spleen番外編13 | ナノ





spleen 番外編13(水川×里塚)

 血のにおいと精液の生臭さに気分が悪くなる。里塚は床に仰向けのまま、ぼんやりと天井を見つめていた。自分に起きたことが信じられなかった。佐村は今、シャワーを浴びている。冷たい指先でくちびるへ触れた。佐村はキスをした。体を動かして抵抗すると、くちびるを噛まれた。腫れて熱くなっているくちびるに触れながら、里塚は涙をこぼす。
「里塚」
 佐村の声に里塚は体を起こして、部屋の隅へと逃げた。すぐに腕をつかまれ、引きずられる。悲鳴を上げると、「おかしいだろ?」と言われた。佐村が怖くて仕方なかった。好きだと言いながら、どうして無理やり犯したのか、分からなかった。
「そんな怯えたら、変だと思われるだろ? さっさとシャワー、浴びてこい」
 佐村は中に出していた。温かいシャワーを浴びながら、里塚はしだいに自分の身に起きたことを客観的に見られるようになった。誰かに相談しなければならない。すぐに担任の名前が浮かんだ。明日まで耐えて、相談しようと思う。
 里塚は濡れた髪もそのまま、扉を閉めようとした。佐村が部屋の中に入る。
「……出てって」
 勇気を出して、小さな声で言うと、佐村は鼻で笑った。
「どうして? 恋人同士なんだから、一緒に寝よう」
「いや」
 友達の部屋へ行こうとした。廊下へ続く扉へ手をかけると、うしろから羽交い締めにされる。
「嫌っ、やだ、やだっ! 恋人じゃない、恋人なんかじゃない!」
 叫ぶと、頬を打たれた。ベッドの上へ体を突き放される。里塚は涙を流しながら、佐村を見た。彼は小さく笑う。
「どうしたの、里塚。俺達、寝ただろ? もう恋人だ……あ、そうか。おまえはまだ好きって言ってなかった。じゃあ、言うまでするよ」
 着たばかりの部屋着を脱がされる。泣き叫んで助けを呼ぼうとすると、部屋着のシャツを口の中に詰められた。アナルには先ほど負った傷が残っている。里塚はパニックになり、大粒の涙をこぼした。
「っんー、っう、グ、ン、ぅう」
 体の中に凶器が突き刺さる。佐村は彼の欲望を優先させた。里塚には痛みしかなく、勃起することもない。
「好きって言え」
 口の中にあったシャツが引っ張られる。時間の経過は分からないが、佐村はすでに二回、射精していた。まだ里塚の中で彼の凶悪なペニスが暴れている。里塚は虚ろな瞳で彼を見上げた。
「ほら、好きって言えよ」
 言えば、終わる。里塚は乾いたくちびるを動かした。佐村の言う言葉を繰り返した。それでも、彼は乱暴をやめなかった。しだいに意識が遠くなっていく。夢だと信じた。明日の朝には、すごい夢を見た、と佐村に笑い話として聞かせられると思った。

 朝、体中の痛みで目が覚めた。隣には佐村が眠っている。思わず体を引いたら、そのままベッドから落ちた。アナルの奥へ響く痛みに声が漏れる。体の汚れは拭ってくれたようだが、里塚の恐怖までは拭えなかった。自分の部屋にもかかわらず、四つ這いになり、必死に扉へ向かう。
「おはよう。どこ行くの?」
 寝癖ではねた髪へ触れた佐村が、里塚の前に立ちはだかる。
「おはようのキスしよう」
 佐村がしゃがみ込んで、あごをつかんだ。怖くて体が震える。目を閉じると、触れるだけのキスが落ちてきた。
「今日は無理じゃない? 俺から風邪だって伝えておくから、寝てな」
 佐村は里塚の体を引いて、ベッドへ連れ戻した。小さく震える里塚の頬へ、佐村が手を伸ばす。
「昼休みには帰ってくるから、泣かないで。里塚は寂しがりなんだね」
 里塚は横になった。登校時間になるまで待ち、一時間めが始まってから、着替えて部屋を出ようと思った。だが、昨日の行為のせいで、とてもではないが一人で立つことはできなかった。まぶたを腫らしながら、里塚はベッドの中で泣き続けた。

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