」
 立ち上がって、片づけ始める。
「いやいや、マジだって」
 食器を持ってこちらへ来た真斗が、背後から顔をのぞこうとする。
「案外、はまるぜ?」
 何になんだ、と聞こうとした瞬間、真斗の手が尻を叩く。
「真斗っ」
 初心なわけではない。ただ同性とはしたことがなかった。いたずらが成功した子どものように笑う真斗は、「ちょっとはその気になってるくせに」と言った。確かに、司に対しては好印象を持っている。帰宅時においしい手料理で迎えられ、嫌悪を抱く人間がいるなら教えて欲しい。
「そう睨むなって。とにかく、祐が出てくのはおかしい。分かった?」
 頷くと、真斗は満足したようで、洗い物はせずに部屋へ入っていった。煙草を吸いたいのだろう。洗い物をしながら、彼の言ったことを考える。今まで意識していなかったのに、司とどう接していいのか分からなくなってきた。

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