spleen番外編10 | ナノ





spleen 番外編10(志音)

 明史の誕生日は四月十五日で志音は二十五日生まれだった。十日間だけお兄さんだな、と言うと、明史は、「変な感じ」と笑った。互いの親族に招待状を出し、昨日、ホテルの広間を借りた大きなパーティーを催した。ケーキはもちろん、明史の母親に焼いてもらい、明史の兄はこの日のためだけに休暇を取って一時帰国してくれた。
 誕生日プレゼントの山はどこに運ぶか聞かれて、土田のマンションに送らせた。夜遅くに帰ったからか、明史はまだベッドの中で眠っている。リビングダイニングの庭の前にはカラフルな包装を施されたプレゼントが積まれていた。まるでクリスマスみたいだ。
 明史の存在は対外的には知らせていなかったが、公言はしていたため、今回の誕生日には明史へのプレゼントも多かった。昨日のパーティーでプロポーズすることは明史にも先に告げており、婚姻関係にはならないが、指輪選びもした。
 左手にはめているリングを見つめる。赤みを帯びたゴールドを気に入った明史は、プラチナを選ばなかった。彼らしくて好ましい。恥ずかしそうに、だが、嬉しそうに自分の左手へ指輪をはめてくれた時、志音は思わず抱き締めた。皆には聞こえないように耳元で、「絶対に幸せにする。愛してる」と言ったら、明史は泣き出してしまった。
 志音は寝室へ戻り、明史の左手を探る。同じデザインのリングを見て、笑った。自分でも信じられないが、リングだけで彼とつながっている気がして、とても幸せだった。学園ではアクセサリーは禁止されているが、自分達はパートナー制度により、法律上は家族になるのだから、理事長に話せば分かってくれそうだ。
「志音? あ、俺、寝坊した?」
「してない」
 頬にキスをすると、明史は左手の先を見つめてほほ笑む。
「志音、俺ね、今日、起きたら、志音のものになりたいって思ってた……一緒にシャワー浴びよう?」

 襟足の濡れた部分を、志音がバスタオルを当てて拭いてやると、明史はそっと胸に手を置いた。視線を下へ向けている。志音はまだ未経験だった。自分で抜くことはあったが、誰かと裸になって一緒になるということはなかった。それがどんなものであるかは知っているつもりであり、兄達や大河から色々と吹き込まれはしたが、実際に明史の裸体を目にしたら、何も思い出せなかった。
 ただ、明史のことを愛している。それだけだ。その思いだけで、志音の体は動き、明史を抱えた。ベッドの上にそっと下ろして、記憶の片隅にある潤滑ジェルとコンドームを探す。
「志音、あの」
 明史は潤滑ジェルを見て、自分で解していいかと聞いてきた。人にされる恐怖もあると思い、頷くと、明史が中指にコンドームをつけて、自らの指でアナルを解し始める。それを見ていたら、志音の中心は熱を持った。自分は全然、気の利かない男だ。彼をリードできると思っていたが、コントロールを失っているのは志音の熱のほうだった。
「悪い、俺、一回抜かねぇと無理」
 明史が頷くのを見てから、志音は明史の前でペニスを擦った。すぐに射精して、手の中が汚れる。バスタオルで拭ったら、明史が甘い声を漏らした。
「しお、ん」
 ベッドの上にひざをつき、明史の腕を握る。うっすら目を開いた明史がこちらを見上げた。全部、自分のものだと思うと、今すぐつながりたいという欲求にまたペニスが勃起する。明史のそこも起立していた。
「おまえが欲しい」
「……俺も、志音とつながりたい」
 きめ細かな白い肌に目を細める。明史の切れ長の瞳がうるんでいた。志音は慎重にペニスを進める。
「痛いか?」
 本当は一気に入れたい。だが、なるべく力を抜こうとしている明史の姿に、志音は欲望を抑え込んだ。
「だ、だいじょうぶ」
 あぁ、こんな時まで、と志音は苦笑した。一度、体を止めて、キスだけを繰り返す。ここまで来て無理だと言われたら、ほんの少し悲しいが、明史が痛いなら、やめてもいい。しだいに明史の体の強張りが取れ、志音はまたゆっくりと進めた。完全に中へ入った後も、思いきり動きたい欲望を抑え、何度もキスや手で、明史の体へ触れた。
 そのうち、明史が嗚咽を漏らし始めて、志音は自分が間違えたのかと思った。
「どうした? やっぱりやめるか?」
「ち、ちがっ、しお、やさし」
 明史がこれまで、相手本位のセックスしかしたことがないということを忘れていた。こんなふうに彼のペースで進むことはなかったのだ。志音は彼の涙を舌でなめた。
「当たり前だろ。おまえが気持ちよくなきゃ、俺だって気持ちよくない」
 志音はほんの少しだけ腰を動かした。とても気持ちよくて、それだけでいきそうだった。明史のペニスを手で擦りながら、同じリズムで動く。明史の甘い声を聞いていると、その声をもっと聞きたくて、つい大きく動いた。頭の中が真っ白になるほど強烈な快感を覚えた後、明史の中でペニスが弾ける。右手には彼の精液が飛んでいた。
 もっとしたいと思ったが、明史は意識を飛ばしている。志音は彼の中からペニスを抜き、バスタオルで体を拭ってやった。それから、彼を抱えて湯船に入り、自分の腹の上に彼の体を乗せる。湯の中にあった左手をつかみ、リングにキスをした。
「明史、愛してる」
 肩口に頭をあずけている明史から返事はない。だが、志音はとても幸せだった。明史が起きたら、彼の母親が持たせてくれた甘いチョコレートケーキを一緒に食べよう。それから、また、「愛してる」と告げる。その積み重ねていく未来の先には、絶対に幸せしかないのだという自信があった。

番外編9(明史) 番外編11(水川×里塚)

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