spleen番外編14 | ナノ





spleen 番外編14(水川×里塚)

 逃げ場がないと分かったのは、登校できるまで回復した日だった。里塚の体が回復するまで、佐村は献身的な態度で接してくれた。それは当たり前のことだったが、見舞いに来たクラスメート達にすれば、異なって映る。
「里塚、佐村と付き合ってるんだって?」
「おめでとう」
「あいつ、面倒見いいし、優しいし、羨ましいよ」
 頭がおかしくなりそうだった。違うと叫びたかった。だが、生徒会執行部で会計の役職にいる佐村と自分の言い分、どちらを信じるか考えると、里塚は何も言うことができなくなった。
 見舞いに来たクラスメート達が帰った後、オレンジゼリーを食べさせてくれる佐村を見ないようにした。
「もう大丈夫? 明日から授業、出る?」
 頷くと、佐村が笑みを浮かべた。
「お尻はどう? 俺、里塚のこと愛したくて仕方ない。入れてもいい?」
 ゼリーの入ったカップとスプーンをテーブルへ置き、佐村が戻ってくる。
「や、いやだ、い、いたいから、やだ」
 里塚が首を横に振ると、「まだ治ってない?」と聞かれる。大きく首を縦に振った。
「そっか。じゃあ、しゃぶって」
 椅子に座り、前を寛げた佐村がすでに硬くなっているペニスを取り出す。くちびるを噛み締めて、涙を拭った。佐村が腕を引く。
「おまえのアナルに入れてるものだよ? 汚くなんかない」
 里塚は耳をふさぎたくなった。ベッドから出て、床へひざをつき、佐村の太股へ手を置く。ためらっていると、彼の右足が里塚の股間を押した。
「っひ」
「ためらうってことは、俺のこと、嫌いなの?」
 佐村の声音が変わった。里塚は初めての夜を思い出して、慌てて、口の中へペニスを入れる。
「ちゃんと好きって言って」
「……好き」
 ペニスを口から出して告げた。佐村は上機嫌になり、「何が好き?」と聞いてくる。
「さ、佐村が、好き」
「俺のチンコも?」
 里塚は頷いた。頷きながら、泣いて、口での奉仕を続けた。
 佐村の性欲は留まるところを知らなかった。毎日のように抱かれて、里塚は睡眠不足に陥っていた。教室内でも、自分達は付き合っているという認識のため、精神的に追い詰められた。
 このままだと辛い。そう思って、職員室に入った。担任を見つけて、個室で相談したいことがあると言った。
「里塚が相談なんて珍しいな」
 担任は快く、個室へ移動してくれた。里塚はどう切り出していいのか分からなかったが、とにかく佐村と部屋を別にして欲しいと頼むつもりだった。
「そういえば、おまえら付き合ってるんだって?」
 担任のほうから切り出された言葉に、里塚は拳を握る。
「よかったなぁ。佐村はクラスを引っ張ってくれる存在だ。そんな奴が恋人でおまえも嬉しいだろ?」
 首を締め上げられていく感覚だった。冗談でもいいから、言わなくては、と必死に口を動かす。
「でも、俺、佐村のこと、好きじゃない」
 毎回、行為の中で言わされる言葉とは真逆のことを言った。それが本心だった。辛くて限界まできていた里塚の精いっぱいの言葉だった。
「何だ、冗談か? おまえもぜいたくなこと、言う奴だな」
 担任に悪気がないことは分かっている。だが、かろうじて踏ん張っていた里塚を突き落とすには十分だった。
「それで、相談って何だ?」
「……いえ、もう」
「え、もしかして、佐村と付き合ってるって報告だったのか? まぁ、あんまりハメは外すなよ。おまえは成績、落とせないからな」
「……はい。ありがとうございました。失礼します」
 廊下に出てから、まったく記憶がなかった。ただ予想通りだと思った。皆、佐村の話を信じる。強姦だと言っても、誰も里塚を信じてくれない。あと二年、耐えるだけだ。佐村のことが好きだと言って、大人しく抱かれている限り、彼は優しくしてくれる。何とか自分を納得させようとした。それなのに、涙があふれて止まらない。

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